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「認知だけの思考は古い。動画はCVにも効く」富士フイルム、三井住友カードが唸った動画広告サービス

 本格活用のフェーズに入った動画広告。テレビCMの延長線上の考えから「動画は認知目的で活用するもの」という認識が一般的だが、本当にそうなのだろうか。先進的な企業の中では、動画広告を運用し最適化していく取り組みが始まっているという。アルファアーキテクトが提供する動画広告サービスを活用し、積極果敢に新しい取り組みにチャレンジするキーパーソンたちに、取り組みの経緯や得られた成果について、その実際を語ってもらった。

伝統的企業でのデジタルシフトのリアル

三井住友カード 福田保範氏富士フイルム 一色昭典氏アルファアーキテクト 伊藤展人氏
三井住友カード 福田保範氏(写真左)
富士フイルム 一色昭典氏(写真中央)
アルファアーキテクト 伊藤展人氏(写真右)

MarkeZine編集部(以下、MZ):富士フイルムさん、三井住友カードさんは両社とも伝統的な大企業でありつつ、積極的にデジタルシフトを推進しているという印象があります。現在の自社のデジタルシフトの状況をどう捉えていらっしゃいますか。

一色:弊社がデジタルマーケティングを推進する歩みを簡単に振り返ると、イメージング(写真)事業のピークが2000年。そのタイミングで社長が交代して以降、多くの新規事業が立ち上がりましたが、どうスケールさせるかが長年の課題でした。当時、写真については圧倒的なシェアをもっていたので、いいものを作れば売れる、いわゆるプロダクトアウトの意識が正直強かったです。

 市場が飽和する中、マーケットインの発想に転じる必要がありましたが、どうしたらいいかわからないという状況が続きました。一方でEC事業などで顧客のことを直接知ることのメリットは体感していたので、データ活用視点でのデジタル化が不可欠という認識は早くからあったのです。

 プロダクトアウトの発想を脱却し、デジタルマーケティングを推進していかなければならないとなったとしても、そもそも社内に知見を持つ人材が少ない。となると、ポテンシャルがある人材を社内で発掘するか外部から加わっていただくかしかありません。

 私が所属するe戦略推進室は富士フイルム全体のデジタルマーケティングを管轄、推進するミッションをもっていますが、これはと思う人材には積極的に声をかけました。そうしたリクルーティングの結果、最初は数名だったのが、現在全体で20名を超えるチームになっています。

 平行してデジタルの重要性が増している流れも後押しして、社内も徐々に変わってきています。2016年10月、ICT関連部門・会社を統括する組織としてICT戦略推進室ができ、CDO(Chief Digital Officer)というポジションもできました。CDOが全社のICTを推進する管掌役員になり、さらに仕事をしやすい環境となっていますね。ここ2~3年でだいぶ空気が変わってきて、デジタルトランスフォーメーションが進んできたと感じています。

マスメディア一辺倒では難しい、一方で動画も懐疑的

MZ:福田さんはどうでしょうか。エージェンシーから三井住友カードさんに転職されてますが、転職前と転職後のギャップはありますか。

福田:私は現在統合マーケティング部に所属してますが、ギャップという点では入社前に想像していた以上にやりやすい環境で、新しいことに次々とチャレンジさせていただいております。

 しかし、当社もプロダクトアウトの発想が強い点は否めません。クレジットカードといえばVISAというブランドが確立していますから、良いプロダクトを出せば市場が反応してくれる時代が続いてきたためです。ただ、最近では若い人の中に「三井住友VISAカード」の名前を知らない人が増えています。

 新しい決済手段も登場する中、効果的に露出を高める必要がありますが、マスメディアでの露出は体力的に限界があります。また、マスメディアへ出稿するには決裁一つとっても時間がかかり、PDCAを高速で回すことはなおさら難しいです。

 そこで前職の経験を活かし、まずはデジタルでの認知拡大の有効性を示すところから始めました。個人のカード会員獲得を目的としたコンテンツマーケティングの施策を展開したところ、短期間に申し込み増につながりました。その成果が上司を通じて経営陣に伝わり、デジタルプロモーションの重要性が理解されるようになりました。今では、社内の様々な部門が動画を含めたコンテンツマーケティングを実施するようになっています。

 当社は金融業なのでKPIにシビアです。動画マーケティングについては興味があり、動画ソリューションを手がける会社に話を聞いていましたが、実際のKPIに響くのかが不明瞭で、効果測定の難しさに二の足を踏むところが多く悩んでいました。そんな時、効果測定まで含めた配信ができるアルファアーキテクトのVeleTの存在を知ったのです。

動画はバズった、でもそれだけでいいのか?

MZ:動画の話が出たところで、富士フイルムでの動画の使い方を教えてもらえますか。

一色:今の若い方々が写真年賀状を送ろうと思うきっかけの多くは、結婚報告と出産報告。オーガニックでの獲得を増やしたいのですが、「写真と言えば富士フイルム」と想起する人たちが減っています。たとえば、「チェキ」のことは知っていても、富士フイルムのブランドだとは知らない人もいます。

 一昨年、いざ写真年賀状を送ろうとなった時、富士フイルムのことを思い出してもらえるように若い世代に人気の「東京ゲゲゲイ」を起用し、バズを狙う動画を作りました。ただ、その狙いは当たったものの、コンバージョンにつながったかどうかを検証する方法がありませんでした。

 去年の秋、運用しながら動画配信ができるVeleTを知り、写真年賀状の動画でやってみようとなりました。リターゲティングで追いかけ、1ヵ月あればどこかで思い出してもらうことができると思ったのです。タグの埋め方や広告の出し方も細かく指定し、丁寧に運用していて、予算は以前の10倍に増やしましたが、CPAを3分の1に圧縮できました。今後は制作からワンストップでお願いしたいと考えています。

定量×定性の効果をワンストップで分析できるサービス

MZ:アルファアーキテクトでは、動画広告の効果検証まで行うのですか。

伊藤:当社が提供する動画広告サービス『Velet』の特徴は、動画広告に取り組む際に必要な「制作」「配信」「分析」「最適化」をワンストップで実行でき、動画の活用目的や指標に適した運用を行える点です。

 可視化は当然で、パフォーマンスを上げる運用を重視しています。動画はあまり運用するものではないという考えが定着しているようですが、パフォーマンスに即して最適化する運用ができると当社は考えています。

福田:配信中は毎日、アルファアーキテクトさんと細かいやり取りを重ねました。リアルタイムでメッセやり取りしてましたね(笑)。

一色:これまでの動画広告は、メディアと配信の優位性しかなかったと思います。完全視聴を目的とするオーバーレイのようなフォーマットは嫌われていますし、広告主としては、不正対策をきちんとやっているかなど、ブランドが毀損しないことを重視しなくてはなりません。

MZ:デジタルの施策なのにテレビの時の発想のまま、リプレース先として動画広告をやっている印象は確かにあります。

一色:どこまで視聴したかがわかることと、ターゲットを分散して安全に配信できることが前提条件です。ただ、テレビCMでも、最近はGPRや好感度もデータを使って効果測定ができるようになりましたが、あまり出したくないというのが本音かもしれません。本来は予算と成果のバランスを考え、最適化をやっていかないといけないと思います。

福田:動画のCPAを追求しない理由はもう一つあると思います。ほとんどの動画サービスが配信までで、その後の効果測定は別の調査会社に依頼するしかありません。そうなるとどうしても担当が決裁を取りやすい費用感にならないのです。動画の配信だけでなく効果検証の調査もできるのがVeleTでした。

カスタマージャーニーを意識した運用と展開が効果的

MZ:定性、定量どちらの効果測定もできる点は、担当者からすると確かに魅力的です。

伊藤:調査のパッケージ自体は、約3年前から提供していました。その頃はまだ出稿側も今のように当たり前にブランドリフト調査を実施している環境ではありませんでした。当社の場合は、実際にサーベイツールの開発リソースがあり、モニターももっていましたから自社でやろうとなったのです。

 信頼性の高い調査をほぼ無料で展開してきたところに、他社もブランドリフト調査を手がけるようになりましたが、差別化のために何をしようかと考えた時、パフォーマンスへの貢献を明確にすることが重要だと思いました。それから、本来は動画広告も他と連携した効果を見るべきなのに、動画広告だけが孤立してスポットで終わっていることが残念だと思っていたこともあります。

MZ:実際にVeleTで運用しながら動画を配信した効果はどうでしたか。

一色:最初はちゃんと視聴してもらえるかを心配していて、成功と失敗が明確になればいい、それがKPIだと思っていました。ところが蓋を開けると、先にも申し上げたとおり売上は伸びるし、CPAが3分の1になるし、きちんと運用すれば成果が出ることがわかったのです。

福田:最初の2日間は数件程度しかビュースルーコンバージョンが出ませんでした(苦笑)。失敗したとしても知見になることを期待するとアルファアーキテクトさんには伝えた矢先、その後の伸びがすごくて、驚くほどの成果につながりました。

 動画が持つ情報量の多さという特長をうまく使えてなかったのかもしれません。今までコンバージョン目的で使われてきませんでしたが、実は動画が一番コンバージョンにつながりやすいのかもしれないとすら思える成果でした。今後はコンバージョン目的にふったクリエイティブの作成なども検討しています。

動画でコンバージョンをスタンダードに

一色:究極はインフォマーシャルで、購買まで動画で完結することもできると思います。

福田:インタラクティブ動画を配信できればもっといいですね。

伊藤:実はそのアイデアに近いことを準備中です(笑)。動画の中にフォームを付けて、視聴者に行動を促すことを考えています。ストーリー分岐を作ったり、ユーザー参加型にしたり、仕掛けの工夫を増やすことを準備しています。

一色:Googleが提唱する動画制作のための基本的な指針である「HHHモデル」では、「ヒーロー」「ハブ」「ヘルプ」の順にストーリーを展開しますが、売上の視点はありません。でもHHHの後に「コンバージョン動画」をつなげることができるとわかりました。

伊藤:VeleTではカスタマージャーニーを制作の段階から意識してストーリーを考えています。動画で伝えられる情報量が多いからといって、いきなりヘルプ動画を流すことはありません。

 ヒーロー動画で興味を引き付け、一定時間視聴した人をリターゲティングしてハブ動画を見せ、反応を確かめてから一歩踏み込んだヘルプ動画を流すようにしています。さらに、クリエイティブの企画段階から一緒に進めることができれば、PDCAサイクルをもっと早く回すことも可能です。

一色:今までは制作、配信、効果測定と発注先がバラバラだったものを一気通貫ででき、運用で最適化を行うサービスはなかなかないのでおもしろいと思います。動画広告の活用をもう一歩先に進めたいと考えるならお勧めですね。

福田:制作した段階で満足して配信しないことがあるのですが、情報を届けるところまでやってくれる姿勢はうれしいですね。制作からまとめて依頼すればよかったと思ったぐらいです(笑)。

一色:運用面では、途中から土日を増やすようにしました。生活者視点に立てば当たり前のことですが、運用という観点で施策を回してみて改めて気づいたことです。

伊藤:運用モデルなので、最初から結果が出るとは思っていません。制作と配信が別では足並みを揃えることが難しいですし、動画は制作でも効果測定でもパワーが必要です。

 でも複数の会社へ依頼してしまうとノウハウが貯まらないですし手間も増えます。それは連続性が失われるので、もったいないと思いますね。何が良くて何が悪かったかを明確にし、次の制作に活かせるかが重要だと当社は考えています。認知だけではない動画広告活用にご興味があれば、ぜひお気軽にお声がけください。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28490