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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

フィンテック×アドテクで新しいリテールマーケティングを創出する

小売りと決済が一体化すればデータ活用は進化する

――キャッシュレスが進む中、御社としての構想は?

 こうした状況下で、銀行系や信販系のカード会社に対して、小売業と提携したカード発行が圧倒的に多い我々は、もっと提携先と一体になってキャッシュレス化の動きを捉え、追い風にしていくべきだと考えています。

 パートナーである小売企業は今、ECの浸透や人材確保の困難さなど、たくさんの課題を抱えています。一方で、たとえばAmazonGOではアプリで入店し、本人確認や決済、返品まで可能です。小売りのオムニチャネル化が進む中で、アプリの活用によって、パートナーの顧客利便性と業務効率を高めるといった共栄を、我々はもっとやらなければならないと思うんですね。

 現状、カードは決済の瞬間だけ登場する、あるいはポイントカードや割引カード程度の機能しかありません。でもデータの観点から言うと、来店前から来店、来店中、決済、来店後、再来店の一連をひとつのカスタマージャーニーとしてつなげるべきだし、顧客データと決済と、小売りの在庫管理まで一元管理するためには小売りと決済業がより密接になる必要があります。

――データの観点で、小売りと決済が一体になるプラットフォーム構築を目指しているのですか?

 そうなる可能性もあるかもしれませんが、今はその前段階として、従来のカードビジネスにフィンテックやアドテク、新しいリテールのテクノロジーを掛け合わせて、これまでにない新しいリテールマーケティングの手法を生み出したいと考えています。それが小売企業をパートナーとして多く提携する我々の使命ではないかと。うかうかしていると、Amazonのような企業やベンチャーなどと組んで、独自の決済を開始できる環境になるかもしれません。

 なので、我々が小売りの現状の課題トレンドを把握して、それに沿った期待を超えていけるようにどんどん進化していかなければ。そうしないと、パートナーとしての存在感は薄れていってしまいます。

 もちろん、小売業も非常に強い危機感を持っています。特にテクノロジー活用に積極的な良品計画やパルコなどといった提携先とは、普段話す中でも求められる水準は高いと感じます。新しい取り組みについても、こちらが深く理解していないと相手にされなくなるので、必死です。

情報提供をカスタマイズし送客機能を強化

――なるほど。では、もうひとつのミッションの顧客データを使った新規ビジネス開発について、うかがえますか? たとえばセゾンポイントモールやメディアを使った広告事業などでしょうか?

 前提として、クレジットカードに関する情報を活用する場合、提携先、ユーザー、そして我々の三者のそれぞれにメリットがある取り組みにビジネスチャンスがあると考えています。

 カード会社の提供サービスは後払い、ポストペイであり、提携先からすると加盟店手数料を負担する必要があります。それを負担しても上回る価値を我々が提供できるなら、それは客数を増やす、客単価を増やす、来店頻度を増やす、この3つの道があります。クレディセゾンと付き合うと顧客が増えるとか、あるいは「女性のこういうクラスタの方」など、ターゲットとしている顧客が特に増えるなら、提携先の事業の後押しになると思います。

 具体的には、パルコでカードに入会した人はファッションに少なからず関心があって、これからもパルコで買い物をしようと思っているわけですよね。そうすると、我々のサイトなどでその人に提示する情報はファッションなど興味関心に沿ったものがいい。そうやって買い物のモチベーションを高めれば、提携先への貢献になるでしょう。これはユーザーにとっても、より必要な情報が得られ、楽しい買い物につながる。こうした循環を目指しています。ただ、その際にはセグメントごとにコンテンツが必要なので、質の高いコンテンツの量を増やすことが、我々の直近の課題です。

 また、データを活かしたマーケティングリサーチ機能も提供できると思います。これまでは広告代理店やマーケティング支援事業者が担っていたマーケティング支援のサービスを、大規模な顧客基盤を保有する我々が提携先に対して担えると、我々ならではの意義が生まれるはずです。

――では最後に、今後の展望をうかがえますか?

 中長期的なゴールイメージは、前述のフィンテックとアドテク、またリテールテックも組み合わせて、セゾン流のリテールマーケティングを確立することです。ひとつずつ提案できることを増やし、事例を積み重ね、小売企業とともにその未来を目指していきます。

 小売業は業態としてとてもサイクルが速く、この50年のうちにも百貨店、スーパー、SPAとプレーヤーが増えて変革が進んでいます。そこに身を置く企業とタッグを組むカード会社としての強みを活かしながら、ビジネスの範囲を広げていき、ユーザーにより便利で楽しく、安心安全な買い物体験を提供していきたい。従来の“カード会社”の概念を超えて、5年後10年後には「クレディセゾンってそういえばカード会社だったね」と思われるのが理想です。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/28622

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