広告事業を強化する楽天、その経緯と戦略
――楽天は昨今、楽天データマーケティングの設立をはじめ、広告事業に力を入れています。今回の楽天によるLOB買収には、どのような目的や背景があるのでしょうか?
有馬:EC事業者は歴史的に、広告事業を積極的に展開しにくい事情がありました。例えば楽天市場へお買い物に来てくれた人に広告を見せるところまでは良いのですが、クリックしてサイトから離脱し、楽天での購買を逃してしまうと本末転倒ですよね。ECサイトからリンクを飛ばすことに非常に懐疑的だったという歴史があります。
どこのEC事業者もすごくアクセスがあるのに、広告事業がなかなか大きくならないというジレンマを抱えていました。でも、世の中の変化と共に、その様子がずいぶん変わってきたんです。理由は大きく2つあります。
1つは楽天市場ですごく物が売れるようになり、ブランドやメーカーなどの広告主にとって重要なリテールチャネルに成長したこと。広告主の意識が、自社ECでなくても、楽天に広告を出してその中で売れればいいと、変わってきたのです。
もう1つはビッグデータの時代になったこと。オンラインだけでなく、オフラインも含めた楽天経済圏の購買分析データを、外部の広告商品に活用することで、広告事業を大きくできるはずです。
歴史的に広告事業は微妙な立ち位置だったこともあり、かつては楽天市場の店舗さんに広告を売るのがメインで、アドテクの領域にあまり投資をしてきませんでした。
これは成長を考えた時には良くない状況でした。その状況を打破するには、どこかのプラットフォームを持っている会社と組むか、買収するか、エンジニアを大量に採用するか。そんな折に、EC事業者のアドプラットフォーム構築事業を担うLOBの竹林さんとの出会いがありました。話がとんとん拍子に進み、会社ごと来ていただくことになりました。
――竹林さんがECプラットフォームのアドテク活用に着目されていたのはなぜでしょうか?
竹林:スマートフォンアドネットワークを運営するAMoAdでの自身の経験が大きいですね。アドネットワークは常に他社との陣取り合戦で、営業戦略上もプロダクト戦略上も続けるのがとても大変でした。在庫は自分たちの持ち物としてあって、メディアを育てれば自ずと在庫が増える仕組みに魅力を感じたんです。
そんな時に、ECサイトは意外とPVがあるのに、広告をやらないのはもったいないと思っていました。広告は消費を促すものなので、本来はECととても相性が良いはずです。ECサイトには購買意欲を持った人が集まっているので、CGM系のメディアとECサイトが同じPVだとしたら、広告価値は後者の方が断然高いはずですよね。
かつブランドセーフティで、データもたくさんある。そういった観点から、ECプラットフォームでの広告事業に着目していました。