企業自身がインフルエンサーを抱える時代へ
口コミの可能性
マーケティング活動におけるインフルエンサーの影響力がさらに大きくなっています。特にInstagramを使ったマーケティングは雨後の筍のように乱立しており、消費者も「広告臭」がする投稿を見分けられるリテラシーが身についてきました。今後は単発のPRでインフルエンサーを活用するのではなく、ブランドと親和性が高いインフルエンサーと長期契約を結んだり、社員として雇用したりする流れにシフトするでしょう。私の所属するサッカー業界だとヴィッセル神戸がイニエスタ選手と契約しましたが、彼のSNSフォロワーは合計で7,400万人います。このように仕事の実力に加え発信力を備えた人物を採用する動きは、今後ますます活発になるでしょう。
口コミ活用の展望
私たちJリーグクラブは、「ローカルメディア」という側面も持っています。月に2?3回の興行を通して、地元の自治体や企業をPRする役割を担っており、現在は試合中に選手が着るユニフォームに企業ロゴを入れたり、会場に看板を出したりしていますが、今後このようなPRをInstagramなどのソーシャルメディアを使ってできないだろうかと考えています。つまり、選手や我々クラブ自体が「インフルエンサー」となり、地元企業や商品、お店などを実際に訪れて体験し、自身のアカウントで紹介する取り組みです。従来より若年層にリーチできるため、新たな広告主の開拓が期待できるのではないかと考えております。

株式会社栃木サッカークラブ マーケティング戦略部長 江藤 美帆氏
Jリーグ栃木SC、マーケティング戦略部長。スナップマート顧問。米国の大学卒業後、フリーのTECHライターとして活動。以後、自身で起業と事業譲渡を経験し、大手IT企業2社を経てオプトに入社。SNSマーケティング専門のWebメディア「kakeru」を立ち上げる。同時期にスマホ写真売買の「Snapmart」を開発し、2016年8月に独立。2018年3月に代表取締役を退任し、5月より現職。
地道なコミュニティ活動が口コミを醸成する
口コミの可能性
弊社のブランドは全体的にSNSでの言及数が多く、特に新商品については購買意欲にもつながっていると考えています(計測はできていませんが、リアルの口コミももちろん同じです)。ただ、口コミである以上キャンペーナブルに盛り上げてもあまり意味がなく、ブランドイメージを崩すようなことも望ましくないので、今のところ意識した活動より偶発的な口コミで盛り上がるほうが多いです。今後は直接的に口コミを起こす活動に注力していくというよりは、ソーシャルリスニングで見つけたインサイトを様々な宣伝活動に活かしていくという取り組みを強化していきたいと思っています。
口コミ活用の展望
「宣伝活動への活用」と「口コミ醸成のためのSNS上のコミュニティ活動」の大きく2つの指針があります。他社の成功事例も、もともとユーザーがやっていたことをうまく活用しているものが多いです。そのように口コミを上手に宣伝活動に活かし、ユーザーと共に盛り上がれる施策に取り組みます。一方で、SNS上で口コミを生み出している人の多くは既存のファンの方であり、口コミ醸成にはコミュニティ活動が重要な役割を果たします。なので、ファンの方たちが語りたくなる、語りやすくなるよう、地道なコミュニティ活動も継続していきます。

ハーゲンダッツ ジャパン株式会社
マーケティング本部 コミュニケーショングループ 續 怜子氏
2013年よりハーゲンダッツ ジャパンに勤務し、デジタルコミュニケーション戦略立案および遂行に従事。当初はSNSの活用を中心に活動していたが、現在はイベントやPRを主に担当している。
自然な口コミの中に自社の強みやストーリーがある
口コミの可能性
個人の発信力が増し、話題の伝播する速度が速まる一方で、一過性のバズは見慣れたものになり、スポンサードコンテンツも溢れる中、生活者の目は肥えています。作られた口コミ施策では、簡単にはファンになってもらえません。前職ではコミュニティマネージャーとして、「企業の人」ではなく「ユーザー代表」として顧客に向き合い、ファンを増やすため様々な施策を行いました。口コミは一方的に統制できません。自然な口コミの中に自社の強みやストーリーを見つけ、その広がりを後押ししていく姿勢が大事です。そのために、自らサービスを愛し、自社の顧客代表である姿勢が本当の意味での口コミとファンを増やしていくと思います。
口コミ活用の展望
現在はSNS、特にTwitterにおいて、良い情報の紹介とシェア、困っているお客様へのアクティブサポート、違反報告の検知などに口コミを活用しています。また、お客様同士で質問や疑問を解決するQ&Aサービス「メルカリボックス」を運営し、コミュニケーションの場を作るとともに、サービスの不便な点などの知見を蓄積しています。今後はよりポジティブな口コミの醸成・促進のため、オンラインではSNSでシェアされやすいフォーマットに特化したコンテンツの開発やハッシュタグの運用等のコミュニケーション施策、オフラインでのフリマや座談会の開催などを通じ、ファンづくりを強化していきます。

株式会社メルカリプロダクトPRマネージャー 中澤 理香氏
早稲田大学文化構想学部卒業後、2011年ミクシィに入社。複数の新規事業の立ち上げに従事。サンフランシスコにてテックライターとして活動後、2014年より、Yelp Japanで2人目の正社員としてコミュニティマネージャーに就任。オンライン・オフラインでのユーザーコミュニケーションを通じファンを拡大。2016年1月より、メルカリのPRに従事。
「口コミ・宣伝・PR」で三位一体の取り組みを
口コミの可能性
コンビニエンスストアでは週に100種もの新商品が発売されていますが、どの商品もターゲットが異なります。限られたマーケティングコストの中で口コミによりターゲットへの認知が広がることは有効だと思います。インフルエンサーを利用した広告だけではなく、時事性をうまくとらえたPRとあわせることでその効果は大きくなるため、プロモーション・PRと一体となった取り組みが重要です。一般ユーザーだけではなく、記者やメディアの関心事についても取り入れ、PDCAサイクルをまわせるように努めています。
口コミ活用の展望
ローソンでは定期的にLINEやTwitterでのクーポン配信を行っています。ネットで口コミが広がるためには「自分ごととして発信してもよいレベル」だと思ってもらうことが重要だと考えており、クーポンはお得情報と捉えられるため拡散しやすい傾向があると思います。ネットユーザーの中で「ローソン」を思い出してもらいどれだけ自身のタイムラインに掲載してもよいと思ってもらえるか、ツッコミどころのあるクリエイティブを心がけています。

株式会社ローソン マーケティング本部
シニアマネジャー 白井 明子氏
デジタルドリブンな取組の推進を担当。「Web人大賞」、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー準大賞」受賞。ACC新事業検討委員会委員、法政大学イノベーションマネジメント研究センター客員研究員。
熱狂顧客のファンコミュニティ拡大へ寄与
口コミの可能性
広告が効かない時代と言われている中で、ここ数年は「ファン」「コミュニティ」というキーワードが注目されてます。雑貨業界においては低価格戦略やデザイン性の高さといった商品価値訴求型の企業が多い中、弊社では昨年から口コミが社内のキーワードとなり、「ファン」「コミュニティ構築」という考え方が主軸戦略になっています。それはブランドの哲学(私たちは商品の先にある笑顔を販売している)を前提に、従業員の熱狂は熱狂的なファンづくりに有効で、そしてそれが結果的に周囲への口コミ効果と従業員のより一層のモチベーション向上につながるものとして、全社戦略として口コミを推進しています。
口コミ活用の展望
大きな目的は「従業員の熱狂レベル向上」と「熱狂ファンづくり」の2つです。今期は主に後者に注力します。具体的には、店舗スタッフ含めたプロジェクトチームが主体となり、お客様にWOW体験を提供する年4回開催のファン感謝祭「LIFE IS PARTY」を筆頭に店頭レベルでのWOW体験イベントを年間で定期開催しています。これに加えて、従業員やお客様の好きな趣味でつながるファンコミュニティ「Flying Tiger Copenhagen部活」を設立。ここではデジタル上でのアイデアを共有する活動やオフ会活動を推進していきます。今期はお客様が口コミしたくなる体験機会を増やし、ブランド好きのファンコミュニティを拡大していきます。

Zebra Japan株式会社 マーケティング部長 柘野 英樹氏
広告制作会社、広告代理店を経て、2004年にアディダスジャパンに入社。PR、ブランドマーケティング、リテールマーケティングを担当し、その後、スターバックスコーヒージャパンに転職。年間プロモーションの設計、実行から、商品本部コーヒーチームでは新商品のグローバルプロジェクトをリード。2014年Zebra Japanに入社。北欧デンマークの雑貨ストア「フライングタイガー コペンハーゲン」のマーケティング責任者として数々のプロモーションをリードしている。
