ECサイトへの送客に強いサービス
続いて、ECサイトへの訪問を促すのに適した相性の良いサービスにはどのようなものがあるかを見ていきたいと思います。ここではECサイトと他のサービスとの関係性の強さを捉えていきます。図表4は「共起ネットワーク分析」と呼ばれる分析手法を用いて、主要なサイト間の関係を可視化した結果です。

この分析では、サイトどうしの併利用のされやすさ(共起頻度)を線の太さによって表しています。たとえば、週単位でAmazonとTwitterを両方使っている人が多くいる場合、2つのサイト間の関係は強いと捉えられます。また、円の大きさは利用頻度の多さを表しています。
図表4ではHigh層を対象に、彼らがどのようにサイト間を回遊しているのかについて把握しています。まず、ECサイトの円の大きさに着目すると、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングの順に大きく、多くの人が利用していることがわかります。ECサイト間の線も太く、複数のサイトを行き来しながら使っている人が多いことを示しています。また、ネットスーパーの利用は主要ECサイトに比べるとまだまだ小さいことがわかります。
次に、ECサイトと他サイトの関係を見ると、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングとLINE、Twitter、Facebook、YouTubeの関係が強く表れていることがわかります。意外なところとして、アメブロと楽天の関係が強く出ています。広告を流してECサイトへ流入させ、商品購入を促す……といった企画をしていく場合、事前にサイト間の回遊構造を理解しておくと検討の幅が拡がります。
本稿では可視性を重視して対象サイトを限定していますが、様々なサイトを分析に入れ込んでいき、課題発見的にこうした分析を活用していくのも良いでしょう。
生活スタイルのオンライン化より、買い方も変わる
本稿では、購買データとメディアデータから生活者の行動実態を把握する分析事例を紹介しました。その発展として、行動の分析に生活者心理を掛け合わせていくことも非常におもしろい取り組みです。生活スタイルや消費価値観、時間意識が実店舗・オンラインのチャネル利用行動に与える影響については、Nakano&Kondo(2018)をご参照ください。
日用消費財のオンライン購買は増え続けていますが、現状ではすべてをオンラインで買う人は少なく、一部の商品においてオンラインを活用している人が大半であるといえます。一方で、日常的にECサイトに訪れる習慣がある人たちは、日用消費財もオンラインで買い出す傾向が見られます。今、私達は一日の生活時間の中でネットに触れる時間が増えています。何でもオンラインで済ます時代、いわば、生活そのものがオンライン化しつつある時代です。オンラインに触れていれば、それだけ他サイトからECサイトへの流入チャンスも多くなります。それゆえ、生活がオンライン化してくると、買い方もオンラインに移りやすくなると考えることもできるでしょう。
日用消費財のオンライン購買において今後の課題は、その購買形態に適した利用環境の整備のように思います。日用消費財は複数の商品をまとめて買う場合が多い、そして、今はまだPCでECサイトが利用される場合が多いといった現状を踏まえると、たとえば、PCを開かずともスマホで複数の商品を簡単にまとめて買える仕組みなどは機会創出として重要だと思われます。ボタンひとつで注文ができる「Amazon Dash Button」などのサービスも日用消費財のネット購買を促進する意味ある仕掛けです。
一方、それらの購買の利便性を高める仕掛けはブランドスイッチの機会を減らすことにもなりえます。ブランドスイッチを誘う/防ぐためのアプローチも改めて見直していく必要がありそうです。生活者の生活環境の変化にともない、買い方が変わり、マーケティングも変わります。発達途上にあるこの魅力的な市場の動向を、今後も探っていきたいと思います。