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ネット通販における「送料無料」が購入意思決定に与える影響

「送料無料キャンペーン」は効果的

 通常は送料がかかる通販サイトの中には、新規顧客の獲得や既存顧客の活性化を目的として、期間限定で「送料無料キャンペーン」を行う場合がある。ネット通販利用者に、この送料無料キャンペーンの利用経験を聞いたところ、利用経験率は76%であった(図表5)。

図表5 送料無料キャンペーンの利用経験(単一回答)ベース:過去1年以内ネット通販利用者(n=1,000)
図表5 送料無料キャンペーンの利用経験(単一回答)
ベース:過去1年以内ネット通販利用者(n=1,000)

 その76%のうち、キャンペーンがあったから商品を購入したという人は56%を占めた。送料無料キャンペーンという施策はその目的の一つであろう新規顧客の獲得に対して、ある程度の効果がありそうだ。

 期間限定の「送料無料キャンペーン」は、ネット通販利用者に対して魅力的なキャンペーンであり、一定の効果がありそうだが、そのキャンペーンで購入していない人もいる(図表6)。

図表6 送料無料キャンペーンで購入しなかった理由(複数回答)ベース:送料無料キャンペーンでの未購入者(n=236)
図表6 送料無料キャンペーンで購入しなかった理由(複数回答)
ベース:送料無料キャンペーンでの未購入者(n=236)

 送料無料キャンペーンで購入しなかった理由を聞いたところ、「送料が無料でも、欲しい商品がなかったから(61%)」「キャンペーン期間中に必要な商品ではなかったから(30%)」が上位にきた。「欲しい商品がない」という理由に対しては、消費者が欲しいと思う商品を店舗側がラインナップに加えるしかないだろう。しかし、「キャンペーン期間中に必要な商品でなかった」という理由であれば、別の期間であれば購入していた可能性があるかもしれない。このように、新規顧客の獲得機会を損失しないためにも、キャンペーンに期間を設けずに送料を無料にするなど、何らかの策を講じてみても良いかもしれない。

送料“有料”により訪れた岐路

 ネット通販は大量に仕入れることができ、販売員の人件費もかからないという点で、より安く商品を販売することができる。また、買い物の交通費がかからない、無料で自宅まで届けてくれる、といったことが、リアル店舗よりも圧倒的な価格優位性を保っていた。そして、今回のこの調査を通じても、「送料無料」は消費者のネット通販サイトの選択や商品の購入の意思決定においても極めて重要な役割を果たしていることがわかった。

 確かに「送料無料」は顧客を集客するために有効な施策とされてきた。今のところは原価割れしないギリギリのラインで送料を工面しているかもしれない。しかし、今日の宅配業界の危機的な状況を鑑みるに、いくら宅配業者にとっての大口顧客といっても、宅配事業者の協力なしではビジネスが成立しないので値上げ交渉には応じざるを得ないであろう。今後の配送料のその値上げ幅によっては、「送料無料」を継続することができなくなる日がいつ訪れても不思議ではない。そして、「送料無料」という前提が崩れることによって、消費者のネット通販での購買行動に大きな影響を与える可能性がある。消費者の送料に対する理解は徐々に浸透していくだろうが、通販事業者にはその急激な送料に対する心理的な障壁を和らげることが求められることになるだろう。

 消費者にとってネット通販は「送料無料」が当たり前のこととして慣れすぎてしまったというのは、熾烈な競争の中での過剰なサービスだったのかもしれない。しかし、現実問題として、これまでは宅配業者にしわ寄せがいっていた負担を、誰かが負担しなければならない状況であることは確かである。これから起こり得るネット通販における「送料有料」の時代の到来は、ネットとリアルを含めた流通業界全体に大きな影響を与えそうである。

■調査概要
調査主体:マクロミル・翔泳社(共同調査)
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:全国15~69歳の男女のうち、過去1年以内にネット通販を利用した方
※離島居住者を除く(マクロミルモニタ会員)
割付条件:性年代別の1年以内ネット通販利用経験率に合わせて回収
1,000サンプル
調査期間:2018年6月22日~2018年6月23日

・本文の数値は四捨五入した整数で表記。
・百分率表示は四捨五入のため丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合がある。

▼調査レポート
『ネット通販の利用状況を調査!送料はいくらまで許せる?』(HoNote)

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この記事の著者

マクロミル(マクロミル)

高品質・スピーディな市場調査を提供する、マーケティングリサーチのリーディングカンパニー。生活者のインサイト把握やデジタルマーケティング施策の広告効果測定など、マーケティング課題解決に向け最適なソリューションを提供。世界21カ国、50の拠点を展開し、唯一無二のグローバル・デジタル・リサーチ・カンパニーを目指す。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/08/24 15:00 https://markezine.jp/article/detail/29051

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