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統括編集長インタビュー

ボトムアップとトップダウンの両輪で、粘り強く迅速に組織変革 躍進するJR九州のデジタル推進舞台裏

JRキューポは成長戦略の“扇の要”

―― JRキューポの統合は2017年7月。並行してJRキューポDMPを構築し2018年4月から稼働させています。率直にどのような状況でしょうか。

相良:まず、JRキューポの目的についてお話しますと、私たちがJRキューポを活用してやりたいことは九州エリアのお客さまとの関係性強化です。JRキューポは「お客さまに対する、JR九州グループ共通単位のお礼」として位置づけています。

 「3つのポイントを統合」と先に申し上げましたが、統合はネット列車予約の際に必要となるJR九州Web会員の会員基盤を基軸に設計しています。現在「おまとめ登録」という言葉を使って利用者の皆さまにメリットを訴求しポイント統合を促しているところです。

 会員基盤の規模は、JR九州Web会員の会員数(≒ネット列車予約サービス利用者)の会員数が約200万人、JQCARDの会員数が約61万人、SUGOCAの会員数が記名式のみで約130万人。九州におけるシェアの観点からだと、九州7県(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)の人口が約1,300万人なのですが、3つの会員を合わせた延べ人数は約240万人なので20%に迫る普及率となります。その中でおまとめ登録を済ませ紐付いた現在の会員数は約20万人なので、まだまだ伸び代がある状況と言えます。

同副室長 矢野進剛氏
同副室長 矢野進剛氏

矢野:JRキューポDMPには、顧客情報・購買データをマーケティングに活用できるように調整したデータ格納をしていまして、統合によりサービス拡充もしています。たとえば、JRキューポDMP上に整理されたSUGOCAの利用データが格納されているので、JR九州Web会員登録でSUGOCA(記名式)をご登録いただいている方には利用明細をWebで照会できるサービスを開始しました。

 また、MAツールとも連携させることで、顧客ごとにシナリオメールを配信したり、JR九州のサイトにレコメンドバナーを表示しています。シナリオメールには「giftee」という電子クーポン・電子スタンプを連携させており、たとえばインターネット列車予約で博多駅発のきっぷを予約した人に、出発日の前日にグループのベーカリーのコーヒー無料クーポンを送付しリアル店舗への来店誘導等の取り組みをはじめました。

 おまとめ登録をしているお客さまは、各サービスのご利用件数、金額共に高くJR九州グループとしてロイヤルティが高いことが確認できています。さらにJRキューポやコミュニケーション機能を活用したキャンペーン等を行うことにより、グループ内の相互送客、買い回り促進を行ない、顧客のLTVを拡大させていきたいと考えています。

おまとめ会員は各サービスとのロイヤリティが高いと結果がでている
おまとめ会員は各サービスとのロイヤリティが高いと結果がでている

草の根活動とトップダウン、上から下から動かす

―― 散在していたデータを一ヵ所にまとめ、データ・ドリブンマーケティングを実行する基盤でPDCAを回すことで、より大きな効果が期待できるようになっている印象です。一方で大企業の場合、そもそも散在しているデータをまとめることや、トップダウンで号令をかけても反発を受け、結果的にデジタル活用が進まないという話もよく耳にします。御社の場合そのあたりの壁はどう乗り越えていったのでしょうか。

森:まず、JR九州も決して例外ではなく、スムースに事が進んでいる訳ではないです。ただ、その中で今のような状況にできている要因の一つは、早い段階で結果を残せたからだと思います。

 当社の例でいうと、まずは鉄道事業単独でネット列車予約サービスをテーマとしたデジタルマーケティングに取り組み売上向上に寄与しました。さらにカード事業部を巻き込んでJRキューポを開始させました。今後の構想としては、顧客とJR九州グループの関係性のさらなる強化を考えており、グループ各社との連携が必要と考えています。

 そのためには「各関係各所との念入りな情報共有」「将来とグループ全体・さらに外の世界を見据えた構想」「JR九州グループを束ねる力」すべてが必要で、根気強くかつスピード感をもって進めていく覚悟です。

相良:現場からすると森さんの存在が非常に大きいと感じます。ある程度の企業規模になるとデータが散在していてデータ統合が進まなかったり、他部署との調整に時間がかかったりと、当社と同じような課題をよく耳にしますが、森さんが旗振り役となって推進しているので当社の意思決定は迅速です。

矢野:グループ会社は別会社なので、それぞれの責任の下で事業を行っています。業績の責任ももちろんそれぞれにあり、独立採算でできるのであれば協力への優先順位が下がることも否めません。そういった状況も考えると、森さんも含め今回の意思決定者の面子は奇跡のメンバー。今振り返ってみても千載一遇の機会だったと思います。

森:私の同期や後輩がグループ会社の社長をやっていますので、合意が取り付けやすい面は確かにありますね。「早くやろうよ」と根気強く会話を重ねました。それに同じような危機感は口に出さずとも皆感じていたと思います。

 現場での丁寧な草の根活動にももちろん取り組んでおりますが、それだけでは限界があります。私は社長直轄のスタッフという立場でして、グループマーケティング以外にもグループ会社の再編だったり、業績が芳しくないようであれツッコミを入れる役割でもあり、自分でいうのもなんですが言うことを聞いておかないとまずい人間です(笑)。

 このように、トップダウンとボトムアップを並行して進め、上から下から動かしていますよ。最後は人対人なので泥臭く、粘り強く口説いていけるかが勝負ですね。

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ワンストップで進められ、かつ意思決定も進められる体制

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/09/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/29093

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