イベント内容の急な変更にも対応
米ラスベガス・コンベンションセンターは、年間150万人が利用する世界第2位の巨大見本市会場だ。敷地面積は約30万平方メートル。わたしが2008年2月末に訪れたときは、1日に7つの見本市を同時開催していた。まるで東京の繁華街のスクランブル交差点のように、北へ南へ東へ西へと人ごみが移動する。それぞれが目的の場所へ間違いなく移動するには、はっきりと目につく案内表示を会場内のあちらこちらに設置する必要がある。しかも記者会見やセミナー、分科会、会議の講師、場所、時間などの内容は、頻繁に変更になる。「とても紙ベースの表示では間に合わないんです」と同コンベンションセンターからデジタルサイネージの運用を委託されているワイヤレス・ロニン社のPhil Quattrocchi氏は語る。
紙やポスターや布の横断幕に混じって同コンベンションセンターに設置されているデジタルサイネージは181個。比較的広いスペースの真ん中には、案内表示のためのキオスク型のデジタルサイネージが設置されている。「どちらに行きたいですか」、という表示の下に「北棟」、「南棟」と書かれた長方形のボタンが2つ。「北棟」のボタンに触れると、「北棟」の見取り図が表示された。
また会議室横の壁には小型のデジタルサイネージが張ってあり、現在会議室の中で行われているセミナーの内容が記されてある。1時間もすればセミナーが終了し、次のセミナーの内容がまた、デジタルサイネージで表示される。コンベンションセンター周辺では無料の公衆無線LANの電波が利用できるので、ワイヤレス・ロニン社はこの無線LANを利用して、デジタルサイネージのコンテンツを配信している。
コンテンツ自体は、イベントの主催者が専用ウェブサイトを通じて書き込むことが可能。ウェブサイトを更新する感覚で、デジタルサイネージに表示させる内容の書き換えが簡単にできるという。講師の欠席など急な内容変更にも対応できるわけだ。
これだけのシステムなのに、ワイヤレス・ロニン社が同コンベンションセンターに常駐させている担当者は一人。無線LANがインターネットの公衆回線につながっているため、インディアナポリスの本社から24時間体制で保守が可能だという。
デジタルサイネージのハード機器は、同コンベンションセンターが所有、ディスプレーはNEC製だという。韓国サムスン製のディスプレーを使用したところディスプレーに埋め込まれたRFIDと呼ばれる超小型ICチップが無線LANが混信を起こしたためNEC製に切り替えたという。