小さく速く低リスクでやれることからスタートする
祖谷:一連のカスタマージャーニーに対して、すべてに同じカロリーをかけるのは、きっと難しいはずです。色々な接点がある中で、どこから着手していくのが良いと思いますか?

鈴木:事業課題やブランド課題によって、色々なやり方があって良いと思いますが、まずはお客様が困っているポイントから始めてみると良いと思います。大げさなことをせず、すぐにできることをやると良いと思いますよ。
成松:私もなるべく小さく、スモールスタートでできることをいつも探します。ですが、小さく始めるにしても、切り離して考えて良いところとダメなところがあると思っています。
たとえば、「お客様の一連の行動を理解した上で、購入前の部分から着手しましょう」というのは良いのです。しかし、最初から購入前/購入/購入後を切って考えてはいけないと思っています。
これを踏まえて、僕が意識しているのは、「なるべく小さく、速く、リスクが低くやれるところからスタートする」ということですね。
顧客体験の創造に向けて、求められるマーケターの人物像
祖谷:では最後に、エクスペリエンスメーカーになるためには、どのような視点や考え方をもっていると良いと思われますか?
佐々木:企業として利益を考えることと、その中で顧客体験を作っていくことを両輪で考えること。最終的に顧客体験価値が企業の利益として返ってくるということを、論理的に考えることが大事です。
あとは、変化に寛容かつ積極的であることです。なぜなら、我々が思っている以上にお客様が変化するスピードは速いですし、テクノロジーの進化も速い。それらの変化を許容して、まずは自分が変化し、テクノロジーの活用にチャレンジしながら積極的に行動を起こすことが重要ではないでしょうか。
鈴木:最終的には、お客様も「人」です。なので、「人に対して価値提案をする」という視点をもっていることが大事だと思います。我々も生活者ですから、お客様の立場で考えなければいけませんよね。
成松:私は、お客様の生活への好奇心が必要だと思っています。お客様が困っていることに対して、「ふーん」と思ってしまう人と、「なんで困っているんだろう」と自分ごと化出来る人の壁は大きい。この壁を突破できる資質が必要だと思います。
たとえば、LOHACOでは今年正式にKPIからCVRを捨てました。これは、お客様の満足度を考えた時に、CVRはKPIとして適切でないからです。CVRはとてもわかりやすい指標ですが、「どうしてCVRが上がっているのに、顧客満足度は上がらないんだろう」と考えられる人が、エクスペリエンスメーカーとして求められていると思います。
祖谷:今日の話の中には、普段の業務で活かせることがたくさんあったのではないかと思います。みなさん、ありがとうございました!