※本記事は、2018年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』33号に掲載したものです。目次はこちら!
●リーマン・ショック以降自力での顧客獲得が不可欠に
●日本企業の課題(1)社内の専門人材の欠如
●日本企業の課題(2)戦略のないツール選択
●由来から読み解くCRMとSFAの歴史似て非なるMA
●日本企業の体制や仕組みにマッチしたABMの概念
●BtoBマーケティングを「経営戦略」とすべき理由
リーマン・ショック以降 自力での顧客獲得が不可欠に
私はBtoBマーケティングの支援を続けて30年近くになります。実感として、マーケティング活動を推進して進化するツールも使いこなす企業と、まだ二の足を踏んでいる企業の差が大きくなっており、二極化が進んでいます。実際にセミナーや勉強会ではいまだに、足を運んでくれていながらもマーケティングに懐疑的な方に出会います。
そこで、最近はよく、こういうタイトルで話をしています。「自由の風は、マーケティングの上に吹く」。マーケティングを通して、自社の力で顧客を見つけられれば、もしも既存顧客から不利益なことを突き付けられても応じなくて済む。それはつまり、自由があるということです。
BtoB企業、特に製造業でマーケティングの必要性を感じていないのは、裏を返せば優良顧客がいるわけですよね。品質と納期さえ守れば仕事に困ることはなかった。ひと昔前の製造業の構造でいうと、たとえばTier3(三次請け)で売上1,000億円、従業員5,000人、国内3工場という規模の会社でも、営業がわずか4〜5人ということもめずらしくありませんでした。マーケティングどころか、営業すら不要だったのです。
しかし、2008年に起こったリーマン・ショックを転換点に、時代は変わりました。親会社や発注元から、今後は安定的な発注を約束できないから系列外の仕事も請けてよい、と言われるようになり、食い扶持をみずから獲得することを迫られるようになりました。
こうして引き合い依存のビジネスモデルは少しずつ崩壊していきました。そして、このままでは倒産かという恐怖を味わった日本の製造業が行き着いたのが、マーケティングだったのです。今、当社のクライアントには製造業がとても多いのですが、これは昔では考えられなかったことです。
これにはもうひとつ、グローバル化という理由もあります。グローバルになると、ゴルフやお酒でもてなす日本特有の接待はあまり効果的ではありません。この2つの流れから、今、日本の製造業はかつてない熱心さでマーケティングに力を入れています。
いちばん古い業界と思われている製造業にそうした動きがある一方、BtoBで逆に後れを取っているのは金融、サービス業、また意外にもIT業界ですね。銀行などは顕著で、共働き世帯が増えている時代に窓口が平日の3時までというのは、マーケティングの発想からはかなり遠い。気づいたときには利便性の高いネット銀行の勢力がますます強くなっていく、という事態が容易に起こります。
言葉が強いですが、マーケティングを軽視してきた会社の末路は既存顧客のいいなり、ということも実際に起こっているのです。マーケティングサービスのサプライヤーとしてのポジショントークだろうと思われるかもしれませんが、今、BtoB企業にとってマーケティングは、生き残るために必要な活動になっています。