個人情報の“種類別”に見る、生活者の提供意識
続いて、企業から見た個人情報の活用という観点に立ち、それぞれのパターンについて「金銭的メリット(ポイントや謝礼品、キャッシュバック、割引など)」があれば提供してもよいと思う個人情報を尋ねた。代表例として「一般企業」の商品・サービスの「利用」の場合を採り上げ、個人情報の各項目について「金銭的メリット」提示前のスコアと、「金銭的メリット」があった場合の上昇幅を図示した(図表5)。ここから以下のような傾向性が読み取れる。

ベース:全体(n=1,000)※図中1〜39の番号は、図表3の項目一覧の番号に対応する。
自分自身の基礎情報や連絡先等
元々の提供許容度も比較的高く、さらに金銭メリットがあると許容割合が最大10ポイント程度高まる。
自分の生活に関する情報
提供許容度は比較的高いが、金銭メリットでの伸びは中程度。
自分に付与された番号等
提供許容度は低く、金銭メリットでの上昇も5ポイント以下の項目が大半。
自分の行動に関する情報
提供許容度は中〜高程度だが、金銭メリットによる上昇幅は小さめ。
自分の身体・生体に関する情報、その他
元の許容度にはばらつきがあるが、金銭メリットでの上昇幅は総じて低め。
このように、生活者の個人情報に対する感覚や取り扱いも、その種類によってパターンが見られる。日本でも、銀行業界などでいわゆる「情報銀行」事業領域への参入の動きが目立ち、注目が集まっている。
情報の“組み合わせ”で見る、生活者の抵抗感
上記では個々の個人情報項目を見たが、生活者が提供について考えるもうひとつの視点として、“個人情報の組み合わせ”も重要だと考えられる。ここでは、「氏名」「Webページの閲覧履歴」「生体データに関する個人識別符号」の3つについて、一緒に提供されることに抵抗がある項目を選択してもらった(ただし、回答負荷を考慮し、図表6のように16項目に集約)。ここから、どのような組み合わせが特に忌避されやすいかを、TURFという分析手法によって確認する。TURFは、項目の組み合わせによって、回答者の何%をカバーできるかを算出する方法である(図表6)。

ベース:全体(n=1,000)
「生体データに関する個人識別符号」では、他の項目との組み合わせ自体を拒絶する回答が3割程度と高く、生活者の不安感が表れている。組み合わせ項目で見ると、いずれの場合でも、「クレジットカード番号」と組み合わせての提供になると、全体の8割程度が拒否反応を示す。さらに、「公的機関の個人識別符号」等が加わることで抵抗感が強まっていく様子がわかる。
このように、個人情報の提供先や活用内容によって、提供許容項目の種類や組み合わせにはパターンによる違いが見られた。また、金銭的メリットによる情報提供の促進についても濃淡が見られた。
最後に、企業にとっては、その場の金銭的メリット等だけではなく、トータルプロセスとしての適切な取り扱いも求められるだろう。個人情報取り扱いのルールとして、「適切な扱いの認証を受けた企業が取り扱う(35%)」「どこでどの目的で使われるのか、丁寧に事前説明がある(34%)」などとともに、「自分が会員を退会したら、個人情報もすべて削除される(40%)」がさらにスコアが高い(いずれも各条件が保証されるなら「通常より積極的に+通常よりある程度積極的に、提供してよい」のスコア)。これも、冒頭でも触れた「自分の個人情報の提供先については把握・管理しておきたい」という生活者の意識とも言えるだろう。
企業が個人情報データをよりよく活用していくためには、このような生活者の意識を踏まえ、メリットを提示し、不安等を除いていく不断の取り組みが求められると考えられる。
■調査概要調査主体:マクロミル・翔泳社(共同調査)
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:全国20~69歳の男女(マクロミルモニタ会員)
割付条件:男女500人ずつ、年代(10歳刻み)は国勢調査の人口構成比にあわせて割付を行って回収/1,000人
調査期間:2018年7月13日(金)~2018年7月14日(土)
・本文の数値は四捨五入した整数で表記。
・百分率表示は四捨五入のため丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合がある。
▼調査レポート
『個人情報に関する調査』(HoNote)