ネットでの話題以降、首都圏での取り扱い店舗が増加
――ネット上で話題になった後、『アイラップ』の売れ行きはどう変化しましたか?
中の人:まず、取材のオファーは7~8件ほどありました。把握しているだけでも25件ほどのメディアで拡散されていました。知らないうちに記事になっていることも多かったです。また、Twitter開始後(2018年6~8月)の販売数量は昨年対比約108%でした。
「どこで購入できますか?」というお問い合わせもいただくようになり、『アイラップ』以外の新商品のお問い合わせも増えました。直接関係しているかはわかりませんが、これまで取り扱いのなかった東京でも、いくつかの店舗で入荷されていたのが嬉しかったです。
――非常にこまめにTwitterを運用されていますが、他の業務に支障はないのでしょうか?
中の人:私は、『アイラップ』を取り扱っている部とは、別の部に所属しています。本業は商品の企画・開発やデザイン業務です。そのため、公式アカウントは業務の合間に更新しています。公式Twitterアカウントの「中の人」が私であるということすら、最近まで社内で知られていませんでした。
自社の製品を好きでいることが何より重要
――実際に『アイラップ』を使っているユーザーからはどういった声が寄せられますか?
中の人:「災害時に役に立った」「自分の周りの人にお薦めしたい」「ただのポリ袋として数十年使っていたが、初めて加熱できることを知った」「これからも使い続けます」といった声をいただきます。
――MarkeZine読者のヒントになるような有益なアドバイスがあればお願いします。
中の人:まずは、自社製品を好きでいることですね。次に重要なのは、常にアンテナを張ることです。何か商品に関してトラブルがあれば、すぐに対応します。ネットなどで話題を呼ぶと、知らないところで様々なことが起きていることがあります。取材などは良いのですが、使い方を誤った記事が書かれた場合、最終的にはそれがクレームにつながる可能性があります。休日の夜にそういった記事が出たときは大変でした。
最後に、仕事のことばかりツイートしないことでしょうか。「いち『アイラップユーザー』」としての目線は失わないようにしています。企業としての公式な情報窓口は広報に任せることをお勧めします。
――どうもありがとうございました。
限られた広告宣伝費用というリソースをいかに有効に使うか、というのはマーケターの方に共通するテーマかと思います。今回の事例のように、「予算がない中で活路を見出したのがSNSマーケティング」という点に共感されるマーケターの方も多いでしょう。テレビCMなど他の広告媒体同様、炎上するリスクはSNSマーケティングにも常につきまとうものの、認知度向上に強みがあるように思います。
「中の人」も話していましたが、SNS経由でユーザーとダイレクトにコミュニケーションをとる上で重要なのは、企業広報視点でのテンプレート的な発言ではなく、自分の好きなものを伝播するような個人の立場からの発言です。そのほうが共感や拡散を呼び込みやすいということでしょうか。ローカル色の強かった『アイラップ』が、ネット上で話題になったことをきっかけに一気に全国区へと駆けのぼることができるのか、今後も注目したいと思います。