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有園が訊く!

中国が急速にデジタル化しているワケ 日本企業が巻き返すカギは「UXグロースハック」にあり


UXを改善してビジネスを伸ばす「UXグロースハック」

有園:誰かが困っているタイミングはほかの人も困っているだろうから、そのモーメントを分析するんですね。今の行動データから課題を見つけて解決するとビジネスも成長する……というのは、御社が推進する概念でもある「UXグロースハック」といえますか?

中島:そう考えています。UXを向上させてビジネスを成長させる、それをぐるぐる回して業績を上げていくことを「UXグロースハック」と言っています。既存のPDCAのドリルダウンも必要ですが、それが事業者視点であるのに対し、こちらはユーザー起点で「どのような不幸せが解決されるべきか」を見出し、その解決を見られる指標をKPIに設定します。

 このとき同時に重要なのは、One to Oneマーケティングに“ならないように”すること。むしろ一人ひとりを見ると、企画の粒がすごく小さくなってしまうんです。

宮坂:One to Oneは実際、すごく大変ですよね。でもセグメントに分けると粒度が甘くなる。それより行動データが取れているなら、人を見るのをやめて、モーメントをしっかり発見して施策を打つ方向へ転換したほうが、企画効率が高くなる。

中島:そう、UXグロースハックのいちばんのボトルネックは企画立案なんですよ、これはまだ当分AIではできそうにない。となると、人力ならなるべく企画数を少なく精度高くすべきなので、行動データからボリュームを取れる共通モーメントを見つけることが重要なんです。

 社会の不幸せを見つけ、それを幸せに転換する施策を打ち、裏側ではそれがサステナブルに回るビジネスロジックを考える。このUXグロースハックは、僕は新時代のイノベーションの作り方だと思っています。

デジタルマーケターによるボトムアップの変革

有園:中国にはペインポイントが多いから、それを幸せに導くことで結果的に社会のインフラ構築にまでつながっている、それはつまりUXグロースハックでイノベーションを起こしているわけなんですね。

中島:そういう見方ができると思います。でも日本でも大いに可能性があるはずです。たとえ最初は小さなメルマガ施策の改善でも、それをつなげてどんどんUXを向上させると、うまくいけばひとつのビジネスに成長するかもしれない。

 僕が期待しているのは、このイノベーションを起こすのがデジタルマーケターであり、デジタルマーケティングのチームだということなんです。古くはWeb担当者などと呼ばれていた僕らが培ってきた中に、実はデジタルトランスフォーメーションのコアスキルがあって、僕らがその変革のリーダーになるべきだ、と。

有園:なるほど。それはすごく、ボトムアップ的ですね。

宮坂:それは今後の日本企業にとって重要なキーワードですね。中国の好事例を挙げると「日本ではトップダウンはムリ」とよくいわれますが、UXグロースハックは現場から小さく始めてうまくいけばだんだん拡張させていくので、実にボトムアップです。

 かつ、日本には元々「コト」の企画力、すなわち創造性やクリエイティブがあるから、ペインポイントを「コト」で解決していけるはず。中国の企業がやっていることに日本の強みを導入すれば、大きなビジネス成長を見込めるイノベーションを起こせるだろうと思います。

有園:確かに、アニメをはじめ日本のエンタメが強いのも、コトづくりの力やストーリーテリングの力が大きいですよね。それらを活かして、まさに、下部構造となったデジタルが上部の社会を良くしていくんですね。

中島:そうです。デジタルマーケターが日本企業を変革する。そこが、僕が今いちばん燃えているポイントなんです。経営者はそれを理解して、人材を含めてもっと投資してほしい。デジタルマーケターの人たちは、モーメント分析というスキルを身につけて、日本人の繊細さやストーリー構築の力でUXグロースハックを構築していってほしいと思います。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/16 11:20 https://markezine.jp/article/detail/29336

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