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MarkeZine Day 2018 Autumn(AD)

導入1年目、3人のプロジェクトチームで成果を上げる楽天オーネットのマルケト活用術

 マーケティングオートメーションが日本に登場して約5年。その特長は、顧客のニーズや心理状態に合わせて、長期的にエンゲージメントを築くことにある。この特長を生かし、見込みリードから新規会員の引き上げに成功しているのが、結婚情報サービスを提供している楽天オーネットだ。MarkeZine Day 2018 Autumnでは、同社の具体的なエンゲージメント設計のノウハウと成果が共有された。

あらゆる企業に役立つのが「エンゲージメントマーケティング」だ

 「マーケティングオートメーション(以下、MA)」という言葉が日本市場で認知されるようになって、5年近くになる。そのMA市場において、存在感を放ってきたのがマルケトだ。

 マルケトが日本市場で営業を開始したのは、2014年のこと。以来、BtoB/BtoC問わず、様々な業種の企業に導入されてきた。MAツールの特長は、顧客ニーズや心理状態に合わせ適切なコミュニケーションを適切なチャネルで行い、顧客との長期的なエンゲージメントを確立することにある。マルケトでは、これを「エンゲージメントマーケティング」と呼んでいる。

 そして、「エンゲージメントマーケティングは、業種・業界や規模に関係なく、あらゆる企業に役に立つ」とマルケトでマーケティング本部長を務める小関氏はいう。

マルケト マーケティング本部長 小関氏
株式会社マルケト マーケティング本部長 小関貴志氏

 この方法で大きな成果を上げているのが、楽天オーネットだ。本セッションでは、小関氏に続き、楽天オーネットでマーケティングの担当している岡田氏が登壇。約1年間にわたるマルケト活用とその成果を共有した。

広告で獲得したリードが失われていく……

 楽天オーネットは、楽天が展開する結婚相談所サービス。全国に約48,000人の会員がおり、お見合いや婚活パーティー、データマッチングサービスで出会いの場を提供することで、年間5,000人のカップルを誕生させている。

 マルケト導入前の同社では、新規会員獲得のために3段階のセールスフローを取っていた。第一段階では、マーケティング部が広告でリードを獲得。第二段階でコールセンターがリードに電話をかけて来店アポを取り、第三段階で店舗での顧客化を実現するというフローだ。

 ところが、これには大きな問題があった。それは、せっかく広告で得たリードが、第二段階の「来店アポ取り」でほとんど失われてしまうこと。楽天オーネットの会員になるためには来店が義務付けられているが、「誰かいい人に出会えればいい」「婚活するか悩んでいるが、情報収集はしたい」といったライトな層にとって、来店はハードルが高い。

楽天オーネット マーケ
株式会社オーネット マーケティング部 顧客開発グループ 岡田奈々氏

 「婚活や結婚に対するレベルは様々であるのに、どの方にもすべて同じ『来店しませんか』というメッセージを送っていました。アプローチの期間も『リード獲得後1ヵ月』と非常に短かったので、態度変容を起こすための時間も取れません。また、電話のみでアプローチしていたので、取り逃してしまっていた層も多かったのです」と岡田氏は、以前の課題を話した。こうして同社では、セールスフローを全般的に見直すこととなった。

施策の肝になった「カスタマージャーニー作成」のポイント

 セールスフローの見直しに際し、岡田氏が重視したのは「コールセンターからのアプローチで落ちてしまう人を拾い上げること」だった。これに対する具体的な施策が「見込み度合いに応じ、継続的にメールを活用してアプローチをする」というもの。これを可能にするMAツールとして選択したのが、マルケトだ。

 マルケトでは、エンゲージメントを深めるための「エンゲージメントプログラム」が用意されている。これは、見込み顧客のエンゲージメント度合いによってメッセージを出し分けられる仕組みで、オーネットではこれが導入の決め手にもなった。

 マルケト導入プロジェクトの中心メンバーとなったのは、岡田氏と開発部門のエンジニア、プログラマーの3人。具体的な施策の内容を導入前に詰めていたこと、メンバー全員で早い段階からマルケトの研修に参加したことで、「自分たちが使いやすい仕様にすることができた」と岡田氏は振り返る。

 またシナリオ作成にあたっては、同社独自のジャーニーマップを作成した。このマップでは、通常のカスタマージャーニーに沿って、リードの意識や認識がどう変化していくかを表している。

 「最終的なゴールは、無反応だったリードを『来店アポにつなげる』ことです。これに向けて、リードがどのタイミングでどんな気持ちになるのかを考えながら、一つひとつのフェーズのゴールを策定していきました」(岡田氏)

 出来上がったカスタマージャーニーが上記図だ。コミュニケーションツールにはメールを活用し、各フェーズのゴールを設定した。「メールをきっかけに婚活意欲が再燃する」「メールを通じて楽天オーネットのメリットを感じる」というように、各フェーズのゴールを具体的に設定することで、伝えるべきメッセージが明確になった

リードの状況に合わせて、パーソナライズドなメールを配信

 次に、このカスタマージャーニーをマルケトのエンゲージメントプログラムに落とし込んだ概念図が下記である。

 マルケト活用施策においては、顧客の状態をCold/Warm/Hotの三段階に分け、最後のHotで来店を促進することにした。マルケトでは、Web上での顧客行動をトラッキングできるため、Coldが「サイトに再訪した」というトリガーでWarmへ、Warmが「検討者がよく閲覧するページを訪問した」タイミングでHotリストへ、というようにエスカレーションさせることができる。施策としては、Coldリストには月1回のメール、Warmでは隔週のメール、Hotには毎週メールを送り、状態に合わせてメッセージを送る頻度に変化をつけた。

 さらにエンゲージメントを高めるために、顧客それぞれの属性に応じてメッセージを出し分けた。20代女性と40代男性であれば、それぞれに応じてメッセージを出し分けないと、心に刺さらない。

 たとえば、メールの件名を「27歳女性にマッチング」「40歳男性に」と送る相手によってパーソナライズし、画像も女性向けと男性向けで出し分けている。こうしてメッセージのパターンを細かく設定することで、婚活そのものへの興味・関心を高めている。

最終的なビジネスゴールとKPIは、必ずしも一致しない

 導入後のPDCAについては、毎月成果を見ながら配信時間、配信内容、配信頻度を確認。最終ゴールである「来店アポの獲得」というゴールとKPIがズレていないかを確認するために、メールの開封率やクリック率、行動履歴をフォローすると同時に、リードのステータスが引きあがっているかどうかを毎月確認している。施策の効果検証におけるポイントについて岡田氏は、「細かいKPIに沿って一つひとつの施策の成果を確認することが重要」と指摘する。

 岡田氏がこのように話すのは、KPIの一つである「メールの開封率」と、最終ゴールである「来店アポ」の数値にズレに苦戦した経験があるからだ。

 具体的には、メールでのアプローチ施策の効果検証をする中で、メールの開封率が最も高いのは朝に配信したメールであったが、来店アポにつながった率が高いのは、夜に配信したメールであることがA/Bテストから判明した。最終ゴールは「メールの開封」ではなく「来店アポ獲得」であるため、その後はアポにつながりやすい夜にメールを配信するようになったが、この経験から効果検証における細やかな成果確認の重要性を認識したという。

 こうしたPDCAによって得られた成果の中で顕著なのが、「売上への貢献」だ。マルケトを使った施策を2017年7月に開始してから2018年4月までの10ヵ月間の推移を見ると、全契約数のうちマルケト経由で契約に至った件数は、0.3%から5%にまで上昇。また、契約件数をメールの開封率で割った転換率(CV率)も、開始当初と比べると3倍になっている

 加えて、コールセンターの工数削減にも貢献している。コールセンターで行っていたメール配信をマルケトで自動化したことで、工数の35%を削減できたそうだ。

 「成果を出せたのは、MAツールによって無駄な時間を取られず、戦略立案やPDCAを回すことに注力できたことが大きく影響していると考えています。マルケトの場合、メールのテンプレートも豊富なので、デジタルのノウハウがなくてもメールを作って施策を回していくことができます。また、技術的なノウハウがなくても分析やレポートが容易にできるため、本来の業務に集中することができました」(岡田氏)

MA導入成功に立ちはだかる「部門間の連携」で大切なこと

 さらにMAツールを導入する際、多くの企業で問題となる「部門間の連携」についても岡田氏は言及した。楽天オーネットの場合、「部門間の連携」をクリアできたポイントは、マーケティング部門だけですべてを管理するのではなく、横串で運用体制を作ったことにある。導入時に開発部門を巻き込んでデータの連携や仕様などを使いやすいように開発し、運用においてはリード引き上げのミッションをもつコールセンターとの連携を強化したのだ。

 コールセンターとの連携強化においては、お互い追っているKPIが違うため、何度もミーティングを重ね、MAツールを活用する施策への理解を得ていった。こうした取り組みの結果、組織全体で「成果を出す体制づくり」が実現したという。

 最後に岡田氏は、MAツール導入のポイントとして「スモールスタートで実施すること」「細かいPDCAを繰り返すこと」「成果を出して、関連する部門からの信頼を得ること」の3つを挙げた。マルケト導入の2年目は、営業やコールセンターともより深く連携し、新しいリード獲得のプロセスや育成フローの確立を目指している。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/12 10:00 https://markezine.jp/article/detail/29356