Domoは「ビジネスのためのOS」である
本セッションのはじめに登壇したのは、ドーモでヘッドオブマーケティングを務める斉藤氏だ。同氏は、セールスフォースやアドビ システムズへの在籍経験があり、これまで日本市場向けのマーケティングを担当、そのキャリアは15年以上にも及ぶ。そんな同氏は、この10年の間にデジタルマーケティングが主流となり、ビジネスの現場ではリアルタイムデータの取得、施策の効果検証、ROIの可視化が当たり前となっていったと話す。
「データへの期待値が高まり、データを経営に活かすビジネスインテリジェンス(BI)への注目が高まっています。以前はBIツールを導入するとなると、莫大なコストがかかる上、活用するための専門知識も必要でした。対してDomoのターゲットは、あらゆるビジネスユーザーです。まるでメールやアプリを使うように、日々の業務でデータを活用できるプラットフォームとして、ビジネスに役立てることができます」(斉藤氏)
また同氏は話の中で、Domoを「ビジネスのためのOS」と表現。社内に散在する膨大なデータを1ヵ所に集約し、誰もが利用できる環境を作り出すDomoは、データ活用の裾野を専門家に限らず、営業やマーケティングなど幅広い領域での活用が広まっている。
そして同氏は、Domo導入の事例としてエイベックスを紹介し、スピーカーの山田氏にセッションをつなげた。
多角的な事業展開の裏で抱えていたマーケティング課題
エイベックスで事業横断のマーケティング分析やオフィシャルサイトの運営、AIの研究開発などを行うデジタルクリエイティヴグループを統括している山田氏は、同社のビジネス紹介から話を始めた。
音楽レーベルとして知られる同社は、グループ会社数17社、所属アーティスト400人、従業員数1,800人と日本を代表するエンターテインメントのリーディングカンパニーだ。同社を親会社とし、8つの子会社と海外事業も展開している。
主な事業として、まずは主力となる音楽事業がある。これに加え、アニメ事業、デジタル事業、ダンススクールや旅行、ベンチャーキャピタルに飲食事業など、自社のコンテンツを資産に多角的にビジネスを展開しているのが同社の特長だ。デジタル事業では、NTTドコモと提供しているdTVや、サイバーエージェントと組んだAWAなどのプラットフォームを提供している。
一方、多方面でのビジネス展開の裏で、次のようなマーケティング課題も抱えていた。
「お客様は、好きなアーティストのライブへ行き、音楽をCDや配信で楽しみ、各種デジタルチャネルなどで情報を得る……というように、弊社のサービスを網羅的に利用されています。ですので当然、事業同士で連携したマーケティングが必要となってきますが、縦割り組織が壁となり実現できていませんでした」(山田氏)
この課題を解決するために、同社は、事業を横断したマーケティングおよびデータ活用に取り組み始めた。
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事業横断的なデータ活用を妨げていた、2つの問題点
2017年4月、同社は全事業を横断的につなぐ専門のマーケティング組織を設立。並行して、事業を横断したデータ活用の推進・啓蒙の推進と、それを支える分析基盤の整備を目的としたデータプロジェクトを立ち上げた。
プロジェクトの進行にあたり、事業ごとにデータ活用の状況を洗い出してみると、2つの課題が浮き上がった。1つ目は、事業部やサービスごとに利用しているBIツールが異なること。2つ目は、独自開発のWeb管理ツールの機能性が低いことだ。さらに、それらの補修・改修に多額のコストがかかっており、レポーティングにも時間がかかっていたという。
これらを解決するため、新しいツールの導入検討を開始。オンプレミスorクラウドサービス、無料or有料を問わず、あらゆるツールの調査・比較や利用ケースを検討した。加えて、現場や各部門にもヒアリングを行い、数ヵ月かけた検討の結果、Domoを候補に決定した。
「それぞれの事業が、各々で異なるデータベース・データソースを持っていました。それらを統合するためには、多数の製品と連携する実証実験が必要になります。さらに、パフォーマンスやユーザー管理なども含めて、実用に耐えうるかの検証も行いました。そうしてようやく、昨年12月にDomoの採用が決定したのです」(山田氏)
導入検討から採用まで半年以上もかけて綿密な検証を続けたエイベックスからは、実用性のあるデータ活用に取り組む強固な姿勢がうかがえる。
普段の業務で行うのは「深掘り分析」でなく「定点観測」
では、なぜエイベックスは数多くある分析ツールの中からDomoを選んだのか。その理由について山田氏は、データ活用を「深掘り分析」と「定点観測」の2つに分け、その違いを説明した。
「データサイエンスの領域で行われる深掘り分析には、仮説・課題を基に検証していくプロセスが求められます。一方、定点観測はデータで日々の動きを追いながら変化を見出し、アクションにつなげる必要があります。
もちろん、ビジネスユーザーが普段の業務の中に取り入れる作業は、定点観測のほうです。彼らが日常的にデータを活用するには、美しく表現力のあるビジュアライズが必要となります。それを可能にするのが、Domoでした」(山田氏)
前述したように、エイベックス社内には様々なツールとデータ形式があり、すべてを集約するためのコネクタが必要だった。Domoはマーケティング領域だけでも、Google Analytics、Adobe Analytics、Hub Spotなどと多様に対応しており、全体で500種類以上のコネクタを持っている。この接続先の豊富さもDomoを採用した決め手になったと山田氏。
さらに、シンプルで優れたUIによる操作性も理由に挙げた。これまでデータソースを組み合わせてレポートを作成するには、SQLでデータを取りだすことが必要だった。しかし、DomoのETLという機能を使うと、GUIで簡単に複数のデータソースを組み合わせ、レポートを作成することができる。実際に、初めて分析業務に関わった入社したての若手社員も既に実用的なレベルで使いこなせているという。
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社員へのツール啓蒙で重要なのは「技術支援だけで終わらない」こと
また、ツールの導入には、「実際に使ってもらえない」「社内への啓蒙が難しい」という課題も付いて回る。
こうした壁をクリアするため、同社では、Domo活用を推進するプロジェクトチームを発足。同チームは、マーケティング アナリティクス ユニット内に置かれ、Domoのサポートを行っている。そして、このチームのポイントは、技術支援だけで終わらないことにある。
「プロジェクトチームの重要な役割は、Domoを活用するきっかけを作ってあげることです。そもそも現場では、データ活用やデータの可視化とはどのようなことなのか、どのようなレポートが必要なのかが理解されていません。ですのでプロジェクトチームは、具体的にデータ活用の意義・ノウハウを伝え、Domoを活用するきっかけや機会を生み出しています」(山田氏)
Domoを使いこなすDomoマスターも各部署にいるが、責任者や理解している人だけが使うのではなく、社内でDomoのファンを作り、活用する環境を整えることが重要と山田氏。
確かに、トップダウンでデータ活用を訴えても、現場はなかなか動かない。Domo導入のゴールは、毎日の業務に自然とデータ活用を取り入れ、その先の成果へつなげることにある。プロジェクトチームがきっかけを作り、Domoを使ってどのような表現・気づきを得たいかを自ら考え、実行できる人を増やしていく。このサイクルを上手く回すことがDomoを社員に活用してもらうためのポイントだといえる。
現場指標から経営指標まで網羅的なデータ取り込みへ
同社では、既に存在するデータの取り込みは完了している。次のステップは、「社内外のデータを拡充すること」だ。さらに、現場指標から経営指標まで網羅的に使えるようなデータの取り込みも進行中である。
「まだビジネスにおいて必要としているデータの1割しか取り込めていません。すべてを集約したときに、データの取り扱いは変わると確信しています」(山田氏)
今後は、個人管理のデータ集約にも着手する。そこから、データの統合だけではなく、日々のタスクやデータの管理方法、ツールの使い方など業務を見直す環境も整えていくという。データ活用がもたらす新たな可能性も覗かせ、セッションは終了した。
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