テレビとデジタルの役割&メディアプランの全体設計
嶋野:逃げ恥は、契約結婚という新しい家族のカタチもテーマになっていたので、「これからのスタイル。」というコンセプトとの接着点になると思いました。世の中的にも、逃げ恥ロスという言葉が生まれるくらい、話題になっていましたからね。“逃げ恥ロスの解消”を表現コンセプトのひとつに置くことしたんです。
――コアの部分を定めて、そこからマスとWebを展開していったと。このキャンペーンでは、マスとWebの役割をそれぞれどう設定したんですか?

安達:「これからのスタイル。」というコンセプトをパブリックに宣言するのがテレビCMの役割。一方Webでは、デジタルの中でもスマホを、スマホの中でも縦型動画を選択し、ワンツーワンで語り掛けるようなクリエイティブで、パーソナルなコミュニケーションを図りました。
常にこの役割分担が正しいとは思わないです。今回はこれが最適だと思った、ということです。逆に、スマホ縦動画をそのままテレビで流しても全然ダメだったはずです。
水本:そうなんですよね。「#金曜日の新垣さん」を100人くらいの勉強会で流すと、変な雰囲気になるんですよ(笑)。可愛いというよりも、照れくさいというか。メディアによって最適な表現が違うって、こういうことなんだなって思います。
嶋野:メディアプランもクリエイティブと同時に提案していきました。
ターゲットを3つに分けて、それぞれを店頭に誘導するためにカスタマージャーニーを引きました。あまり詳しくは言えないのですが、ターゲットごとにテレビ・バナー・動画広告の最適配分をご提案しました。
「#金曜日の新垣さん」は、その中でも3つ目のターゲットであり、今最もNOAHから遠いところにいる人を意識したものです。彼らを振り向かせるためには、話題性が必要だということで、他のターゲット層とは全く違うアプローチを開発しました。
全体設計として、ターゲットとクリエイティブをパズルのように出し分けたから成果にもつながりましたし、クライアントさんにも納得してもらいながら進めることができたんだと思います。
一度バズっても意味がない。結果に繋がる話題化を設計
――「#金曜日の新垣さん」について、もう少し詳しくお聞きできますか?
嶋野:Webでひと山大きくヒットするコンテンツは山ほどありますが、それだと意味がありません。いつターゲットの心が動くかはわからないので、リーセンシーを重視して、Web動画を当てていくことにしました。具体的には、ターゲットは休日にお店に行くと仮定し、毎週金曜日に動画を配信しました。「#金曜日の新垣さん」は、逃げ恥にあった“火曜日はハグの日”を意識しています。
安達:クリエイティブの内容も、縦型動画ならではの視聴者との距離感を想像し、そこからの逆算でセリフなどを詰めました。スマホの縦型動画ってパーソナルで見るものなので、2人だけの親密な関係を感じられた方が絶対に良い。新垣さんの指示に従って、見ている自分が首を振る感覚になるようにカメラワークをつけたり。この動画にひとりで没入している人を想像して、そこからの逆算で「誰かに見られらた恥ずかしいよ?」という新垣さんのセリフを忍ばせたり。
最近は、小さいコミュニティを突いてそこでのバズを狙ったり、動画をターゲットに合わせてカスタマイズして細かく当てていくといったやり方も増えていますが、それって個々人の話だからシェアしようとは思わないし、シェアされても範囲が狭い。「#金曜日の新垣さん」は、「デジタルこそマスだ」という考えで、みんなに響くパーソナルな動画を広く届けようとしました。
今回ももちろん、動画を見た人をリターゲティングしてバナーを見せるということもしています。が、やっぱり「Webであっても、テレビと同じくらい国民全員に広げたい」とついつい考えてしまいます。CMプランナーの性でしょうか(笑)。
嶋野:クリエイティブでは、店頭だけで見られるバージョンも作って、来店を促進しました。結果的に、動画再生回数は、約2,000万回まで伸びまして。全テレビ局から取材が来るほど、マスの規模まで広がりました。あと、新規のサイト訪問数が上がり、バナーの効率も非常に良かったです。