アタラは、2018年10月10日にビジネスカンファレンス「ATARA LIVE 2018」を開催した。「これからのデータドリブンマーケティング」と題したキーノートセッションでは、花王の佐藤満紀氏とLDH JAPANの長瀬次英氏が登壇。必要とされる新たなデータドリブンマーケティングの在り方について語った。モデレーターは、アタラの杉原剛氏。
花王が消費財メーカーとして抱える課題
花王の佐藤氏は、日経MJが発表している「ヒット商品番付」の変化について言及。1987年の番付では「スーパードライ」と「アタック」が横綱だったが、最近のランキングでは日用品や消費財が出てこないという。近年では、「ポケモンGO」や「ZOZOSUIT」といったデジタル化によって生み出された商品やサービスがその地位を取って代わっている。その流れに消費財メーカーとして課題を感じていると佐藤氏。生活者が多様化してビジネスの単位が分割されてきた結果、大ヒットを意識しつつも、個々の施策の成功確率を上げるデータ分析が求められるようになってきたのだ。
花王のようなBtoBtoCのマーケティングプロセスの構図では、広告代理店経由で様々な施策を行うコミュニケーションのルートがあり、それごとに計測しなくてはならないデータや指標がある。マスマーケの仕組みは既に完成されており、佐藤氏はそれを最適化する活動をしてきた。
しかし、最近ではオンラインで展開される「SNS/口コミサイト」や「EC」の影響が増しており、それにまつわる変数も増大している。「アンケートや調査をしても生活者の建前が出てきてしまうので、建前ではない本音に迫るようなデータがどこにあって、どうやって分析していくかに注力している」と佐藤氏。
データ分析での成果と課題
現在、佐藤氏の部署では、データによる顧客理解を進めた上でインサイトの発見の仮説出しを行い、メディアやコンテンツをどう作れば良いかを考えている。そのサイクルを回しながら、市場を創造したり、売上を上げる活動を行っている。
特に建前ではない生活者の実態や意識をどうやって分析するかには貪欲に取り組み、顧客理解にはかなりの成果があがっているそうだ。そこには様々な立場や経験を積んだメンバーによる議論も欠かせないと佐藤氏は説く。
一方で施策の効果検証の面では、まだまだ難しい状況だという。個別のクリエイティブでとちらがよかったかなど、局所的な判断は可能だ。しかし、花王で多く扱われる既存品と呼ばれる何年も売れ続ける商品の場合、広告宣伝を含めて蓄積効果が大きく、小さな変化はデータを見ても捉えづらい。加えて、環境や市場の変化も大きい。さらに再現性の保証もできない。この点は、データドリブンマーケティングが解決すべき問題点でもあり、可能性のあるところだろう。