料理における「面倒」をなくしたかった
一般社団法人日本栄養検定協会 代表理事 松崎恵理氏
北海道札幌市出身。栄養学修士。政府系金融機関退職後、女子栄養大学大学院に進学。一般社団法人日本栄養検定協会を設立後は、栄養士にならない人でも栄養学を体系的に学べる環境を整え、検定や通信教育を実施している。
――はじめに、『片手ですりきれる計量スプーン』の開発に至った経緯を教えてください。
松崎:2年ほど前の話なのですが、栄養バランスを考えた健康的なレシピを半年で2,000以上作成し、撮影用の料理も行うというお仕事をいただきました。毎日のように撮影用の料理をしていたのですが、調味料となる塩や油などの分量が細かく定められていたため、正直「面倒」と感じるようになりました。
調味料をしっかりと計量するためには、計量スプーンですり切る必要がありますが、料理をしていると両手がふさがって不便なんです。この不便さを解消しない限りは、いくら健康的なレシピを紹介しても、料理を作るハードルが高いままだと感じました。
そこで、いつも調理器具を購入している企業の営業の方に相談したところ、とある商社の社長さんを紹介してくださいました。まさか実際に話が進むとは考えていませんでしたので、かなり驚きました。
販売数は当初予想の4倍以上に成長
――実際に商品を販売するまでにどういった過程を踏んだのでしょうか?
松崎:マーケティングに関する知識を特に持っていなかったため苦労しました。一度、勇気を振り絞ってテレビ局に売り込んだりもしたのですが、コンセプトが類似した商品が放送されてしまい、心が折れてしまいました。他にしたことと言えば、プレスリリースを出すことくらいでした。
その後、そもそも計量スプーンの金型を作る資金がなかったため、クラウドファンディングを利用しました。ただ、これが功を奏し、徐々にネット上で『片手ですりきれる計量スプーン』が認知されるようになっていきました。
――クラウドファンディング以外では、どういった形で認知が拡大していったのでしょうか?
松崎:Amazonに出品したため、「計量スプーン」というカテゴリーで商品を探していた方々の目に留まったようです。また、発売記念のイベントを行うにあたって、集客用の広告をFacebookやTwitterで出したところ、多くの方々に見ていただくことができました。当協会のメルマガ会員や検定を受験された方など、商品に対するニーズが高いと思われる層に向けた告知も効果があったと推察しています。
――ネット上で認知が広がるにつれて、どういった変化がありましたか?
松崎:Amazonに出品した頃は「まったく売れないだろう」と思い、在庫に入れていた商品数はごくわずかでした。ところが、ネットで注目を集めるにしたがって売り上げが急速に伸びました。購入個数が多い場合は当協会に直接お問い合わせをいただいているのですが、それらをすべて含めると、現状で当初予想の4倍以上となる販売数になっています。他にも、調味料を扱うメーカー企業から「自社製品の計量用にセットで販売したい」というお話や、「学校で使いたい」といったお話をいただきました。また、暮らし系のサイト『ROOMIE』をはじめとするネットメディアにも多数掲載していただきました。