エージェンシー組織への3つの提言
ここから同レポートで紹介された、特徴的な3つの提言を紹介する。
1)2種類の組織体制
グローバル広告ホールディングスの体制は、「Individual agency brands」と「Global masterbrand」の大きく2つに分かれる(図表2)。

同レポートでは、「会計を1つの企業体に束ねるほうが、広告主のP&L期待と成果審議(報酬)に答えやすい」「旧来の栄えある有名エージェンシーのネットワークに集約するほうが、クライアントへのブランディング上、有利である」と指摘し、「Global masterbrand」の体制に軍配を上げている。
2)M&A企業が、WPP傘下エージェンシーを狙う可能性
今年4月の、WPPのマーティン・ソレル前CEO退任は衝撃であった。WPPにはプライベート・エクイティ・ファンドの「Bain Capital」や「Blackstone Group」等が主導のバイアウト取引としてWPP傘下の調査会社「Kantar」をはじめ、エージェンシー企業の売却が発生しうる。この再編の流れは、ソレル氏の退任が原因ではない。WPPやOmnicomがとる「寄せ集め」の体制は、コングロマリットとしての付加価値を見出しにくく、実は個別エージェンシーを「切り売り」したほうが企業価値は高まる可能性が示唆される。
3)サービス対価を成果報酬型へシフト
現在のエージェンシー収入における内訳の大半は「Time-and-Materials Basis」という「時給×時間」のフィー課金が大半である。この労働時間課金方法は、極端に言えば「有能なクリエイター一人で速い仕事を行うよりも、無能なクリエイター3人体制のダラダラ仕事のほうが課金は増える(儲かる)」という仕組みだ。
これに対して新しく登場してきた「成果報酬」の体系は、クライアント側が自社の成果目標に対してエージェンシー側と「ボーナス算定」の合意を取る必要があり、導入難易度が高い。しかしついに、ホールディングスのレベルで、成果報酬について方向を打ち出すところが登場してきた。同レポートではDentsu-Aegisのケースを報告している。
ちなみに米Adage誌の集計では今年の集計(2017年)で初めて「デジタルからの収益比率」がそれ以外を含めた全体の50%を超えた(前年が46.6%で今回が51.3%)。ようやく米国ではエージェンシー経営についての「デジタル化(Digital shift)」に対して、目標値やスローガンの言葉を聞かなくなってきた。このForresterのレポートにおいてもDigital Shiftが大議題の項目に入っていないのは偶然ではない。
本コラムはデジタルインテリジェンス発行の『DI. MAD MAN Report』の一部を再編集して掲載しています。本編ご購読希望の方は、こちらをご覧ください。