改革は営業とのGOAL設定から始まる
井田氏は三つのうちの「デジタルマーケティング事業」のプロセス改革プロジェクトにマーケターとして参画した。井田氏がプロジェクトに参画した当時、当該事業では新規顧客獲得のためにセミナー開催、メールマガジン配信、Webサイト更新などを実施してはいたが、営業担当者が兼務で担当していたり、明確なKPIが設定されていなかったりで、PDCAサイクルが回せている状態ではなかった。
そこから同プロジェクトでは、「GOAL設定」「ターゲットの明確化」「コミュニケーション設計」「PDCAの徹底」の四つのステップで取り組みを進め、新規獲得のアポ取得95件と、対前年比で約1.98倍まで増加させる成果を出した。
井田氏らはどのようにプロジェクトを進めて成果を出したのか。BtoB企業特有の営業との連携を踏まえながら取り組んだ経緯と、これから同様の改革に取り組もうとしている企業が留意するべきポイントについて、各フェーズごとに解説した。
まず「GOAL設定」フェーズでは、営業チームと目標の数字や注力するべき商材などを整理するところから始めた。整理の結果、営業チームは現状とあるべき理想のギャップを埋めるために必要となる具体的なパイプライン創出金額をマーケティングに要望として伝えた。
マーケティングチームはこの金額をそのままゴールに据え、それを実現するためのKGIとKPIを策定した。KPIを達成するための実施施策検討においては、過去施策結果のデータ収集および分析には苦労したものの、最も案件化率の高いセミナーと、伸びしろの期待できるメールマガジンに焦点を当てた施策を実施することにした。
このフェーズにおけるポイントとして井田氏が挙げたのは、マーケティングが営業と連携することの重要性だ。
「営業と一緒にゴールを設定することが重要です。BtoBビジネスで商談のクロージングを行うのは営業ですから、要である営業とマーケティングが共通のゴールを持つことが成果に結び付くと思います」(井田氏)
MA導入前にペルソナとカスタマージャーニーを明確に
続く「ターゲットの明確化」フェーズでは、ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成した。井田氏は、「今までもターゲットを決めていたのですが、企業規模、本社所在地、業種という企業レベルでの把握にとどまっており、個人という視点では捉えきれていなかったのです」と話す。
BtoBビジネスでもBtoCビジネスと同様に、購買を決定するのは個人である以上、どんな部署に勤めていて、どんなことに興味を持っているかを具体的にする必要があるのだ。井田氏らは、顧客データベースを基に営業へのヒアリングを通して、ターゲットペルソナとカスタマージャーニーを作成し、営業とともにレビューを重ね、確定させた。

ここからMAツールの設計と設定に取りかかった。コニカミノルタジャパンはSalesforce Pardotを採用し、見込み客(リード)を「グレード」と「スコア」の二つの軸に基づき「ホットリード」「ナーチャリングリード」「ウォームリード」「コールドリード」の四つにセグメント化した。
この場合のグレードとはコニカミノルタジャパンがどの程度そのターゲットにアプローチすべきかの度合い(F~A+)を示し、スコアはその逆でターゲットから見たコニカミノルタジャパンへの興味関心の度合いを示す。
このフェーズでのポイントは、ペルソナとカスタマージャーニーマップを作ってからMAツールを使うことだ。「ペルソナとカスタマージャーニーマップを営業と一緒に作ったにもかかわらず、当初は忙しさのあまりMAをデフォルト設定のまま使っていました。途中で誤りに気づいたのですが、本来の設定に戻すのが大変でした」と井田氏は自らの経験を振り返り、順番の重要性を強調した。