若者の心を摑んだリクルートの音楽ブランディング
また音楽は、若者へのアプローチにも有効だという。高野氏は、リクルートが実施したブランディング施策を例として紹介した。リクルートは今年、「Follow Your Heart & Music」と題して、若者を中心に人気を集める5組のアーティストとコラボレーションを実施している。内容としては、リクルートの目指す世界観である「Follow Your Heart」に基づき、「挑戦」をテーマにそれを体現しているアーティストたちが新曲を描き下ろし、MV制作していくブランディングプロジェクトだ。
「この企画は、アーティストの選定が絶妙です。普通、アーティストとタッグを組む時は、大衆に人気のあるアーティストを選びます。でも、今回リクルートさんが選んだのは知名度や人気度ではなく、自社の目指す世界観を体現しているアーティストたちでした。歌詞に『リクルート』という言葉が出るわけでも、MVに出るわけでもない。あくまで『挑戦』をテーマとして、楽曲やMVそのものをまず好きになってもらって、その先に彼らアーティストを支援している存在であるリクルートに気づくという動線が引かれている」(高野氏)
リクルートはMV公開とあわせて、特設サイトやデジタル広告、アーティストのSNSによる告知も実施。また、音楽メディア『ナタリー』に各アーティストたちのインタビュー記事を掲載するなど、アーティストとリクルートの関連性はしっかりと担保している。アーティストのファンが一連の施策のどの部分からでもサポーターがリクルートであることに気づくようになっているのだ。こうした取り組みによって、MV単体が話題になるとともに、ソーシャル上でアーティスト名を調べた際に「リクルート」という名前も出るようになった。
「記憶に深く残る音楽の力で、ブランドメッセージやスローガンを意訳して届ける。音楽がもたらす情緒的価値や機能的便益を超えた手段は興味深いですし、音楽をプロモーションとしではなく、ブランディングとして活用した例だと思います」(高野氏)
2015年頃から、企業による「音の商標登録」も始まっているという。聴覚メディアを活用したマーケティングの展開に、注目ならぬ“注耳”してはいかがだろうか。
