向いている・向いていないの判断基準
島袋:私はビジネス英語ができないので外資企業は今回の検討からは外れました。経験のある流通小売も考えて、実際何社か受けましたが、採用に至らなかったり、逆にこちらからなんか違うなと思うこともありました。また、自分は総合代理店には向いていないだろうなと、選択肢を絞っていきました。
山口:向いている、向いていないってどう判断されたんですか?
島袋:たとえば代理店の方とはお付き合いが多くありましたが、向こうのテーブルに座っている自分がイメージできませんでした。ヤプリにも知人がいましたが、話していて、向こうの立場で自分が仕事している姿が浮かんできました。それから企業理念とその企業のビジネスがしっくりきているかも考えましたね。

山口:企業理念とのマッチングですか。逆に言うと、アンマッチなのはなんですか?
島袋:そうですね……。たとえば「世界を変えたい」とかだと、それに自分の仕事がどうつながるかあまりイメージできないですね。企業理念は、実は読み込むとどこも本質は大して変わらないかもしれないのですが、言語化された企業メッセージが、自分のやってきたこと、やっていきたいことと当てはめてみたときに違和感ないかは意識しました。
山口:ご自身が提供できる役割と求められる機能のマッチという視点ではどうでしたか?
島袋:私はデジタルとリテール、空中戦と地上戦の両方の経験があるので、そこを強みとして貢献できそうなところという基準で探しましたね。
山口:他のベンチャーとの比較は?
島袋:現実的なところでは、年収以外でも働き方や今後のビジョンの話などを含めて判断しました。ただ、表面的な年収提案以上に、自分に対する期待感の高さを経営者に持っていだたいたのが大きかったですね。
山口:中小企業やベンチャーは自分の頑張りと売り上げの関係性が強いだけに、それを楽しいと思えるか負担に感じるかで、向き不向きが別れますね。40代からは基本的に条件の良い話は表に出てきません。関係性の中やヘッドハンター経由でしか良い話がなくなってくるわけです。島袋さんはこれまでの交流を通して、ベンチャーに惹かれていったんですね。様々な人から情報が集まるネットワークを作られてきて結果、希望するベンチャーとのマッチングが叶ったのかなと思います。ヤプリではどんなことをやっていくんですか?
島袋:ざっくり言うと、エバンジェリスト的な役割を担い、新規顧客の開拓から既存ユーザーの離反防止やユーザーコミュニティの形成など幅広く活動していく予定です。今も金子という者がセミナーや講演会では前面に出てやっていますが、まだまだできることはたくさんあるので、自分もそこに加わる感じになるかと思います。
安定的な収入を捨てて
山口:会社の業績が自己の成功と重なるのもあるでしょうが、自分自身の経験としては何が成功したら満たされたなと思うでしょうか?

島袋:やはりステージ4の「マーケティング施策の統合者」やステージ5の「ブランド・マーケティング全体の責任者」に上がれたらですかね。
山口:その道に進むために捨てたものって何かありますか?
島袋:目先の収入ですね。キリンにそのまま残ったほうが安定的な収入は得られたでしょうから。大学生の頃の自分からしたら、あり得ない判断ですね(苦笑)。私の新卒時代は就職氷河期で、当時、唯一受かったのがパルコでした。20年で環境も自分の考え方も大きく変わりました。