「だから女性は……」を撲滅するには
西口:UCCさんでは、視点の多様性の一貫として石谷さんを招かれたわけですが、今いろいろな経営者とお話しすると、ダイバーシティの悩みがすごく多いですね。主に、どうやって女性にもっと活躍してもらおうか、と。
実際、海外だと経営陣の男女比がほぼ50対50なのに、日本企業の経営陣では女性の割合が2割、下手すると1割いかないくらいだと思います。そのあたりは、何が問題だと感じますか?
石谷:やっぱり、まずは一定の数が必要だと思いますね。少ないままだと、本質的に多様性を擁する会社になっていくためのスタートラインに立てない。P&Gでは少なくともマーケティング領域で男女差はなかったし、何なら女性マーケターのほうが多いくらいだったから、たとえば女性のマネージャーにレポーティングするのに抵抗がある男性もいなかったと思います。
でも女性マネージャーが一人だけとかだと、心理的な男女差がなくならないし、何かうまくいかなくなったときに「だから女性はね……」となってしまう。仮に同じことを男性が起こしても、そんなふうには言われないのに。
西口:「だから女性は」ってすごく問題ある見方なのに、平然とそう言う人もまだけっこういますよね。
石谷:その点は、日本社会にまだまだダイバーシティに対する正しい認識と受容性が足りないなと感じます。
西口:いわゆる昔ながらの日本企業だと、申し上げにくいんですが経営者ご本人がまったくダイバーシティに触れずにここまで来ているから……、だから制度ばかり整えて、その会社で働きたいというより制度に惹かれて人が入ってきたりして、石谷さんの言う本質に全然近づかない。また、個人の側からは「ロールモデルがいない」と言われるんですよね。

次のビジョンをポジティブに発信すれば道は開ける
石谷:前編でも少し触れましたが、ロールモデルを探していると一向に前へ進めない気が私はするんです。そもそも、キャラクターも強みもプライベートの事情も全然違うんだから、自分なりのやり方を探せばいいんですよ。
ただ、仮にマネジメント側にサポートする意志があっても、日本だと「もっと上のポジションに進みたい、広い視野を得たい」と希望する女性が多くないのも事実です。そこまで時間を使いたくないです、という。
「能力があるのだから、やってみようよ」と後押しする人が必要だし、同時に働く側にも「期待してもらえるなら頑張ろう」という意識が必要ですよね。その両方が合わさったときに、やはり結果が出るのだと思いますね。
西口:そうですね。では、女性も含めて若い方にアドバイスをもらえますか? ここまでうかがってきて、ひとつ「続けたい/やりたい」と思ったらそれが実現できる策を一つひとつ講じていくのは、参考になるなと思いました。
石谷:そう、いろんなことを心配してしまうと動けないから、どうしたらできるかと考えるところから始めていましたね。あと、仕事に絞って付け加えると、ネガティブな理由で辞めないでほうがいいかなと思います。
今の仕事に不満があっても、では次はどうなりたいのか、自分のどういう強みを活かしたいのか、そういったことをポジティブに整理しながら人にも発信していくと、ステップアップにつながるオプションが出てくる可能性が高くなると思う。そのときに決断するのがいいだろうなと、経験からも思いますね。
西口:なるほど。確かに石谷さん、ポジティブだよね。
石谷:スーパーポジティブですよ(笑)。それは自信があるし、強みかなとも思う。自分の強み、弱みを知っておくことも働く上で大事なことですね。
西口:そのパワーで、UCCでのさらなる活躍を楽しみにしています!