アイスクリームブランドに見るテレビCM放映の販売への影響
はじめに、テレビCM接触データと販売データのトレンドを見てみます。テレビCM接触データとして、スマートテレビ視聴ログデータMedia Gauge TV、販売データとして、SRI(全国小売店パネル調査)データを使用しました。ここで、Media Gauge TVのデータを使用して、ビデオリサーチの視聴率をベースとするGRPと同様の計算方法で算出した指標をMG-GRPとします。なお、ビデオリサーチの視聴率は、視聴している世帯または個人の割合ですが、Media Gauge TVでは視聴しているスマートテレビの割合(接触率)を視聴率の代わりに用いています。
2つのアイスクリームブランドを対象として、京浜エリアにおけるテレビCMのMG-GRP、販売金額、および販売店率の推移を図表1に示します。

2018年4月2日から24週間の週別MG-GRP、および販売金額(拡大推計値)と販売店率をグラフ化しています。販売店率は、アイスクリームを販売している店舗のうち該当のブランドを販売している店舗の割合です。メーカーと小売店との商談ではGRPが使用され、メーカーとしては高いGRPが売り込みの材料になり、テレビCMの効果として、GRPが高いほど販売店率を上げられる可能性があります。
ブランドXとブランドYは、同程度の販売規模のブランドであり、どちらも同程度のMG-GRPを投下していますが、投下後の販売動向に違いがあります。ブランドXに比べブランドYは比較的販売金額、販売店率の上昇が緩やかであり、テレビCMが販売金額、販売店率に与える効果としては、ブランドYよりもブランドXのほうが大きかった可能性が考えられます。
ブランドYは、テレビCM投下前から販売店率が天井に近いブランドであるため、テレビCM効果として1店舗あたりの販売金額の増加を想定したと思われますが、その効果は期待に満たなかったのかもしれません。また、「ブランドXは5月頃のテレビCM投下で認知率が向上して7月以降の売り上げにつながった」、あるいは「夏の暑い時期にはブランドYよりもブランドXの訴求効果が高かった」といった仮説も立てられます。
このようにテレビCM接触と販売状況を競合とも比較しながら確認することで、様々な気づきを得たり仮説を立てたりすることができます。さらにその仮説を、生活者へのアンケート調査やシングルソースパネルでの分析の結果とあわせて検証することで、キャンペーン効果を総括することができ、次回のキャンペーン施策に活かすことができると考えられます。