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MarkeZine Day 2025 Retail

オムニチャネル戦略の成功&失敗事例から学ぶ「勝てる」マーケティング思考

データ収集を顧客と"共創"/丸亀製麺の公式アプリ施策に見るオムニチャネル戦略

紙からアプリへのチャネル横断を促進

 まず、顧客は公式アプリを使ってクーポンが使えそうなメニューを探すので、オンラインで「検討」します。また、飲食店ですので、必然的に「購入」「使用・消費」はオフラインになります。このような、アプリを起点とした「オンライン」から「オフライン」への送客施策は、飲食業界の多くで既に取り組まれていると思います。

 丸亀製麺が設計した「顧客時間」のユニークな点は、レシートに記載されたQRコードを読み込むことでアプリ内に次回使えるクーポンが貯まり、オフラインからもう一度オンラインに引き上がっていくことです(下記図参照)。

丸亀製麺の公式アプリ施策における「エンゲージメントサイクル」

 これによって、「アプリ」「クーポン」「レシートのQRコード」の3軸を活かしたエンゲージメントサイクルが生まれます。ユーザーがこのサイクルを繰り返すたびに、顧客データもそれに比例して蓄積されていく仕組みです。つまり、ユーザーと企業が顧客データを「コ・クリエート(共創)」しているとも言えますね。

 さらに、このサイクルの持つ特徴を挙げるならば、「オンラインに戻る行為がユーザーの能動的なものである」ということが言えます。レシートに記載されているQRコードをスキャンするにはひと手間かかるわけですから、当然すべてのユーザーが設計された通りの「顧客時間」を通ってくれるわけではありません。一方で、そのひと手間をも惜しまずアクションを起こしたユーザーとの間に築かれるエンゲージメントは、極めて強力なものになるでしょう。

まずはコア層の顧客理解を

 このような構造では、「ロイヤルティの高い顧客にしかQRコードをスキャンしてもらえないのでは」と思う方も多いかもしれません。しかし忘れてはいけないのが、丸亀製麺はデジタルと紙のどちらのクーポンも配っているということです。デジタルのほうが使いやすいと感じる顧客は、QRを経由してクーポンを手に入れればいい。逆に、通常の紙のクーポンのまま使いたいと思う顧客は、そのようにすればいいのです。

 統合マーケティングは、オンラインとオフラインはもちろんのこと、すべてのタッチポイントにおいて、同じ顧客体験を提供することを重視します。アプリの場合は、オプトイン行為(顧客から事前にデータの取得に関する承諾を得ること)が必要になる点が紙とは異なりますが、これによって能動性の高い顧客のデータを収集し、彼らを深く理解することができるようになります。

 ロイヤルティの高い顧客の理解が進めば、施策のどこが効果的だったのかを検証・分析することができます。こうして得た知見やノウハウを武器に、今度はライトな層のロイヤルティが高まるような施策を練っていくことが重要です。

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「知覚価値」が「知覚リスク」を超える

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この記事の著者

奥谷 孝司(オクタニ タカシ)

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
株式会社イー・ロジット 社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「Worl...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/22 07:00 https://markezine.jp/article/detail/29905

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