デジタル上でのコミュニケーションは、企業のマーケティングやブランディングを明らかに変革し、速度と深度を増している。有園雄一氏が業界のキーパーソンや注目企業を訪ね、デジタルが可能にする近未来のマーケティングやブランディングについてディスカッションする本連載。今回は、電通や三菱UFJ信託銀行、日立製作所、富士通などの参入が相次いでいる「情報銀行」に注目。広告ビジネスおよびメディアのマネタイズについて、日本経済新聞社の戸井精一郎氏と議論する。
個人情報を利活用する「情報銀行」の設立相次ぐ
電通デジタル 客員エグゼクティブコンサルタント 有園雄一氏(写真右)
有園:個人情報の利活用が世界的に進む中、昨年は欧州のGDPR(EU一般データ保護規則)がたびたび話題になりましたが、日本でも企業が生活者をパートナーとするデータビジネスとメリットの還元を模索する動きがにわかに活発になりました。その代表が、情報銀行です。10月に総務省と、ヤフー社長の川邊健太郎さんが会長を務める日本IT団体連盟が開催した説明会には、200社以上が参加したという報道がありました。
戸井:既に大手企業が実証実験を始めたり、参入を表明したりしていますね。
有園:電通でも電通テックの子会社として、個人情報を扱う専門会社のマイデータ・インテリジェンスを立ち上げています。こうした個人情報利活用の積極化と、メディアのサブスクリプションビジネスへの移行やテレビ放送のデータ化が重なり、今メディアのマネタイズに新たな可能性が開けていると考えています。
今回はこの潮流の中で広告ビジネスがどう変わるかを戸井さんとお話しできればと思います。言わずもがなですが、日経は新聞の電子版をはじめ、グループ各媒体との共通ID制を敷いて、データ活用に積極的ですよね。
戸井:そうですね。日経ID会員は約860万人にまで増加しました。自社開発した新しいアクセス分析ツールの稼働も昨年始まりました。
マスメディアのデジトラ、3つの条件
有園:ただ、戸井さんに言うのもなんですが、総じてマスメディアの方々はデータをマネタイズする意識がまだ高くないですよね?
特にテレビ局は、たとえば各社共同のTVerの仕組みや、日本テレビのHaloid、テレビ朝日のIoTVセンター設立など動きは目立つものの、Netflixが視聴データを細かく分析してヒットコンテンツを生み出してエミー賞を獲る、みたいなこととはだいぶ温度差がある感じがします。そのあたりはどうご覧になっていますか?
戸井:ご指摘のように、日本のテレビ局の方々はリーチを重要視する意識が強いのだと思います。良いコンテンツを作り、視聴率が上がれば広告会社さんがマネタイズしてくれるビジネスモデルだったため、自分たちでお金を稼ごうという発想がやや薄いところがあるのかもしれません。
有園:すると、マスメディアのデジタルトランスフォーメーションには、何が必要だと思いますか?
戸井:私見ですが、3つあると思っています。まずコンテンツのデジタル化。二つ目はオーディエンスデータのデジタル化。そして三つ目は、それらを活かせる人材と組織のデジタル対応、です。特に今後、サブスクリプションサービスに乗り出すなら、視聴ログなどのアクセス分析は不可欠です。誰が何を見ているのかわからないと、課金しようがないですから。
有園:その視聴ログを取るために、コンテンツとオーディエンスのデータを連係して分析できる体制になっていないといけない、と。かつてのような情報流通の独占性を失いつつある中で、読者や視聴者を捉えておくためにも、それは必須になりますね。
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高島 知子(タカシマ トモコ)
フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。
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