※本記事は、2019年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』37号に掲載したものです。
「広告」を「個客」のために価値ある情報へ(グーグル)
2018年を振り返って
多くの計測・効果測定ツールの導入により、マーケティングの様々な意思決定にデジタルが寄与することが明確になってきました。たとえば、全人口の80%にリーチできるようになったYouTubeの分野では、テレビとYouTubeのクロスメディアのリーチ計測が可能となり、広告主のメディア予算全体のアロケーションの見直しが促進されました。また来店コンバージョンの普及により、デジタル広告の実際の来店への寄与や購買への影響などを可視化する傾向も加速化しています。データによって効果が可視化され、最適な投資量が見えてくることで、次のマーケティング施策への議論につながります。
2019年へ向けて
リーチの最大化や態度変容に影響を与えるといった従来のマーケティング施策に加え、生活者の行動変容そのものに寄与することに取り組みます。そのためにも業界内や、広告主が保有する情報を活用し、機械学習などの自動化を組み合わせることで、無駄な作業を減らしつつ必要な施策を実行できる支援を行っていきます。「広告」施策全般を、多様化する生活者の行動やニーズに合わせ、「個客」のために価値ある情報をスケーラブルに展開できるような機会をさらに提供し続けていきます。また、2020年の東京オリンピックに向けて日本の技術や先端事例を世界に発信していく良い機会としたいです。
上級執行役員 川合 純一氏
一橋大学経済学部卒。リクルート、マッキンゼー・アンド・カンパニー、アイ・エム・ジェイなどにおいて主にデジタルマーケティングの戦略立案実行に関わり、2012年Google入社。主に広告営業部門をリード。2017年上級執行役員就任。
広告で「Drive to Store」を実現する(Gunosy)
2018年を振り返って
電通によるセプテーニグループへの大規模出資と協業、CCI・VOYAGEの経営統合は印象的な出来事でした。ネット専業という言葉がもはや強みではなくなりつつあるように、デジタルのみではマーケティングを成立させることができません。個別での強みを持つ企業同士の協業は今後も進み、またそうせざるを得ない流れが始まった印象があります。業界全体では、広告による詐欺行為や権利侵害に該当する広告案件への注目が高まっており、自社でも対策を進めています。アフィリエイト広告や運用型広告ならではの課題に対して、市場を健全に成長させるために毅然とした態度が必要だと実感しています。
2019年へ向けて
自社においてはライブ、動画、クーポンといったサービス強化に注力し、ニュースに限定しない形でユーザーの利用時間を延ばしていきます。広告メディアとしてはライブ動画による独自のブランデッドコンテンツのマーケットでの認知拡大が急務です。特に競合環境が激化しつつあるクーポンは、アクセスも多く、小売りとメーカーをつなぐ新たなトリガーになり得ます。かねて取り組んでいる、広告によるDrive to Storeの実現に向けて邁進する1年としたいです。業界再編はメディア分野にも起こり得ますが、自社の強みを軸に、ユーザーとブランドに選ばれる広告メディアでありたいです。
執行役員 広告事業本部 プレミアム広告推進部 部長 近藤 洋司氏
茨城大学人文学部卒。2001年セプテーニ(現セプテーニ・ホールディングス)入社、2012年同グループ内子会社として株式会社イーグルアイを設立、代表取締役社長に就任。2015年にGroundTruth, Inc.(米企業)の日本法人設立に参画後、2017年にGunosyへ入社。2018年9月より執行役員広告事業本部、自社メディア事業担当。
独自のコンテンツ・広告価値を可視化する(講談社)
2018年を振り返って
デジタルマーケティング業界における指標統一に向けて、様々なアプローチが見られた1年だったと思います。JIAAがイニシアティブを取った広告のビューアビリティ測定、メディアの垣根を越えて32社が参加した「コンテンツメディア価値研究会」によるメディア信頼度調査、日本ABC協会が公開した雑誌ブランド指標のWeb数値などです。いずれもメディア横断型プロジェクトであり、「網羅性」「客観性」「透明性」を追求しているところが従来との違いです。講談社はいずれの活動にも参加しており、今後もメディアや広告価値の可視化に向けて主体性をもって取り組んでいきます。
2019年へ向けて
フィギュアスケートにたとえるならば、「規定演技と自由演技の両立」を目指します。広告効果における業界基準や共通指標の運用に対応しつつ、コンテンツメディアとして独自の広告価値も提案していきます。「WOW」や「HOW」のあるコンテンツ体験の充実を図り、そのユーザーデータから『VOCE』の推奨力、『ViVi』の発信力、『現代ビジネス』の説得力などの可視化にチャレンジし、それを支えるテクノロジーや体制を投入します。出版業界全体では、『dマガジン』のような電子雑誌広告の整備がカギになるでしょう。パブリッシャーとプラットフォームとの新たな関係構築に期待しています。
ライツ・メディアビジネス局 局次長 兼 メディアビジネス部 部長 長崎 亘宏氏
デルフィス、マッキャンエリクソンでのメディアプランニング職を経て、2006年講談社に入社。2010年、雑誌広告効果測定調査「M-VALUE」運営に従事。2014年、JIAAネイティブ広告部会座長として、ガイドラインや広告効果指標を整備。2017年、日本ABC協会雑誌ブランド指標ワーキンググループのリーダーとしてメディアデータの再編に従事。第3回Webグランプリ「Web 人 of the year」受賞。