サブスクにおける「差」は、オリジナルコンテンツで生まれる
西井:現在、動画配信サービスは競合も多く、まさに戦国時代と言えます。「dTV」のユーザー数は、どのように変化していますか。
山脇:競合サービスが少なかった立ち上げ当初に比べ、ユーザー数の伸びが鈍化しているのは事実です。現在では、新規ユーザーの獲得と並行して、よりアクティブユーザーを増やすことに重点を置いています。アクティブ率を高めた結果、解約率が改善し、LTVも順調に向上してきています。ユーザー基盤が強まってきたと感じていますね。
西井:ちなみに、ドコモさんではLTVを測る指標としてどのようなものを見ていますか?
山脇:基本的にはサービスの継続率をLTVとしてウォッチしています。その他、競合サービスや他のドコモサービスの数字なども参考にしています。
西井:サブスクリプションは「契約」「購入」がゴールではないので、ユーザーの利用を継続させていく視点が大切ということですね。では、その継続率を高めるためには、どのような施策が求められるのでしょうか。競合サービスと比較して、機能面での大きな差はありますか。
山脇:機能面は、いまや横並びのような状態ですね。たとえば、「dTV」が当初から実装していた、オフライン時でもコンテンツを視聴できるダウンロード機能は、現在ではほとんどのサービス内で標準搭載されています。
西井:ユーザーにとって便利な機能は標準化していきますよね。ユーザー視点で考えると、やはりプラットフォーム限定のオリジナルコンテンツがポイントになるのではないかと思います。

山脇:おっしゃる通りです。強力なオリジナルコンテンツを持ったプラットフォームでは、一気に契約率・アクティブ率が上がる傾向にあります。そのため我々も、「dTV」の強みである音楽関連のコンテンツを中心にしたプロモーションに注力しています。
新規獲得とリテンション施策を並行して実行
西井:継続率を上げるために行われている具体的な施策を伺えますか。
山脇:大きく分けて2つあります。ひとつ目は、レコメンド機能を活用してコンテンツの視聴を促す施策です。
具体的には、ユーザーの視聴履歴や行動分析にもとづいたセグメンテーションを行い、適切なタイミングでプッシュ通知を配信するなどです。また、視聴後には関連コンテンツのレコメンドも行っています。レコメンドは、One to Oneレベルで実現できていますね。KPIは、「ユーザー獲得数」「解約数」「アクティブ率」をメインとしていますが、他にも様々な数値を見ています。
西井:画一的ではなく、ユーザーそれぞれの利用状況に合わせた施策が打てると。サブスクリプションらしい施策ですね。
山脇:レコメンドを行う上で重要となるユーザーの「興味」は、様々な軸で考えています。たとえば、「アニメ」「映画」などのジャンルを軸にすることがあれば、タレントや出演者、監督などを軸にコンテンツをオススメすることもあります。コンテンツに含まれるタグなどのデータをもとに、柔軟なアプローチができるようにしています。
このようにテクノロジーを活用し、12万作品の中からユーザーに最適なコンテンツをレコメンドすることで、継続的な利用を促しています。映画を例にすると、少し年代が古い作品であっても、シニア層のユーザーには懐かしさを、若年層のユーザーには新鮮な感覚を提供できたらいいですよね。
西井:もうひとつの施策は何でしょうか?
山脇:オリジナルコンテンツの設計です。先ほどお話ししたように、オリジナルコンテンツは新規ユーザー獲得の大きなフックとなります。一方で、動機につながったコンテンツを視聴し終えると、退会してしまうユーザーも多い。そこで我々は、ひとつのコンテンツを複数に分けて、半年~1年間のスパンで展開するようなコンテンツを採用するように意識しています。
サービスへの入会を後押しするコンテンツと、LTV向上につながるコンテンツには、それぞれ傾向があります。オリジナルコンテンツだけでLTV向上までの効果を求めようとすると、やはりリソースなどの面で限界があります。
入会につながるようなパワーのあるコンテンツは、他の作品と連動させて相乗効果を生み出せるという強みを持っています。これと並行して、ひとつ目の施策として挙げたレコメンド機能などを駆使しながら、元々ベースとして持っている12万作品を継続して視聴してもらうことが重要だと思います。