ブランディング広告=商品の疑似体験
【質問3】
マスとWebの予算配分の最適化について。小霜さんは、それぞれの案件や課題に応じて、必要であればマスもやるべきだし、必要であればWebもやるべきだという風にやられていると思いますが、どうですか?
小霜:デジタル化って言っても、メディアが1個増えたという認識でいいと思うんですよ。たとえば、グラフィック作る時に、新聞だったらボディコピーを入れて読んでもらおうと思いますよね。で、これがOOHとかの時は、読んでもらおうじゃなくて見てもらおうと考えるわけだから、ボディコピーとかは意味がなくて、キャッチと商品名だけドンと入れようとするわけで。これは同じグラフィックでも視聴態度が違うから変えているわけじゃないですか。
だから、同じ動画でもテレビとWebで視聴態度は違うので、同じようにチューニングすればいいだけのことじゃないかと思うんですよ、基本的には。
たとえばですけどね、ブランディングって体験してもらうってことだと思うんですよ。つまり、僕セミナーの中でよく言うんですけど、「吉野家っていったら何を思い出しますか?」って。吉野家で思い出すのは、お店で食ってるシーンじゃないですか。商品を使っている時のことを思い出すわけでしょ。商品を体験している時のことが記憶になっているわけで。そしたらね、吉野家とかマクドナルドのブランディングは、まず店を増やすことですよね。店を増やせば、体験する人が増えるから。
あるいは、車だったら、試乗してもらう人を増やすことですよね。試乗すれば車の良さを体験してもらえるわけなので。これがブランディングだと思うんです。
で、広告ってなにかっていうと、ビールを飲んで旨いってやっているのは、疑似体験をさせているわけで。本当の体験への導線を作っていると思うんですよね。先ほどの話でいうと、マーケティングをどこからどこまでと捉えるかによると思うんですけど、店舗を増やしましょうとか店内を変えましょうとかもマーケティングに含めて、そこが一番大事ならそこにお金をかけるべきだし、残った予算でどれだけ効率の良いコミュニケーションできるかなっていう順番だと思うんですよ。
先ほど僕が申し上げたマスWeb最適配分っていうのは、最後の最後の出稿する時にどういう配分の仕方がいいのか、その参考にするということにすぎないわけで。大事なんだけど、ブランディングの活動の全体の中では、最後の最後の効率化をどうするかっていう風に僕は捉えているんですよね。
VAIOでの施策を例にターゲティングを考える
【質問4】
既にニーズが顕在化している人に対するターゲティングは、既に購入した人をベースにターゲティングを設定すればいいと思います。一方、潜在的なニーズがあって、恐らく買ってくれそうだという人に対するアプローチは、CMを広く打つのが有効かもしれないけれど、CMをやる予算はない。こういった場合に、潜在層に対してどのようにWebでアプローチすればいいのか、ターゲティングをどう考えればいいのかをお聞きしたいです。
小霜:VAIOでいうと、僕が携わる前はテレビCMをやっていたんですよね。で、テレビCMだと無駄が多すぎるんじゃないかということでね、Webでやろうと。
で、ターゲットをビジネスマンに絞ったわけですよ。ビジネスマン向けのPCだという風に規定しなおしたんですよね。商品もそう規定しなおしたら、ビジネスマンというセグメントが有効になるわけですよ。で、20代から40代までのビジネスマンに対して当てていくということをやったわけです。
当然、ビジネスマンだからといって、PCが欲しいっていう人ばかりではないかもしれないけど、VAIOの潜在顧客はそこにある程度いるだろうという予測をもって、やったというわけですね。
質問者:ビジネスマン向けのPCだというところまでは、商品の特長などから仮説されたんですか?
小霜:そうです。そこは、行ったり来たりだと思うんですけど。
僕は、実際に使ってみて「仕事にいいなぁ」と思ったんですよ。単純に中に入っているCPUがどうかとかではなくて、僕は文字を打つ仕事なので、文字を打っていてストレスがないんですよ。カチャカチャいうPCとかって、イラっとくるんですよね。
気持ち良かったり、パッドなんかもミスが無かったりで、ビジネスマンがやると生産性が上がるんじゃないかなと思ったわけです。
Webでビジネスマンのセグメントができるかできないかと言ったら、ある程度できるよね、と。「この商品は腹黒い人にウケます」といっても、Web上で腹黒い人ってセグメントがなかなか難しいですよね。そうすると、商品の規定自体が難しいんじゃないかなと思います。
質問者:実際、ビジネスマンと設定してアプローチしてみた後のPDCAで、そこの精度を探るということでしょうか?
小霜:そうです、ハイ。実際は20代から40代のビジネスマンということで、始めたんですけど、やっていくと大学生もけっこう買っているということがわかったんです。イマドキの大学生ってPCにお金をかけたがる人が多いと。
そこで、位置ターゲティングで大学の試験会場にいた人に対して当てるとかやったんですけど。あと、50代の人もターゲットに入るんじゃないかということが出てきたので、そこまで攻めを広げようとか。
1年目のWebCMは見たことがなかったんですよ、自分で。僕ははじかれていました。50代なので。「自分で作ったものを見たことがない!」っていうことになったりしたんですけど(笑)。
「小霜さん、質問してもいいですか?」
1.「今後の理想の広告の在り方って?」
2.「マスとWebの最適配分問題に対する打開策」
3.「いずれ、テレビとWebの同時配信が始まる」
4.「クリエイティブって、そんな簡単じゃない」
