経営者の炎上リスクをどう捉えるのか
その一方で「知名度を上げたい」「話題にしたい」という目的から、リスクを取ってこそリターンが大きい、と経営者が考えるケースもスタートアップでは往々にしてあります。それは経営者のSNSでの発信かもしれないし、事業上の選択かもしれない。リスクを取ってリターンを得る、という考えには一理あり、慎重になりすぎてNoを出せばいいわけでもないケースもあります。
広報としてどう判断し、意見するのか。その指標になるのも、「企業価値に関わるかどうか」の一点に尽きるのではないでしょうか。企業ブランドの毀損や今後の業績、株価に影響されるものかどうか。これによって取引を停止する、入社予定だった人が取りやめる、採用市場で大きなダメージを負う。そんなことが起こらないかをチェックする必要があります。
経営者の投稿内容は事前確認すべきか?
サイバーエージェントでは社長のブログの印象も強いため、「投稿内容を事前確認しているのですか?」とよく聞かれますが、私たちは一切事前をチェックしていません。発言を確認しすぎることで、それは経営者の言葉ではなくなり、表現を丸めることで本来の想いや意図が伝わらなくなることもあるからです。

17年ぶりとなった業績予想の下方修正など、ネガティブなニュースも自身の言葉で説明。
中には「記事が炎上している」と受け止められることもあるかもしれません。日経電子版の経営者ブログで公開した「私が退職希望者に『激怒』した理由」というコラムは炎上しましたね、と言われることがありました。これ自体、中身をきちんと読めば退職者に対しいつも怒っているわけではなく、社内の意思統一のために意図的に「怒っている」と社内に拡散させた、という話だとご理解いただけるかと思います。しかし、「社員には転職する自由がある」と批判する人もいました。このコラムは社外に発信することで、一気に社内の意思統一を図ろうとする意図もありました。またこの影響で当社への入社希望者が減ったかというと、そんなことはありませんでした。
その内容が批判を浴びる可能性があっても、企業価値に著しく悪い影響を及ぼすものでなければ静観していて良いと私は思います。社内外に意図的になんらかのメッセージを伝えようとした内容である、ということが前提ですが。(私的なつぶやきで炎上したケースの場合、その人間性に問題が発展するケースがあるからです。)SNSによってあらゆる価値観、意見が可視化されるようになり、ある程度の批判は避けられなくなっています。
ただ、投稿内容が企業価値に大きく影響するようであれば、それはもちろん対応策を考える必要があります。人には向き不向きがありますから、もし経営者がSNS上でのコミュニケーションに向いていない場合はスパっとやめてもらう必要もあるでしょう。