リアルタイムマーケティングにも挑戦
MZ:電子チケットの利用状況はいかがでしょうか。
吉田:2017年にQuick Ticketの対応を開始しましたが、当初はオフィシャルページでオンライン決済をされた方のうち、1~2%が選択するという状況でした。しかし、キャンペーンなどを活用し継続的な利用促進を行うことで、2018年のシーズン終了後の利用率は20%弱まで増加しました。

右:Quick Ticketのチケット券面
ここまで増加できたのは、Quick Ticketがブラウザベースのサービスだからだと考えています。アプリと違いダウンロードの必要もなく、誘われて観戦に行くという方でも簡単に利用できます。さらに、導入後のオペレーションも複雑にならなかったので、運営側としては助かっています。
MZ:電子チケットの利用者が増えると、そのデータも活用できそうですね。
その通りです。これまではファンクラブ会員のデータだけでしたが、Quick Ticket経由の観客に関するデータも把握できるようになりました。
また、電子チケット利用者に対するリアルタイムマーケティングにもチャレンジしています。Quick TicketだとLINEでのチケット受け取りも可能なため、試合前日・当日・試合後とフェーズを分け、LINEの友だちにメッセージを送っています。試合前日には戦評や選手の話題を届け、来場した瞬間には感謝を伝えるとともに、当日の抽選イベントのご案内や、勝利した試合の来場者限定ビクトリーフォトなどを配信しました。

ファンビジネスでやってはいけないこと
MZ:新しいマーケティングにも取り組めているんですね。しかし、紙のチケットが良いという方もいらっしゃると思いますが、そこはいかがでしょうか。
吉田:ご指摘の通り、窓口で購入できる選手デザインのチケットは人気が高く、コレクションされている方もいらっしゃると思います。ですので、紙のチケットも選択肢として残し、あくまでお客様の選択肢を増やすことを心がけています。
ここで紙チケットを廃止するのは、ファンの皆さまの選択肢を減らす内容ですので、絶対にやってはいけないと考えております。お客様と長くコミュニケーションを築く必要のあるファンビジネスでは、短期的な利便性の改善や企業都合ではなく、ファンの皆さまの気持ちを優先して考えることが大切であると考えております。
電子チケットに関しても、便利以外の付加価値を付けることで、ファンの方に「使いたい」と思っていただけるようにしたいです。直近では、各試合で電子チケットのデザインを変え、アーカイブ機能を付けるなどの取り組みを進めています。
MZ:その他、利用を促すためにどのような施策をしていますか。
吉田:「Quick Ticketのサービス手数料・無料キャンペーン」の成果が大きかったため、2019年シーズンは手数料0円で進めていく予定です。オフィシャルページでオンライン決済をされた方のQuick Ticket選択率を、30%以上にすることを今年の目標としています。多くの方が電子チケットを利用する状態とし、Quick Ticketやコネクテッドスタジアムの可能性を探り、新しい挑戦をしていくのが2019年の目標の一つです。