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インターナルマーケティングとこれからの企業のかたち

ファミリーマート澤田社長「ダイバーシティ推進は待ったなし」、多様性がもたらす競争力とコンビニの未来

ファーストステップは「女性活躍」

白石:「現場のほうがダイバーシティが進んでいる」というお話がありましたが、フランチャイズビジネスであるコンビニエンスストアでは加盟店の存在はとても大きいですよね。

澤田:その通りです。今この瞬間も、全国各地のお店でがんばっている加盟店の皆さんを物心両面で幸せにする。これを追求するのが我々本部の仕事だという基本軸があります。この軸さえずれていなければ、私はどんどん現場に権限委譲したほうがいいと考えています。コンビニの現実として、人手不足などさまざまな課題がありますが、現場を回って実態を深く理解して、どうすれば改善できるのかをみんなで考えられるチームにしていきたい。そのためにもダイバーシティが必要です。

ファミリーマートの組織図
ファミリーマートの組織図

中村:澤田からは「とことん考えなさい」とたびたび言われます。一人ひとり考えて、チームでアイデアを持ち寄って議論して結果につなげる。こうしてチームを強くしていくベースになるものがダイバーシティだと思います。

白石:中村さんは推進部の皆さんとどのように活動を始めたのでしょうか。

中村:ファミリーマートのダイバーシティは、まず「女性活躍」からスタートしました。テーマを絞ることには不安もありましたし、実際「ダイバーシティは女性だけのものではない」という反応も多くありました。私たちは組織を多様にしていくためのファーストステップが当社の中で最も遅れている女性活躍だと考えていたので、それを粘り強く伝えていきました。でも振り返ってみると、テーマを絞ったことで成果が出やすくなり、定着・浸透にもつながったと思っています。

 会社の制度も改善しました。コンビニ各社のホームページなどを調べて福利厚生や制度の比較表を作り、足りない部分を強化していきました。たとえば、社用車で保育園の送迎ができるようにもしたのですが、これは澤田と社員との直接コミュニケーションから上がった意見をもとに、施策としての合理性を担当部署が検討し、制度として実現しました。

ダイバーシティ推進部のメンバー(写真提供:ファミリーマート)
ダイバーシティ推進部のメンバー(写真提供:ファミリーマート)

 効率性を後押しする施策を制度化することで、たとえばスーパーバイザー(SV)の店舗の在店時間を確保でき、より店舗のために時間を使うことが可能になります。SV職は、売場づくりや販売戦略を加盟店と一緒に考えて実行していくという重要な役割があります。こうした制度面の充実、女性社員自身や上司の意識変革によって、育児時短勤務の女性SVが誕生しました。

 しかし、ダイバーシティは女性活躍推進だけではありません。全員が自分ごととして取り組み、具体的な行動に移すことが重要です。ファーストステップとして「女性活躍」からスタートしましたが、ダイバーシティ推進をスタートしてから3年目を迎える今、ダイバーシティは「チーム力をアップし、すべてのステークホルダーに利益をもたらす取り組みである」という本質を伝えるようにしています。

多様なアイデアを引き出して、ビジネスに結びつける

白石:推進部が主体となって進めた大きな施策として、2019年2月には2回目となる「ダイバーシティ・アワード」を開催しましたね。

中村:2017年度は女性活躍にフォーカスしていた時期だったので、「私たちが働き方を変える!」をテーマに、女性チームが自分の部署の3年後の「ありたい姿」を定義し、課題を見つけ解決の方法を探りました。そして、全社64チームが上司や周囲を巻き込みながら実証実験を行ったのです。その集大成としての位置付けが第1回目のアワードでした。

 第2回目の今年は「ダイバーシティ推進地区委員会」を立ち上げ、各本部やディストリクトが自らの課題を解決していく体制を整えたので、性別に関係なく全員で自部門の課題に取り組み、改善していこうというかたちにテーマ設定を変えました。その結果、店舗の課題を自分たちの課題と捉え、店舗の売上につなげるアイデアが集まりました。東京第1ディストリクトが発表した生理用品の陳列の改善のように、女性の視点がないと生まれないアイデアも登場し、提案の質も上がったと感じています。

2019年2月に開催されたダイバーシティ・アワード」の模様(写真提供:ファミリーマート)
2019年2月に開催されたダイバーシティ・アワード」の模様(写真提供:ファミリーマート)

白石:私も今年のアワードに参加させていただきましたが、おっしゃる通り「ダイバーシティ」を一人ひとりが噛み砕き考え実益につなげた事例が多いことに驚きました。また、東京第1ディストリクトだけでなく北陸ディストリクトのチームをはじめ、各地域の課題に即した内容が多かったように思います。

中村:北陸ディストリクトはダイバーシティの取り組みが進んでいて、今回のアワードで「働き方改革大賞」を受賞しました。第3四半期までの部門の営業成績も1位になっており、生産性の高い働き方ができている部門です。次年度は「地元での採用活動にも取り組みたい!」とメンバーから積極的な提案があり、良いサイクルが回っているのを感じます。

澤田:楽しんで取り組んでいる組織はやっぱり結果を残していますね。今回のアワードでは、社員の取り組みがきれいごとから本質的な改革に変わってきているのを感じました。「やってみたら本当に結果が出るんだ」という手ごたえを実感している組織が多いようです。

白石:アワード以外にも、最近ファミリーマートのニュースをよく目にするようになりました。2017年からはフィットネス事業もスタートしていますね。

澤田:高齢化が進む日本では健康年齢を引き上げていくことが社会的な課題となっています。多くの人が健康を保ち、社会保障費を減らしていくためにファミリーマートが寄与できる事業としてフィットネスを立ち上げました。加盟店スタッフの福利厚生の一環として、近隣の店舗も含め安く入会できるようにしたところ、アルバイトの応募が増えるという思いがけない反響もありました。

地域社会の健康増進への寄与と、加盟店への新たな事業モデルの提供を目的にスタートしたフィットネス事業「Fit&GO」
地域社会の健康増進への寄与と、加盟店への新たな事業モデルの提供を目的に
スタートしたフィットネス事業「Fit&GO」

白石:面白いです。そんな効果があったんですね。

澤田:この反響を活かしつつ、今後もフィットネスの数を増やしていこうと計画しています。同じ時期にコインランドリー事業も立ち上げました。お子さんがいるご家庭で1日に何回も洗濯機を回さないといけない方がいらっしゃれば、コインランドリーで洗濯している2時間くらいの間に、すぐ横にあるファミリーマートで働いてもらうこともできます。これも割引券を出してスタッフは安く利用できるようにしています。

白石:「ファミマこども食堂」も話題になっていますよね。私には子どもが2人いるのですが、初めてのおつかいがコンビニだったりするんです。こういう取り組みがあると、子どもを行かせやすくなります。お客様がファミリーマートを選ぶひとつの理由にもなっているように思います。

澤田:「ファミマこども食堂」を立ち上げたのは、地域のNPOの方たちが実施している「子ども食堂」の報道がきっかけでした。「素晴らしい取り組みだな! 我々も全国の店舗網やそこにあるイートインスペースを活用して貢献できないだろうか」と考えたのです。ありがたいことに沢山の方が「応援したい」と言ってくださり、世の中に対するメッセージとしてはすごく大きかったんだなと感じています。

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この記事の著者

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント
株式会社Amplify Asia 代表取締役
株式会社YUIDEA 社外CMO

WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。2024年10月より、YUIDEAの社外CM...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/09 08:00 https://markezine.jp/article/detail/30425

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