チャネル構築と啓もう活動にも注力
「本物」を伝播させるためのチャネル構築にもぬかりがない。SIXPADの世界観を表現するため、内観や照明、陳列、接客にこだわったブランドストアと呼ばれるショップを、旗艦店の表参道をはじめ全国に9店舗展開。また、家電量販店などでも世界観が損なわれないよう、フロアの中に独立した店舗形態の売り場を設置するショップインショップにも取り組み、全国に57店舗を構えている。

その他にも、同社では製品理解を促進する活動の一環として、企業に出向いて筋肉を鍛える重要性を啓もうするセミナーも無料開催している。昼休みの1時間を活用し、SIXPADが独自開発した弁当「SIXPAD BOX」を食べながら正しい食習慣と運動の大切さを学べる内容となっている。
同セミナーは2017年10月からスタートし、220社15,000人(2019年3月末時点)が受講。2019年9月までに400社30,000人の受講者を見込んでいるという。食べ過ぎを抑えながら筋肉を効率よく作ることをコンセプトにした「知識を食べるお弁当」を開発したのは、製品のことを知ってもらう前に、消費者の健康に関するリテラシーを向上させたいという狙いがあるからだ。
「SIXPADはダイエット器具ではなく、トレーニング器具です。ただ、ボディメイクという観点でいうとダイエットのニーズも内包していると思うので、理想的な体型になれるよう各方面からサポートできるような体制を構築しています」
今後はAI・IoT化とグローバル化、ヘルスケア領域への展開を視野に
最後に、今後の成長戦略について熊崎氏に聞いたところ、「AI・IoT化とグローバル化、ヘルスケア領域への展開を目指している」とした。
1つ目のAI・IoTの活用に対して熊崎氏は「避けては通れない」と語った。実際にMTGでは、製品のIoT化を2017年のバージョンアップから進めている。今後は、センシング技術で個人の詳細な筋肉に関するデータを取得してAI解析を行うことにより、パーソナライズされたトレーニングを提供していきたいという。
2つ目のグローバル展開に関しては、SIXPADにおける売上の96%が国内となっているのが現状だ。しかし既に中国やイギリスなどには展開を始めている。熊崎氏は「SIXPADには、海外市場に注力できる伸びしろが十分にある」とした。
3つ目のヘルスケア領域の展開は、今後の日本社会の変化を踏まえた戦略となっている。
「SIXPADはトレーニング領域からヘルスケア領域への事業拡大を目論んでいます。人生100年時代、健康長寿社会を迎え、これまでになく健康増進への意識が高まっています。MTGではその変化を正しく捉え、さらなるSIXPADブランドの価値向上を目指していきたいと思います」
2018年10月に発売した、足裏からふくらはぎを鍛える「SIXPAD Foot Fit」は歩く力に着目し、シニア層へのアプローチに成功しているという。本物を追求するという、当たり前だが難しいことを続けているMTG。消費者が懐疑的な状況の中で、多くのユーザーから信頼され、幅広い層に受け入れられるブランドにしていったSIXPADのノウハウは、他の企業でも役立つ部分があるのではないだろうか。