SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

あなたは、メディアとは何か正しく説明できますか?【花王廣澤氏×高広氏対談】


デジタルネイティブが炎上する理由は?

廣澤:少し話がそれますが、デジタルネイティブの世代は、アプリ操作にも長け、技術を使いこなすという意味では編集能力は持っていると思います。ですが、おふざけ動画などアンモラルなものを公開して、炎上してしまう。編集能力を持ちながらも倫理観が抜け落ちてしまうのはなぜでしょうか。

高広:ここまで話してきたメディアの件とはとは少し離れてしまいますが、おそらくは社会がどういう風に構成されているのかを想像する能力の欠如、そして、社会構造の変化の2つが大きいと思います。昔の社会は、同一性や均一性が高かったので、価値観や人間関係がおそらく近く、なんとなく互いのやってることが理解できた大きな社会だったと思うんです。

 ところが現代は、各種デジタルツールの恩恵もあって、若い世代同士、上の世代同士、趣味の仲間、学校の仲間、会社の仲間、それぞれの中のさらに小集団……というような小社会が増え、その中での濃いミュニケーションを取り合う機会が増えてきている。

 結果として、その中で盛り上がる、良しとされる話題・コンテンツが、自分たちの小社会の外では別の意味で捉えられるかもしれない、ということが理解できない可能性があります。炎上動画の多くは自撮りではなく、誰かが撮ってる映像なんですよ。なので、仲間内では良しとされてるのだろうと思われます。しかしその小社会の外では許され難い行為だったりする。そうした理解ができないという背景が潜んでいると考えられます。

廣澤:撮影する側もされる側も、小社会の中しか見ていないから問題ないと思っているわけですね。

高広:ふと、今、昔で言うプリクラを思い浮かべたんですけど、プリクラは、携帯電話の裏に貼るなど自分の身に着けられる範囲での共有に留まります。一方、今の世界は友人間だけの共有のつもりでも、他者の目に触れやすい。さらに、再生回数やいいね数、あとたとえネガティブな反応が付いたとしても、リアクションに対してはある種の恍惚感が出ると思うんです。満足感や達成感や、人に認められている感じがしてしまうのでしょう。そうした勘違いによって、炎上を助長させてしまっているのではないのでしょうか。

求められる人格の編集性

廣澤:話を戻しまして、「UGCを生みやすい環境下において、企業人の立場と個人の立場が曖昧となり、メディアリテラシーが低下しているのでは?」という問題。これは、どのように考えられますか?

高広:その問題を考えるとき、前提として、「1人の人間が1つの人格であり続けるのか?」のポイントを考えます。僕がSNSを通じて思うのは、「人は1人の人間の中に、人格A・B・C……と、様々な人格を持っているのではないか」ということ。

 アメリカの社会人学者G.H.ミードは、「“I”とは自分が考える自分で、“ME”は他人から見た自分。この2つで構成されているのが、アイデンティティだ」と語っています。ただ、ソーシャルメディアなどが登場し、他人から見た自分がすごく増えているんです。他人(ME)から見た自分(I)が増えることを、僕はハイパーリンクになぞらえ、いろんなMEに合わせる「ハイパーミー」と呼んでいます(参照)

 最近は、もう一歩進んで、MEに合わせたIも実はI(A)、I(B)……と増えているのではないかと考えてます。これら人間の多重人格的な部分に対し、僕は「人格の編集可能性」という言葉を使っています。人格そのものが編集可能となり、いろんなところに合わせて、発信することが可能になっているのではないかと。1人の人間の中で、人格を自由に交換・入れ替えることのできる時代なんじゃないかと。

廣澤:周りから見られているという自己の認識よりも「主体としての自己」を優先してしまうような考え方が前提にあると、企業人や個人という境界線に対する感覚が曖昧になる。その結果、発言や行動が社会からどう見られるかの視点が抜け落ちるのかもしれませんね。

高広:使い分けに失敗した場合に、企業人の部分・個人の部分を誤ってしまう。また、MEに対するIを考えたとき、ディスコミュニケーションが発生したり、文脈の違う人が出できたりすることがあります。

 なぜなら、自分はこのME(A)に対してI(A)を発していたにも関わらず、他のME(B)の領域から見ると、I(A)は、おかしいと感じるからです。これらの事象も、「人格の編集可能性」がポイントな気がしています。

 後編では、広告の炎上防止や効果的なPRに求められる「社会を読み解く力」についてディスカッションします。お楽しみに!

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/03/28 09:21 https://markezine.jp/article/detail/30579

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング