ウォルマートが仕掛ける「テキスト」によるショッピング体験

世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートが2018年5月ニューヨークで開始したCコマースの取り組みに注目が集まっている。ウォルマートのインキュベーション部門StoreNo.8から生まれた第1号スタートアップJetblackによるCコマースサービス(ベータ版)だ。
利用者は月額50ドル(約5,400円)を支払うことで、テキストでの注文ができるようになる。即日配達または翌日配達で、デリバリーには料金はかからない。その魅力は、スマホのテキストで注文でき、遅くとも翌日には配達される利便性の高さだけでなく、様々なプロダクトから利用者のニーズに即したものを選んでくれるレコメンド機能にあるようだ。
たとえば、テキストで「2歳の女の子におすすめの誕生日プレゼントは?」と入れると、予算や時期に応じて最適なプレゼントを選んでくれる。このレコメンドは人工知能に加え、各分野のスペシャリストの選定が基になっているという。商品名がわからない場合は、写真やスクリーンショットを送信すると、その商品を探してくれる機能もある。
JetblackによるCコマースはベータ版で、現在はデータを収集し、予測精度を高める段階という。精度が十分に高まれば、自動化の範囲を広げ、サービス利用料を下げることも検討されているようだ。
CNNが伝えたところでは、JetblackのCコマースサービスでは興味深いインサイトが得られている。たとえば、Jetblackの会員は音声でのやりとりよりも、テキストでのやりとりを好む傾向が強いという。テキストだと、同時に写真のやりとりができるからだ。
会員の30%が商品レコメンドを求めたというデータもある。またレコメンドを受けた会員の79%が、レコメンド商品を購入しているという。
現在ニューヨーク在住者のみが対象となっているが、今後サービス対象エリアを拡大する見込みだ。

リテールの専門家らは、JetblackのCコマースの取り組みが示唆するように、将来人々はインターネットで検索することをしなくなる可能性があると指摘している。CNNによると、金融会社Cowenのリテールアナリスト、オリバー・チェン氏は、ブラウザの検索バーは将来、カセットテープのような時代遅れの存在になり得る可能性があると述べている。能動的に検索するのではなく、テキストまたは音声を介したチャットボットとのやりとりの中から、求めるプロダクトやサービスを見つけ出すことが主流になるかもしれないということだ。
