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未来のリテール「Cコマース」

約8割がまた利用したいと答えた、Gwynによるコンシェルジュサービス

 Cコマースの取り組みを実施しているのはウォルマートだけではない。

 花・食品販売を手がける1−800 Flowersは2016年5月頃からCコマースの試験的取り組みを行っている。IBMのワトソンをベースに開発されたコンシェルジュ「Gwyn(gifts when you need)」が会話を通じてパーソナライズされた商品をレコメンドするサービスだ。

 同社のマーケティング・顧客体験部門の責任者ジョン・マンデル氏がDIGIDAYの取材で、Cコマース取り組みで得られたインサイトを語っている。

 それによると、サービス利用者はGwynとの会話の中で平均5〜6つの質問を投げかけ、2分以上の時間を費やすという。

Gwynの会話インターフェースhttps://www.1800flowers.com/1-800-flowers-home
Gwynの会話インターフェース

 一般的にリテールブランドは、サービスを提供する上で、顧客は簡潔さとスピードを求めていると考え、それに応じたサービスを提供。顧客にとって2分というのはかなり長い時間だと認識しているのだ。しかし、Gwynによるコンシェルジュサービスの中で、顧客は価値があると判断した場合、2分以上もの時間を費やしてもよいと感じていることが明らかになった。

 利用者がGwynと会話に2分以上も費やせるのは、Gwynが礼儀正しく、本物の人間のような会話を行えるからだという。チャットボットの会話は、それまでに学習したデータが大きく影響を与える。たとえば、MicrosoftがTwitter上で公開したチャットボットTay。19歳のアメリカ人女性という設定で、Twitterから会話を覚えるボットだったが、一部のユーザーから不適切な会話を学習し、そのような発言をするようになった。

 一方、Gwynの学習は1−800 Flowers社内部で実施されたため、会話能力が不正に調教されることはなかった。また一般的なメッセージアプリのインターフェースが本物の人間と会話をしているような感覚を与えたことも影響しているようだ。結果、Gwynコンシェルジュサービスを利用した人の80%がまた利用したいと答えているという。

 Gwynコンシェルジュサービスは、売上増にも貢献しているようだ。同社CMOのアミット・シャー氏がADWEEKの取材で、2018年の「母の日」には1,200万本近い花が出荷される予定だが、Cコマースサービスなしでは不可能な数字だと述べている。

中国でも無視できない「Cコマース」シフト

 国を挙げて人工知能の開発と普及を進める中国でもCコマースは無視できないトレンドになっている。PRエージェンシーLEWISが中国で実施した調査で興味深い結果が明らかになった。この調査では、中国在住の消費者1,064人に聞き取りを実施。

 リテールブランドとのコミュニケーションで、どのチャネルが好ましいのかという質問では、WeChatやQQなどチャットボットと会話できるソーシャルメディアが58%と大差で1位となった。対人でのコミュニケーションは33%、電話は18%、Eメールは6%だった。チャットボットを利用したときの印象は、使いやすさ、レスポンスの良さ、効果的な情報収集、情報の正確性などが挙げられている。

 また同調査では、中国のマーケティング担当者への聞き取りも行っている。それによると中国のマーケティング担当者の75%がプロダクトやブランドのプロモーションでチャットボットの利用を検討していると回答。チャットボットを導入する利点に関しては、74%が人件費節約、56%が効率的なコミュニケーション、43%がより良いカスタマーサービス、32%が売上増と回答している。

 ITコンサルタント会社ガートナーによると、2020年までに顧客がブランドとのコミュニケーションを取る際、その85%は人間を介さないものになると予測されている。商品の多様化による「選択のパラドックス」という問題、消費者ニーズの変化、さらにはチャットボットの進化など、Cコマースが普及する土台は固まってきている。先進的なブランドによるCコマースの取り組みがどのように展開していくのか、またそれがどこまで波及するのか、今後の動向から目が離せない。

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この記事の著者

細谷 元(Livit)(ホソヤ ゲン)

生成AI関連のトピックを中心に執筆。最近の注目トピック/キーワード:エージェンティックAI、LangGraph、Deep Research、Anthropic、オープンソースモデル

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/25 14:30 https://markezine.jp/article/detail/30634

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