マス向け商材にとっての「クリック率」とは
また、ターゲティングバナーに関して話題となったのが「クリック率」。お弁当レシピに関連して泡スプレーを訴求するにあたり、次の2枚のクリエイティブを用意したところ、それぞれ下記のクリック率が出てきた。どちらの配信を続けるべきだろうか。

クックパッドではレシピを前面に押し出したほうが、当然クリック率は高くなる。出てきた数字からも、右側のクリエイティブに予算を集中したほうが良さそうに見えるが、齋藤氏はその時、あるマーケターから聞いたエピソードを思い出したという。
「クリック率というのは元を辿ると通販から始まった発想で、デジタルの浸透とともに一般的に使われるようになったもの。リアルな場で商売をして、マスでコミュニケーションしてきた企業が忘れてはいけないのは、クリック率はどんなに高くても1%で、残りの99%の人はクリックしていないという事実です。この99%にどう態度変容してもらうのかがとても大切だと、その方はおっしゃっていました」(齋藤氏)
そこで齋藤氏は、「どちらのクリエイティブも同じ量の配信を続け、様子を見させてほしい」と提案。その後、比較してみると、クリック率の低かった左のクリエイティブのほうが、商品認知、購入意向、そして実購買も高くリフトしていたことがわかったのだ。

この結果を聞いた菅原氏は、考察を次のように述べた。
「CTRとは関係なく購入意向が高かったのは、クリックによってなにかを見せようとしなくても、商品の機能や効果がしっかりと伝わるクリエイティブを用意し、店頭に行けば商品が売っているという状態を作れたからではないでしょうか」(菅原氏)
花王との取り組みを紹介し終えた上で、齋藤氏は、デジタルの有効な活用方法について語った。
「これまでお話してきた施策からわかるように、デジタルの強みは検証ができる点です。新商品や、ターゲットを変えていきたいロングセラー商品が、伝えていくメッセージや価値を定めようとしたとき、ユーザーにとって本当に価値があるのはどれなのか、比較・検証が可能です。一番刺さるものを研ぎ澄ませた上で、マスも含めてコミュニケーションの柱にしていく。これがデジタルの有効な活用方法なのではないかと思います」(齋藤氏)
Mizkanと花王、両社の事例で強調されていたのが、施策の効果を「可視化」し、正しく「比較」することの重要性だった。食に関するマーケティングにおいては、これら2つの観点が引き続きカギを握ることになりそうだ。
