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過程を自分のものにすればどんな環境でも再現できる 『THE MODEL』出版記念イベントレポート

日本でもSaaSが注目を集めていることについて

 第2部ではDNX Venturesの倉林陽さんを招き、福田さんとのパネルディスカッションを開催。福田さんと倉林さんは旧知の仲で、セールスフォース・ドットコムにて親交を深めたそうだ。

 倉林さんは同社でSaaSのスタートアップへの投資を担っていたが、入社当時(2011年頃)はまだ国内にSaaSスタートアップが少なく、投資以前に企業を見つけること自体が難しかったという。今は投資先をじっくり検討できるほどにSaaSスタートアップが増えており、その際にTHE MODELに沿って事業計画を練ることができているかどうかも、投資判断の重要な基準となるという。

 事業計画を立てるとき、スタートアップはどうしても楽観的になりがちだ。コストを安く考えすぎていたり、営業を増やす考えがなかったりする。特に、営業が習熟するにはある程度期間が必要だが、それを考慮していないことが多い。また、人が辞めることも想定しなければならない。THE MODELはそうした人材面も含めて考えられるフレームワークだと言えよう。実際、『THE MODEL』でも組織や人材について多く言及されている。

 スタートアップがリスクを甘く見積もる点については福田さんも同意。会社のカルチャーや目標の達成度合いも変化していくので、経験のある人がいるだけでもスタートアップは成功しやすくなる。倉林さんのような立場から事業を俯瞰してもらうとよりよい事業計画を立てられるのでは、とのこと。

会場

 また、SaaSが注目されスタートアップが増えており、何でもSaaSと呼ばれるきらいがあるというテーマが投げかけられた。これに対し、倉林さんは投資案件が増えていていい状況だと返した。特にアメリカではIT大手企業の中堅社員がどんどん起業するので、BtoBとBtoCの両方でさまざまなプラットフォームが立ち上がっているという。

 一方、日本ではBtoB事業に対して知見のある人材が同じ企業に勤め続ける傾向が依然として強く、BtoBスタートアップはこれまで増えていなかった感触がある。別の要因として、IT業界の社会的地位がアメリカと比べて低い時代が長かったため、技術への造詣が深い経営者が少なかったことも挙げられた。

 福田さんはSaaSという言葉だけでグルーピングするのは危険だと指摘。提供するサービスによってその特性やビジネスモデルは異なるため、SaaSという業態が同じだけで同じやり方を当てはめるのはあまり意味がない。むしろ、自分たちの事業と近しい他の業界とビジネスを比較・分析するほうが役に立つかもしれないとのことだ。

 倉林さんは社長のキャラクターとSaaSという事業が合っていない場合に注意すべきだと言う。どういうことかというと、SaaSは何もかも数字で判断できるため、地道な分析と改善で売上を伸ばしていくことが好きならSaaSが合っている。プロダクトの改善やカスタマーサクセスにも向き合い、積み上がっていく売上の価値を高めていく姿勢が重要である。

 なので、コストをかけずに急速に成長したい、パートナーに販売は任せたい、開発も外注、といった方法ではうまくいかない。SaaSが流行っているから手を出すのではなく、SaaSという業態での成功の本質と自分の経営スタイルが合っているかどうかを検証する必要があるだろう。

どういう組織を作っていくべきか

 最後に、本イベントや書籍でもテーマとなった人材や組織について質問が投げかけられた。SaaSビジネスではどういう組織を作っていくのがいいのだろうか。

 倉林さんは投資を判断する基準として、部署ごとに役割分担ができていて、サブスクリプションの契約数を増やすために連動できる組織であるかを重視するという。しかし、スタートアップでそこまで組織を作り上げるのは難しい。カスタマーサクセス部門を作ろうにも資金がない。そのため、1人がいくつも兼務することになる。また、資金があっても理論だけで組織を作ってもうまくいかない。コンサルタントに任せきりでもダメで、なぜそういう組織が必要なのかという基本的なところから、事業を理解している人が設計すべきだと話す。

 福田さんは人材配置が大事だと語る。カスタマーサクセス部門は顧客がサービスを活用するのを支援するのが仕事だが、一方で売上にとって重要なアップセルや契約更新も担っている。けれど、活用支援が得意な人と契約更新の営業が得意な人は必ずしも同一人物とは限らない。1人で全部できるわけではないので、組織設計をする人は社員のことをよく知り、適切な役割に当てはめることが欠かせない。カスタマーサクセス部門にいるから全部任せる、アカウントエクゼクティブだから関連する仕事は全部任せる、といった押しつけでは組織は回らない。

 組織がうまく回らず不整合が起きているときが最も辛いときだ、と福田さんは言う。だからこそ、その会社ならではの、流れをよくする文化を作るべきだという。人が入れ替わるたびに何もかも刷新されるのではなく、脈々と受け継がれていくよい文化を作ること。福田さんは「受け継がれるものを作れる組織が理想」と語り、本イベントを締めくくった。

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THE MODEL(MarkeZine BOOKS)
マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

著者:福田康隆
発売日:2019年1月30日(水)
価格:1,944円(税込)

本書について

本書は、日米のオラクル、セールスフォースでSaaSの急成長を見つめ、自らもその変革を実践してきた著者がそのビジネスの側面にフォーカスして、自らの体験をもとにその全貌を明らかにします。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2019/04/22 07:00 https://markezine.jp/article/detail/30800

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