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露出のための戦術ではない 個の時代に求められる社会的な関心事とつなげる戦略PR

企業のニーズとPRパーソンの能力をマッチング

――戦略と戦術の間の期間、とは?

 PR戦略は、世の中とどう関係構築していくかということなので、経営やマーケティングの根幹に関わる話ですし、スタートアップで人材リソースが限られていてもすぐにでも議論を始めたほうがいい。「こういう軸で世の中の関心を取る」という方向性が固まって初めて、クリエイティブへの落とし込みや、実際のPRに使えそうな有効なファクトが見えてきます。

 その後にあるのが、PRの「戦術」です。リリース配信を含むメディアリレーション、インフルエンサーリレーション、また広告制作もPR戦略に基づく施策と捉えるとPR戦術の一環になると思います。その際、インフルエンサーを起用した企画に3ヵ月もかかることはあまりないですよね。パブリシティも、決まるときはパッと決まる。

 この流れを踏まえると、戦略と戦術との間は少し空くのが当然なんです。年間契約で並走してわかることやメリットも大きいですが、逆に一番まずいのは、その間に無理やり仕事を作ってしまうことです。

――そんな事態も起こっているんですね。

 ええ。なので僕らは、戦略フェーズと戦術フェーズを分けて、それぞれの期間で区切った支援を模索していこうと思っています。それに、前述のフレキシブルなチーム編成であたっていきます。フェーズごとに企業のニーズも異なるので、個々のPRパーソンとのマッチングも最適化することができると思います。

 マーケティングは、昨今は有用性の高いツールもたくさん出ていますが、ことPRの業務は属人性がすごく高いんですね。優秀なPRパーソンが一人入るだけで、一気に状況が好転する例をたくさん見てきました。それをもっと効果的に、速いサイクルで起こしていきたいと考えています。

企業人も「個」の動き方を知るべき

――PRは属人性が高いということですが、それは個人を活用したフレキシブルなチームづくりにも合致していますね。

 はい、まさにそれが狙うところです。ここには2つの流れがあって、ひとつはPRという仕事の性質から、そもそも「PR成果が人に左右される」という点。もうひとつは、社会的に「個の時代」に突入している点です。インフルエンサーはまさに「個」が立った前提での活動ですし、働き方改革の広がりで、一般会社員から副業者やフリーランサーへの転向も増えています。

 もちろん個人の集まりでは規模を出しづらいですし、既存のPR会社の組織力が今後も有効なのは間違いないと思っています。ただその場合も、あるいは事業主側の広報部門にしても、顔の見えない何十人の部署より「この人が率いている」と明確にわかるほうがPRの仕事はうまくいきます。

 加えて、インフルエンサーやフリーのPRパーソンなどの個人事業主は、仕事選びからフィーの取り方まで、会社員とは違う軸で動いています。たとえば、「1フォロワー〇円でどうか」というオファーがインフルエンサーによっては失礼になるケースがあるなど、相手のインサイトがわからないと仕事ができません。誰もが企業内タレントとして目立てるわけではないし、それが必須でもないですが、「人と人」として彼らと協働するには、企業人でもその価値観を知らないといけないですよね。

 そういった部分を踏まえて、僕らは組織と個人の力をつなげ、円滑にして、最適なバランスを図りたいと考えているんです。

境界を越えたダイナミックな展開を目指す

――では、事業主である企業はこの先、PRに関してどんな未来像へ進むと思われますか。

 組織と個人が溶け合うと同時に、人材の流動が起こると思います。企業人からフリーになって、また戻るとか。そうしてキャリアを積んでいくのが当たり前になるでしょうし、なって欲しいですね。同時に、PRとマーケティング、PRと経営企画など従来の領域の境も溶け合っています。

 その先にあるのは、PR予算の議論です。それこそ「PR=パブリシティ」の誤った認識だと、お金をかけずに露出することが目的になり、広報予算がいまだにすごく限られる企業も少なくありません。でもそれも、境界線が溶け合ってPR戦略が経営と紐付けば、PR戦略に基づいてPR戦術の予算、マーケや広告の予算、プロモーションの予算が最適配分されることにもなると思います。

――最後に、本田事務所の展望をうかがえますか。

 現状、PRの戦略と戦術の理解や、PRの位置づけや地位向上はまだ途上とは思いますが、それでもこの10年でだいぶ進化しましたし、今がまさに潮目だと感じています。この先10年はきっともっと加速すると思うので、僕自身も自分なりに個の時代に対応して進化の一翼を担うべく、独立しました。

 目指すのは、映画『オーシャンズ11』のようなプロフェッショナル集団を縦横無尽に組んで成果を上げることです。今後はPRの好例といった狭義で括れる事例ではなく、PRを起点に領域をまたいだダイナミックなプロジェクトが出てくるはず。世の中との関係をしっかり構築できた施策や、大きなムーブメントを生み出した座組を紐解くと、こんなに上流にPRが機能していたんだという状態が理想ですね。そんな例を僕らから生み出していきたいです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
...

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2019/05/13 08:00 https://markezine.jp/article/detail/30914

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