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運用型広告時代の要!トレーディングデスク最前線(AD)

デジタルシフトを制す!リーディングカンパニーとして資生堂ジャパンがインハウス運用を強化する理由

 電通が発表した「2018年 日本の広告費」によると、「インターネット広告費」は全体の26.9%の1兆7,589億円となり、拡大が続いている。その内訳を見ると、約8割は運用型広告が占めているという。運用型広告で成果を出すには、その名の通り“運用”が要だ。今回は資生堂ジャパンのEC事業部でグループマネージャーを務める小椋一平氏と、インハウス事業支援を提供するハートラス(2018年10月に「エスワンオーインタラクティブ」から社名を変更)代表の高瀬大輔氏に、インハウス運用に起こりがちな課題と対策、社外パートナーを選択する際のポイントを聞いた。

業界のリーディングカンパニーとしてインハウス運用を強化

(左)資生堂ジャパン EC事業部 オウンドEC推進室 グループマネージャー 小椋一平氏
(右)ハートラス 代表取締役社長 高瀬大輔氏

MarkeZine編集部(以下、MZ):今日はインハウス運用体制で成果を出している資生堂ジャパンさんにお邪魔しています。小椋さんが所属するEC事業部のミッションについて、教えていただけますか。

小椋:資生堂ジャパンのEC事業部ではオウンドメディア・外部ECプラットフォームとの取り組みやデジタルテクノロジーを活用したコンテンツ制作などを実行していますが、私が所属するオウンドEC推進室では総合美容サイト「ワタシプラス」に携わっており、その中でも私のチームはEC機能のブランド施策や売上構築に携わることが多いですね。

 EC事業部は2010年に立ち上がったのですが、今でいうオムニチャネル構想を掲げていました。当時はO2Oと呼ばれ始めた時期でしょうか。

高瀬:ハートラスの高瀬です。2018年から資生堂ジャパンさんのインハウス運用の支援を行っていますが、御社は早くからデジタル上のコミュニケーション基盤を自社で持つ重要性に気づき、取り組まれていますよね。

小椋:はい。FacebookやInstagramをはじめとしたデジタルプラットフォームが拡大・多様化していく中で、リアルだけでなくデジタル上でもお客様と直接つながり、統合的に価値提供できるような仕組みを作っていく考えは、早くから社内にありました。その考えを具現化したのが「ワタシプラス」です。

美のソリューションを提供するプラットフォーム「ワタシプラス」

小椋:「ワタシプラス」は単なるECサイトではありません。資生堂ジャパンとして美のソリューションを提供するプラットフォームです。美容情報や店舗情報、商品カタログなど、弊社が発信する美容情報をデジタルに集約した場であり、そのなかの1つのコンテンツとしてEC機能があります。

MZ:御社には多数のブランドがありますが、EC事業部とはどのような関係なのでしょうか?

小椋:各ブランドのメディアプロモーションやコミュニケーション設計は、メディア統括部が担当しています。EC事業部の中でも、私が所属するオウンドEC推進室では「ワタシプラス」におけるECやそれに関する広告設計を担っており、ブランドと連携しながら認知拡大からEC集客まで実施しています。さらにはこれらの取り組みをデータベースで一元化し、売上を上げるだけでなく一緒にブランドのファン創出を推進しています。

 実は、店頭に来店されて「ワタシプラス」に登録された方は、店頭での翌年以降の再来店率・購入金額が上昇し、2年後3年後の継続率は倍近くになっていることがデータからも明らかになっています。これはすなわち、「ワタシプラス」というデジタル上のコミュニケーションによって、お客様とブランドの距離が近くなっていることの表れです。

MZ:お客様とデジタル上のコミュニケーションを継続的に続けていくには、“運用”という概念がともないます。小椋さんはそのパートナーに、なぜハートラスさんを選ばれたのでしょうか。

小椋:もともと社内で運用には取り組んでいたこともあり、ハートラスさんには“運用”という一部分ではなく、もっと手前の“体制構築”から手伝ってもらっています。元々私は店頭営業を長年担当しており、今のチームに異動してきた当初はデジタルマーケティングに関する知識はほとんどなかったため、ゼロから勉強してトライを続けてきました。

 自前で進めてきたこともあり、成果は出ているものの、部分最適と全体最適のバランスがとれているのか、自信がない点も正直ありました。一度運用のプロに業界のものさしを教えてもらいたい。業界をリードしていくためにも、今改めてベースを固めたいと思い、ハートラスさんの手を借りて、組織体制や情報整備に取り組むことにしたのです。

インハウス運用の支援は型通りの提案では解決できない

MZ:パートナーはどのように探したのでしょうか?

小椋:実はハートラスさん以外にも、何社か同じような相談を持ち掛けました。ちなみに、高瀬さんとは数年前にとあるカンファレンスで出会いました。その時のことが印象に残っていて、高瀬さんから頂いた名刺には「広告に困ったらこの人」とメモしていたんです(笑)。

高瀬:困った時に思い出していただけて、ありがたい限りです。

MZ:複数社の中から、ハートラスさんをパートナーに選んだ決め手は何だったのでしょうか?

小椋:私たちのやっていることや、何に困っているのかを一番しつこく聞いてきてくれたのがハートラスさんだったからですね。何度も話し合いを重ね、ハートラスさんは私たちの課題をうまく言語化して、整理してくれたのです。その上で、運用にのせるためのステップと、ステップ別に適した人材配置を提案していただきました。

 一般的には、型にはまったスキームを提案されがちですが、ハートラスさんは私たちの状況を理解したうえで個別最適化された提案をしてくれたんです。

高瀬:企業によって抱えている課題は様々です。当社としても、型にはまった提案だけでは解決できない領域だと認識しているので、資生堂ジャパンさんに限らず、まずは状況を理解したうえで各企業に合わせたオリジナルのスキームを提案しています。

 正直、今回小椋さんから頂いたオファーは非常にハイレベルでした。そもそも、リアル店舗も含めたデータをデジタル化できている企業はなかなかありませんからね。

小椋:私は、デジタルシフトとは要するに「データをどう扱うか」という点に集約されると思っています。まずはデータベースをしっかり構築したうえで、いかにデータを活用し、お客様にとって心地よいコミュニケーションを実現できるかが重要です。

 その文脈でいうと、広告もデータ活用先の1つです。データベースを軸に、広告だけでなく、デジタルチャネル全体を統合したコミュニケーション設計をしていかなければいけない。そのような課題を相談させていただきました。

高瀬:お話を聞いた上で、もし私が小椋さんだったらどのような施策を実施するべきかを客観的に分析し、必要だと思う戦略を提案しました。

 また、必要があればツールの提案もしますが、私たちはあえて特定のプロダクトを持たないようにしています。それは提案内容に「公平性」を持たせるためです。

小椋:公平性に関しては、当社としても重視するところだったので非常に共感できました。 

マーケターの右腕として、運用から体制構築まで支援

MZ:では具体的にはどのような体制で、インハウス運用を支援しているのでしょうか?

高瀬:当社のメンバーを小椋さんのチームの一員として常駐させています。社外向けでは、チームの一員として代理店とのやり取りをサポートしたり、施策結果を元にネクストアクションの設計を行っています。社内向けでは、責任者である小椋さんへのレポートラインの整備からタグ整理に加えて、他部門との連携を推進する役割を担っています。

 広告運用のオペレーションに従事する、という狭い範囲のみ関わるのではなく、マーケターの右腕として、テクノロジ―回りから体制構築まで支援するイメージです。

MZ:ハートラスさんのインハウス運用支援を受け入れてから、どんな変化がありましたか?

小椋:ハートラスさんから来てくれたメンバーの方は、良き相談相手として悩みを聞いていただき、またそれを整理して都度適切な提案をしてくれるので、とても心強いですね。

 たとえば、ハートラスさんに入っていただく前はメンバーそれぞれが協力他社とやり取りをしていたので、コミュニケーションが属人化していました。そのような課題を相談したところ、コミュニケーションルートの仕組みを整える提案と実装をしていただきました。その結果、今は誰とどのような話が進んでいるのか、コミュニケーションの進捗状況が可視化され、引き継ぎもスムースになりました。

 これはほんの一例ですが、体制やデータを整備するための仕組みを一つひとつ構築していきましね。その結果、コミュニケーションの全体設計をはじめマーケター本来の仕事に使える時間が増えたのが1番の収穫でした。

高瀬:資生堂ジャパンさんはリアルからデジタル上まで、膨大なデータを有していらっしゃるので、正直なところ、整備はとても大変でした。状況を見て、どの程度常駐するかを判断しようと考えていたのですが、内情を理解したうえで、フル常駐での対応を判断しました。

 最初から常駐するという契約にしてしまうと、作業が発生しない場合もクライアント側に無駄な費用が発生してしまいます。短期的には私たちは利益を得られますが、それは本質的ではありません。信頼に足るパートナーとして、費用の面でも納得いただけるように常に配慮しています。

伴走の先にある、自走までの道のり

MZ:事業主企業としては、自走できる状態が理想だと思いますが、ハートラスさんにはパートナーとして、どのくらいの期間、伴走してもらいたいと考えていますか。

小椋:実は、2018年末で運用の型は完成し、自走できる体制は整ったこともあり、伴走は終わる予定でした。しかし今年に入って、タグの整理やホワイトリスト作成のための各ベンダーとの調整など、新たな課題が発生したので、改めて契約をさせていただきました。

 自走できる体制が整った後も、進化の激しい業界なので、新たな課題が出てくることは珍しくありません。そんな時は、また一時的に伴走してもらいながら、最終的には当社のメンバーだけで運用できる体制を目指しています

MZ:最後に、両社が考える今後の展望を教えてください。

小椋:これからも引き続き、お客様により良いブランド体験を提供するための取り組みを続けていきます。鍵となるのはやはりパーソナライズでしょう。

 パーソナライズを実現するためのテクノロジーは日々進化しているので、私たちも追いかけ、理解しなければなりません。でも、自分たちだけでは解決できない課題にぶつかった時は、ハートラスさんに相談させていただきたいですね。

高瀬:当社の展望は2つあります。1つは、資生堂ジャパンさんのチームの一員として、今追っているゴールを達成すること。2つ目は、会社として掲げているミッションですが、広告主の皆さんに本質的な価値を提供していきたいですね。適切なデジタルシフトを推進すべく、従来の広告代理店とは異なる、中立的な立場からの支援企業として、マーケターの皆さんの悩みに寄り添い、一緒に伴走し、さらなる価値提供に邁進していきます

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/20 10:00 https://markezine.jp/article/detail/30915