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サブスクリプションモデル大解剖

解約率は0.5%を保持&テレビCMも大胆に展開 SmartHRはなぜ急成長できたのか


サブスク戦国時代 勝ち残るカギは「参入障壁の高さ」

西井:SmartHRはサブスクリプションを採用し、従業員数50人以下のスモールプランと、それ以上のスタンダードプランに分かれています。管理する従業員の人数別という、シンプルな設計の料金体系になっていますよね。

宮田:SaaSとサブスクリプションは、サービスを開発していく点で、とても相性が良いと感じます。従来のパッケージ型は、売ることに重きを置きがちですが、サブスクリプションの場合は、長く使っていただけるよう、導入後を大切にしますよね。お客様の利便性を考えた正しいサービス作りができることが、サブスクリプションの一番良い点です

西井:おっしゃる通り、サブスクリプションはサービスを提供する側がモチベーションを高くもち続けることができるモデルでもありますよね。

 しかし、たとえば動画配信サービスの領域では、オリジナルコンテンツを増やして差別化を図りながら、激しい価格競争を勝ち抜いていかなければいけない状況になっています。SmartHRにも、競合が増えているのではないでしょうか。

宮田:私たち労務系SaaSは製品開発の際に参考にできる前例がない分、参入障壁が高いのではないかと考えています。労務領域は大まかな指定はあるものの、細かな運用は企業に任されているのが現状で、ベストプラクティスがわかりにくい側面もあります。

 たとえば、入社時は雇用保険番号が必要ですが、本人が「わからない」ときにどうするか。正解は「前職の社名をハローワークへ伝える」なのですが、こうした対応策はあまり共有されていません。

 一方、私たちは初期の頃から、現場が使いやすいサービスになるよう、人事労務経験の長いプロフェッショナルをプロダクトマネージャーとして抜擢しています。今もお客様の業務フローをヒアリングし、機能に反映し続けていますね。

西井:想像以上に、製品開発が難しい領域だということが伝わってきます。

宮田:私たちのビジネスモデルは、かなり先行逃げ切り型だと思います。どこよりも早く世の中にない製品を開発し、大胆にマーケティングを展開したことが功を奏しました

西井:参入障壁の高さという観点では、オイシックスとの共通点を感じます。有機野菜の通販サービスも実はとても難しいことをしていて。野菜ですから、仕入れに予測はできても確実性はありません。売れ筋だからと言って、在庫を増やすことも、積むこともできない。物流のマネジメントが難しいのです。利益をしっかりと出せるレベルでの食のサブスクリプション参入は、ハードルが高いと思います。

「SaaSの基準」に則り、テレビCMも大胆に展開

西井:続いて、マーケティングについても教えてください。SmartHRはオールターゲットのサービスですが、どの領域に絞ってマーケティングをしてきたのでしょうか。

宮田:初期は、クラウドサービスへの理解があり、リテラシーが高いIT企業をターゲットにしていました。そのときは、GoogleやFacebookの広告と、テック系メディアへのPRが中心でした。その後は、オウンドメディアの運営と、MAの導入、展示会ですね。出展やイベントスポンサードだけでなく、自社イベントも企画していて、基本はインバウンドです。

西井:先ほど「大胆なマーケティングが功を奏した」とお話していましたが、SmartHRはテレビCMも実施されていますよね。

宮田:早いタイミングから出稿しています。

 SaaSの世界には、マーケティングコストの基準がありまして、「LTVをCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)で割った数字が3よりも大きい」ときには、マーケティングに投資すべきと言われています。SmartHRは解約率が0.5%と低く、LTVが高いため、この数値が7~8を超える月も多く、マーケティングへの投資にもアクセルを踏めるのです。

西井:SmartHRを利用している企業の従業員数は、数名から十数万名と幅がありますよね。LTVはどのような単位で見ているのでしょうか。

宮田:基本は、平均で見ていますね。ちなみにLTVを解約率0.5%で計算すると、継続利用期間が長くなりすぎて現実的な数字ではなくなってしまうため、少し厳し目の想定をしながら収益を管理するようにしています。

 また、意識して追いかけているKPIはシンプルに3つ。先ほどお話した、LTVとCACのバランスと、サブスクリプションの売り上げ成長率を示すARR(Annual Recurring Revenue:年間定額収益)。そして解約率です

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「解約しやすい仕組み」を通じてスピーディな改善を実現

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/24 13:46 https://markezine.jp/article/detail/31139

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