なぜ経営幹部はCMOに興味をもっていないのか
真実1:経営幹部はそこまでCMOに興味をもっていない
●80%のCEOは、自社のCMOを信頼しておらず、あまり評価もしていない
●わずか11%のCMOしか、CXに投資する権限をもっていないと回答
安成:「経営幹部の方々がCMOにそれほど興味をもっていない」というのはとても意外でした。米国でも、まだマーケティングが経営ごとになっているとは言い切れない状況なのでしょうか?
オニール:米国でもマーケティングが戦略的な役割と位置付けられて、デジタル変革はとても重要だと捉えられています。しかし経営幹部の方々との連携は、なかなか苦労します。なぜかというと、経営陣それぞれが独自の考えややりたいことをもっているので、そこをデジタル変革で変えていこうとするのは簡単ではないためです。彼らはまだ、テクノロジーがもたらす真の意味での価値がわかっていないのです。
安成:どうすれば、この問題を乗り越えることができるでしょうか。
オニール:CMO以外の経営幹部(CIOやCFO等)たちは何を重視し、どんな価値に重きを置いているのかを意識しながら、その方たちが理解できる言葉で伝えていくことが連携強化につながります。つまり、パートナーシップの話です。
また、同僚の方々と関係を構築して、信頼を醸成していくことも重要です。それから、現実的になるよう予算もきちんと踏まえたうえで、デジタル変革においてどんな課題があるのかをきちんと打ち出していきます。他の同僚たちに、デジタル変革の重要性を論理的かつ心理的にも説得し、ビジネスを牽引していかなければいけません。
パーソナライズが進化しない理由
真実2:パーソナライズは、フリーサイズではない
●85%のシニアマーケターは、デジタルコンテンツのパーソナライズが、重要な差別化・優位性になると回答
●初歩的なレベルを超えたパーソナライズを実現しているのは、わずか23%
安成:パーソナライズは、その重要性を認識していないマーケターは少数だと思いますが、どのような課題があるのでしょうか。
オニール:調査結果から、デジタル変革において、パーソナライゼーションの重要性が認識されていることは明白です。その反面、理想とするパーソナライゼーションの実現はとても難しく、なかなかマーケターが望むような進陟にはいたっていません。
パーソナライゼーションのレベルを4段階に分けて実施度を調査したところ、場所やデバイスといった基本的な情報を活用するレベル1より先のパーソナライゼーションを実行しているマーケターは全体の23%しかいませんでした。そこを前進させるためには、スモールスタートでテストプロジェクトから始めていき、うまくいったら会社全体で取り入れるという風にしていくのが良いと思います。
安成:レベル2以降ができていない企業が多い原因は、基盤になる社内データが整っていないからでしょうか。
オニール:はい、データがバラバラの場所にありそれらを総合して全体像をつかむことや、データを正しく理解してパーソナライゼーションに役立つように構築していくということが難しいという課題があります。また、パーソナライゼーションを実施するためのコンテンツを用意すること自体も、そもそも難しいのです。
AIだけでは救世主になり得ない
真実3:AIだけでは救世主になり得ない
●86%の経営幹部は、AIが必要だと考えている
●79%はまだ適用していない
安成:AIがすべてを解決してくれるわけではないという認識は、日本でも広まりつつあります。
オニール:マーケターの方々は、AIによって自動化をしてしまえば、自分が今まで苦労してきた作業は全部救われると思ってしまいがちです。しかしご理解いただきたいのは、データの構造をきちんと整理して、初めてAIのメリットが享受できるということです。つまり、マーケター側でそのための作業をきちんとしないといけないよ、ということがメッセージとなります。