BtoBマーケティングにおける先駆的な取り組みで知られるKDDI。ここ数年、自社サイトにまだ訪問していないターゲットと外部メディアのディスプレイ広告経由で接点を持ち、ターゲット企業群のカバー率を向上させるABM施策に精力的に取り組んできた。中でも特に力を入れてきたのが「2ndパーティデータ」を活用したDMP構築だという。その戦略的な意図はどこにあるのかを聞いた。
プライベートDMPをABMに使おうとした理由
――改めてKDDIとして、なぜABMが重要だと考えているかから聞かせてもらえますか。
中東:ABMの基本はSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)です。購買力が高いと思われる顧客をセグメントし、ターゲティングし、適切なターゲットにコミュニケーションを行うことを、アカウント(企業)単位でやろうとしているだけで、特別なことをやろうとしているわけではありません。
具体的には、プライベートDMPに蓄積したデータを使い、自分たちがどの顧客にマーケティング活動を行うべきかを判断したいのです。
IPアドレスで配信先の企業を指定できるDSPを使えばターゲット企業だけに広告を出すことができるのに対し、プライベートDMPであれば自分たちが保有する1stパーティデータを基に、自社サイトの内外で特定の顧客とのコミュニケーションを行うことができます。

ある業種の部長以上だけに広告を出し、課長以下には出さないようにするなど、「アカウントベースドマーケティング」から一歩進んで「アカウントベースドアドバタイジング」ができないかと考えました。そのためのプラットフォームがプライベートDMPになります。
――プライベートDMPをABMに役立てようとするのはなぜでしょうか。
森本:BtoCでは個人単位に体験を提供しますが、BtoBではアカウント=企業に対して体験を提供します。その際に使うのはデモグラフィックデータではなく、従業員数や売上高、役職などといったファーモグラフィックデータです。
MAでも同じことができるのではないかと思うかもしれませんが、MAではメールアドレスを開示してくれた相手にだけ、メールなどでコミュニケーションできます。一方、プライベートDMPを使えば、Cookieベースでアノニマスな(フォームで氏名などを取得できていない)顧客にもファーモグラフィックデータをひも付け、自社サイト外でも広告によるコミュニケーションが可能です。
中東:MAでのコミュニケーションはメールアドレスの獲得後が中心となるため、MOFu(Middle of the Funnel、自分たちの課題を認識していて情報収集を熱心に行っている層)に対するものが主戦場となりがちです。
私たちKDDIはデジタルトランスフォーメーション支援を提供しており、5G時代を見据え事業のあり方を変えようとしているお客様に向き合っているため、TOFu(Top of the Funnel、自分たちの課題を明確につかんでいない潜在層)の顧客のパーセプション(認識)を変えることに取り組まなくてはなりません。課題が顕在化していない状態でメールアドレスはご登録いただけません。そのためアノニマスなお客様のファーモグラフィックデータを得て、その人たちとのエンゲージメントをデジタルで獲得しようと考えたのです。
私たちの主なターゲット顧客はある程度の企業規模が必要となるため、従業員数500人以上の企業がその主軸になります。その条件に合致する企業は日本では7,000社程度、国内総企業数の0.25%にしかなりません。そのため、1社あたりの到達単価が同じだと仮定してざっくり計算すると、1社あたりのコミュニケーションには、ターゲティングしないマス広告と比べて最大400倍のコストがかけられることになります。
――取り組みを始めた時点で、約7,000社のうちどの程度の国税法人番号が把握できていたのですか。
森本:何もしない状態でカバーできていたのは約30%でした。そのカバレッジを増やす施策に取り組んだ結果、2019年3月末時点で約80%にまで増やすことができました。
中東:ABMにおいてカバレッジは非常に重要な概念です。今回の数字はターゲット企業のどのぐらいが自社のDMPで把握できているかを示すものですが、この評価を行う企業は意外に少ないと思います。多くのマーケターはアノニマスなページビューやUUでしか評価できていないのではないでしょうか。80%ものターゲット企業と何らかの形で接点を持つことができ、セグメンテーションを行うベースとしてかなりの水準に到達したと考えています。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...
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