インスタはブランディングから購買まで一気通貫で活用されている
「INSTA COMMERCE DAY」のブレイクアウトセッションでは、「コマースにおけるInstagramを活用したブランディング」をテーマに、事業主によるパネルディスカッションを通じてInstagramの具体的な活用方法が紹介された。
まず登壇したのは、フェイスブック ジャパンでECやトラベルクライアントを担当する丸山祐子氏。パネルディスカッションの前に、ECのトレンドを振り返った。
言わずもがな、ECにおけるスマートフォンの利用率は高まっており、経済産業省のデータによると、国内EC市場の物販のうち約40%がスマートフォンからの購入だという。その中でも、特に衣類・服飾領域はスマートフォン利用が50%以上と顕著だ。成長し続けるモバイルコマースにおいて、丸山氏は「Instagramの役割が変わってきた」と説明。
「先日、Instagramの月間アクティブアカウントが3,300万を超えたと発表いたしました。コミュニティが拡大しているだけでなく、Instagramは発見のメディアとしての利用に留まらず、商品やサービスを検索・検討のフェーズでも使われていることがわかっています。購買行動の様々なファネルにおいて利用される、プラットフォームなのです」(丸山氏)
検索・検討でも使われていることを象徴する一つのトレンドとして、検索がテキストからビジュアルへ変化していることを挙げる。おもしろいことに、フェイスブックのデータによると、日本のInstagram利用者のハッシュタグ検索数は、グローバル平均と比べ3倍なのだという。
さらに、ECで売り上げを継続的に伸ばすためにはフルファネルで考えることが重要だという。Instagramをブランディングから購買まで一気通貫で活用しているブランドの事例として、ヘアケアブランドのBOTANISTが紹介された。同ブランドは現在もInstagramをマーケティングのメインプラットフォームとして活用し、新しいヘアケアカテゴリーの市場創造と売り上げの成長を遂げている。
一方、「消費者の急速なモバイルシフトにより、ブランディングを行うことは容易ではなくなってきている」と丸山氏。テレビCMによるリーチの限界、動画広告のクリエイティブ効果、複数チャネルでのキャンペーンの効果計測が難しいことなど、様々な課題が顕在化している。
統一されたブランドの世界観をInstagramと作るBASE
では、このような課題を、Instagramはどのように解決できるのか。続いてのパネルディスカッションでは、そのヒントが明かされた。
パネラーには、BASEの神宮司誠仁氏、そして楽天の水谷公輔氏が登場。丸山氏を交え、両社のケーススタディが語られた。
誰もが簡単にネットショップを始められるプラットフォーム「BASE」で、プロダクトマネージャーを担う神宮司氏。同氏はInstagramに対し、「ビジュアル検索が特徴的。自分の趣向に合うコンテンツや、発信者と簡単につながれることが、ネットショップを使う人との相性が良い」と、自社のビジネスユーザーとの親和性を高く評価。テレビCMを行う予算を持たないような小規模ECでもInstagramでできるブランディングキャンペーンの事例を語った。
神宮司氏によれば、小規模なECの増加がトレンドであり、BASEの店舗数もそれに合わせて上昇。さらに、同社の流通額も4年間で9倍の規模へ成長した。そして、Instagramからの流入数は2017年に比べて9倍となり、直近はBASEへのSNS流入の80%を占めるほどだ。小規模なショップでもInstagramの活用でビジネスが成り立つことが証明されている。
その最も重要なポイントは、「シンプルなUIのInstagramプロフィールからBASEのショップサイトまで、ブランドが統一された世界観を表現できること」にあるという。
「BASEのショップオーナーは、大多数が1名体制で運用し、実店舗を持たない方々です。商品の製作過程をストーリーズで公開したり、購入後の商品レビューをInstagramから集めたりと、ファンとの距離を縮めるコミュニケーションをしています。また、プロダクトにユーザーの声を反映していくことで、エンゲージメントやロイヤリティの向上にもつなげているのです」(神宮司氏)
このような背景から、BASEは2018年の6月に「Instagram販売App」をリリース。Instagramが提供するショッピング機能の導入をサポートするアプリだ。このサービスを利用する/していないショップで比較すると、利用しているショップは、半年間の間で2.7倍のトランザクションが生まれ、売り上げを伸ばしているという。
Instagramの日常使いで、多様なブランドがターゲットとつながっているBASE。合わせて、ブランディングが、トラフィックや売り上げにも貢献していることがよくわかる事例である。
テレビCMをInstagramに最適化し、認知向上を狙った楽天
楽天で1,000ショップ以上のブランドが集まるファッション通販サイト「楽天ブランドアベニュー」のマーケティングを担当する水谷氏が自社の取り組みについて紹介した。
水谷氏は、アパレルとしては珍しい春セールの訴求で、同サービスの認知度を上げ、春物ファッションを先取りしたいファッションラバーな層へアプローチしたいと、Instagramを採用したという。
楽天の事例のポイントは、動画活用だ。同時期にテレビCMを放送しているが、素材は流用せずに、Instagramに最適化した動画に編集し、配信している。
KPIは認知率向上とし、売り上げへの影響指標として効果計測項目にビュースルーも設計。ラストコンバージョンのCPAのみで評価しないことを、意識したそうだ。
「Instagramに最適化した動画では、縦型のフォーマットに合わせ、動画素材の上下を黒いバナーと「楽天ブランドアベニュー」のテキストでデザインし、認知向上を狙いました。さらに、テレビCMのシナリオより早いタイミングで、“20%オフ”や“ポイントバック”のメッセージを入れ込んでいます」(水谷氏)
結果、ブランド認知率は広告に接触したグループでは、接触していないグループに対して、5.2ポイント上昇し、同氏もプロモーションとして高く評価しているそうだ。検索行動への影響を見たサーチリフトも4.17ポイント上昇、ビュースルーCVも7.5倍の数値が出ており、他メディアへの寄与も確認した。この結果からも、媒体効果をラストクリックやCPA以外の指標でも見ることの重要性を強調した。
以上の楽天のケーススタディを受け、丸山氏は次のようにまとめ、パネルセッションを締めくくった。
「楽天様のキャンペーンは、テレビCMで大きくリーチを取り、さらにファッション関心層をInstagramでターゲティングすることでリーチ補完しています。動画広告はモバイルに最適化し、結論ファーストの内容にすることで、効果を高めています。最後に、Instagram上の発信がもたらすサーチなどへの波及効果をふまえたKPIの設定もポイントです」(丸山氏)
テレビCMとInstagramの合わせ技でリーチと認知率を最大限アップ
セッション後半には、フェイスブック ジャパンの津野英梨果氏が登壇。ブランディングにおけるInstagramの役割と活用方法を、クライアントが悩みやすい「何を」「いつ」「どうやって」の3つの観点から語った。
まず、Instagram利用者は何を求めているのか。これについて津野氏は、「Instagramは最新トレンド、自分に関連する情報との出会いの場として存在しています」と話す。利用者は、楽しく、元気になれるようなコンテンツを求め、好きなことに関する情報を追求する場として、Instagramに集まるという。
では、どのようなときにInstagramでブランディングを行えばよいのだろうか。津野氏が提示したのは、「新商品・サービスの告知」「季節・期間限定セールの周知」の2つのタイミング。
「新商品・サービスの告知」については、テレビではリーチしきれない若年層をターゲティングした、auの学割キャンペーン事例を紹介。Instagram/Facebookでのインプレッションの約50%をテレビ未視聴層に届けることができ、リーチを拡大できたという結果を明かした。
また、「テレビ単体の接触者に比べて、Instagram、テレビCMの重複接触者のほうが、認知効果は20%高い結果となった」と津野氏。テレビCMの効果を補完する、Instagramのパワーを強調する。
リーチを最大化するにはクリエイティブと配信設計にも考慮を
Instagram利用者はクリスマスなどの季節性イベント時には特にInstagramを訪れることが多い。この傾向を狙った「季節・期間限定セールの周知」では、クリエイティブに訴求したい情報をしっかりと反映させることで、効果の最大化が期待できるという。訴求タイミングは、リーチとブランド認知の両方を考え、イベントの約1ヵ月前からのスタートが最適だ。
しかしながら、「どうやって」行えば良いのか。ここで知っておきたいのが、Facebookの広告配信ロジックである。まず、オーディエンスを細かく設定しすぎないことが大切だ。また、配信アルゴリズムを最適化するため、まとまった配信量が必要。そして、自動配置を活用し、配信効率を高めることにも意識すべきだ。これらのポイントを津野氏は、「Fewer」「Bigger」「Better」と表した。
最後に津野氏は、「モバイル上でのクリエイティブは、最初の3秒にメインメッセージを置くことで認知がとりやすくなります。シンプルでわかりやすい、ワン・メッセージにしましょう」とアドバイスを送った。
ブランディングとカルチャーを創出するInstagram
本セッションの総まとめとして登壇したのは、フェイスブック ジャパンの鈴木大海氏。改めて、ブランディングにおけるInstagramの優位性に言及した。
まず、Instagramのプロフィールページやストーリーズなどの機能を使い、世界観や商品の検討を促すコンテンツをalways-onで発信することで単体でもブランディング効果が得られる。さらに、テレビキャンペーンとInstagram広告を併用してより広く認知を獲得していく使い方も可能。Instagramで商品やセールの情報を知ったあとに検索行動などが高まる他メディアへの波及効果もある。
「Instagramでは、オーディエンスや利用者には、身近に感じられるコンテンツやシーズナリティを捉えた情報が求められています。さらに、縦型画面に最適化された動画クリエイティブで効果を高められることをご紹介しました。利用者数が拡大しており、マスへのリーチにも活用いただけます」(鈴木氏)
そして、「ブランディングを超えて、カルチャーを創造するようなパワーを持っている」とInstagramの可能性を示唆し、セッションを締めくくった。
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