SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

BtoBマーケ虎の巻

リード数を30倍に増やした会社が3年間のプロジェクトで取り組んだこと

ステップ3.代表的な顧客をリストアップ&購買プロセスを把握

 適切なプロジェクトチームを編成した後は、具体的な戦略・施策の立案だ。マーケティング戦略の基本は「誰に」「なにを」「どのように伝えるか」だと言われるが、私は「誰に」の部分を最も重視している。

 A社のプロジェクトでは、過去の受注実績が相当数あったので、「誰に」を定める際には複数名の営業メンバーに集まってもらい、代表的な顧客を10社ほどリストアップしてもらった。実際に製品を買ってくれた顧客をベースに議論することで、手触り感をもってターゲット顧客を理解できるからだ。

 そして、顧客の属性や抱える課題、実現したいこと、どのようにA社の製品を見つけ、なぜ導入したのかといった購買プロセスを把握した。

クリックして拡大
クリックして拡大

 こうして、ターゲット顧客とのコミュニケーションシナリオにおいて注意すべき箇所を、次のように整理することができた。

・業界老舗のS社の既存システムを導入している場合が多い
・S社のシステムには5年間の契約の縛りがある
・A社にとっては、5年後の乗り換えタイミングを逃さないことが重要
・5年後も代替手段を検討せず、そのまま使い続けてしまう顧客に対して、課題を喚起する必要がある
・A社の商談受注率は30%以上と高く、製品の競合優位性はある

ステップ4.現状とボトルネックを把握し、勝ち筋を見つける

 ターゲット顧客の購買プロセスを把握すると、自社のマーケティング活動の中で「できていること」「できていないこと」が明確になる。

 A社の場合は、解決策を検討している顕在層のうち、テレアポや紹介により運良く出会えた見込み顧客にしかアプローチできていないことがわかった。しかし、ターゲット顧客は製品を検討する際に、主に検索エンジンで製品を探していた。SEOや検索広告に取り組んでこなかったA社は、毎月数十件の商談機会を失っていたのだ。

 一方、業界1位と2位の会社はSEOや検索広告にも取り組み、明確層・潜在層向けの施策が充実していた。A社も早急な対応が必要だった。

 さらに競合分析をする中でわかったのは、上位2社も潜在層向けのマーケティング活動が手薄だったこと。ここにマーケティング戦略上の勝機があった。

 

 結果として、A社は以下のようなマーケティング活動を進めていくことを決めた。

・顕在層向け
 ―リスティング広告、ディスプレイ広告の出稿
 ―特定のキーワードでSEO対策
 ―Webサイトの改善でCV率を2倍に
 ―導入事例を月に2本作成し、自社サイトで公開

・準顕在層向け
 ―ブログメディア構築
 ―ホワイトペーパー作成
 ―月2回のメール配信
 ―セミナー開催

・潜在層向け
 ―年に1回、カンファレンスを開催
 ―広報活動として、業界のホットトピックに関するリサーチを実施し発表

 一方、テレアポや郵送DM、展示会の出展は効率が悪いと判断し、やらないことに決めた。

ステップ5.短期施策と中長期施策に並行して取り組む

 サイトのCV率や広告の改善、チャネルの増強といった短期的な施策にリソースを集中させると、確かに足元の数字は伸びる。しかし半年~1年経つと、それらの数値改善は頭打ちになっていく。そこで意識したいのが、短期施策だけでなく、並行して中長期の施策に取り組むことだ

 A社の場合、潜在層向けにカンファレンスを開催するとともに、いくつかの調査リリースを発表するなど広報活動に取り組んでいたことが、1年後に功を奏した。業界内でA社のブランド認知が広がり、リード数が増加しただけでなく、商談化率や商談受注率が向上したのだ。

 短期でPDCAを回し結果を出しに行く施策と、1~2年の時間軸で取り組んでいく中長期の施策の両方に並行して取り組むことで、競合他社に一歩抜きん出ることができるだろう。

次のページ
ステップ6.定例会議で進捗確認&追加施策を検討

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
BtoBマーケ虎の巻連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

栗原 康太(クリハラ コウタ)

1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。 2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げ、経営者・事業責任者の想いの実現を加速させる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 アドテック東京などのカンファレンスでの登壇、宣伝会議・広報会議など主要業界紙での執筆、取材実績多数。 Twitterアカウント(https://twitter.com/kotakurihara) | Facebookアカウント(https://www.facebook.com/kota.kurihara)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/06/20 07:00 https://markezine.jp/article/detail/31283

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング