「ANA=日本の航空会社」と覚えてもらうための工夫とは?
――海外へ発信するにあたって、コンテンツ制作の面で意識されていることはありますか。
片山:まず重視しているのは「ANA=日本の航空会社」だと覚えてもらえるようにすることです。日本の文化をフックにしたり、弊社が就航している都市を紹介したりしています。一方でいくら綺麗な写真を載せても、誰が投稿したものなのか伝わらなければ、認知してもらうことはできません。そのため、ANAブランドのカラースキームに合わせた投稿することで、弊社の雰囲気が伝わるクリエイティブを作成しています。
また世界観が重視されるInstagramだからこそ、写真に添える文章にも配慮しています。ANAはフレンドリーな会社であるという印象をもってもらえるよう、文体や口調を統一するなどの配慮をしています。
平口:よりインタラクティブなやりとりが可能なストーリーズも活用しています。「Ana」という女の子のキャラクターが日本全国を旅する「#AdventuresofAna」というシリーズがあるのですが、ストーリーズの「アンケートスタンプ」機能で次の行き先を2つ提示し、どちらかに投票してもらうという企画を実施しました。ストーリーズでは生配信もできるので、イベントの様子を配信することもあります。
平口:ハッシュタグを戦略的に活用していくことも欠かせません。弊社のアカウントも、ハッシュタグからの流入が多くを占めています。私たちは「#flyana」というハッシュタグを積極的に活用していて、お客様にも使っていただくよう呼びかけてきました。検索からの流入を増やすには、「#travel」といった大きな括りのハッシュタグを押さえる、なるべく多くのハッシュタグを入れるなどの工夫も重要だと思います。
――フェイスブックではグローバル向けのコンテンツ制作に取り組んでいる企業に対して、どのようなアドバイスをしているのでしょうか。
希代:ベストプラクティスや活用のヒントは「見る人の心をとらえるInstagramクリエイティブの作り方」という公式ブログ記事でお伝えしていますが、絶対に押さえるべき要素は、オーガニック・ペイドに関わらず、どこの国でも同じだと思います。
Instagramはモバイル上で見られるため、縦型のスクリーンの画角に合わせた素材の方が目に止まりやすいというのは万国共通で重要です。また、モバイルは速いペースでコンテンツが視聴される傾向が強いため、動画コンテンツに関しては、開始数秒でできるだけ早くアテンションをとるのがコツだとお伝えしています。
グローバル展開にあたっては、同じクリエイティブでも国ごとにカラーやテイストを少し変えてエンゲージメント率を見てみたり、広告であればリフトテストを行ってみたりしながら、勝ちパターンを見つけていくのが一番の近道です。ANAさんにも、日々細かく検証していただいています。
ターゲティングを機械学習に委ねることで、意外な潜在層を獲得
――ANAではオーガニック運用に加えて広告配信にも取り組んでいるとのことですが、どのような狙いがあるのでしょうか。
平口:各キャンペーンの目的に合ったターゲットにリーチすることと、既存のファンと類似した層にリーチすることを目的にしています。特に、Instagramはミレニアル世代に人気のSNSだと認識していますので、ミレニアル世代がターゲットのキャンペーンについては、Instagramを活用して広告配信をしています。
類似フォロワーへの拡張配信に関しては「オーガニック投稿でファンになってくれたフォロワーと似ている層だけれど、ANAのことを知らない」というお客様がまだたくさんいらっしゃると認識しており、「類似オーディエンス」機能を活用して、コミュニケーションをとっています。
――ターゲティングは細かく設定されているのでしょうか。
片山:あえて絞らずに、配信しながら精度を上げていくという前提で運用しています。ターゲットを絞り過ぎないことで、自分たちでは到底想像できないような潜在ユーザーも見えてくるのです。たとえばスポーツが好きな方や、週末にアクティビティを楽しんでいる方などのアフィニティを活用したターゲティングをすることで良い結果に繋がっています。
平口:最初から細かくターゲティングし過ぎてしまった結果、リーチ数が減ってしまうのはもったいないことですよね。弊社でもかつては、エアラインに興味関心が強い人ほどエンゲージメントは高いだろうという思い込みから、ターゲティングを狭めてしまっていました。でも思い切って機械学習に任せてみたら、非常にポテンシャルの高い潜在ユーザーにリーチできたのです。
希代:機械学習に任せることは、Instagramに蓄積されるユーザーの興味関心や行動に関するシグナルを最大限活用し、効率的にリーチを獲得することにつながります。ターゲティングに加え、フィードとストーリーズどちらに掲載するか、さらにFacebookとInstagramのどちらを活用するかという配置面の選択についても、機械学習を活用すると高い効果を発揮します。ANAさんにも、その手応えを感じていただけていることが嬉しいです。