イベント開催&コンテンツ作成でコストを抑えるコツ
一方、同社ではオフライン施策として、複数の企業と一緒に展示会やセミナーを開催している。「単独開催よりも、事業の親和性が高い企業との共同開催であれば、“そのうち客”に接触しやすく、コストも抑えられる」と豊川氏。
また、展示会で配布するノベルティについて考え方のポイントは「展示会に来場する見込み客が、どのような情報を求めているかを考えたもの」であるとし、具体的には「トレンド」や「ノウハウ」をまとめたコンテンツだと紹介した。これらは必ずしも一から作成する必要はなく、ブログや外部掲載記事の二次利用でリソースを節約できる。
たとえば、ブログの人気記事を複数ピックアップしてまとめたり、メディアの取材記事の二次利用許可をとったりすることで、ホワイトペーパーを作成できる。これらはWebサイト上のダウンロードコンテンツとしても活用できるので、コンテンツ制作の効率化にもつながる。
加えて豊川氏は、リード獲得フェーズの参考として“そのうち客”の見つけ方も説明した。同社のターゲットは既にMAツールに興味をもつ顕在層だが、Web担当者やマーケターも“そのうち客”と広く定義している。その上で、“そのうち客”層の閲覧が多いWebメディアに記事広告を掲載。計測タグを設置し、記事を読んだ匿名見込み客のデータを蓄積して広告配信を行うことで、“そのうち客”に接触してきたそうだ。
マーケ部門主導のセミナー企画で見込み客との接触機会を11倍に
続いて「リード育成・抽出」のフェーズでは、セミナー開催が重要な施策となる。
同社では顧客の興味関心度に合わせた情報を伝えるため、大きく分けて二種類のセミナーを企画している。一つ目が“そのうち客”を対象とした複数のマーケティング手法が聞ける共催セミナー、二つ目が“今すぐ客”を対象とした自社単独セミナーである。
「営業担当者一人でアプローチできるお客様数は限られます。接触すべき見込み客の優先順位を考えたときに、“そのうち客”に時間を割くのは非現実的です。そこで当社では、マーケティング部門がMAツールの必要性や活用事例を紹介する“そのうち客”を対象にしたセミナーを主導しました。これにより、営業担当者が単独で活動するよりも、年間で約11倍も見込み客と接触し、MAに対する興味喚起を行うことができました」(豊川氏)
BtoB企業のマーケティング施策として有効だといわれる展示会でも、接触した見込み客のフォローを行う際、MAツールが活躍する。MAツールを活用してイベント後に御礼フォローメールを即時配信することで、商談獲得に大きく貢献すると豊川氏は述べる。
仕組みはとてもシンプルで、イベントなどで得た新規見込み客情報をMAツールに登録すると、自動で詳細資料を添付したお礼メールが送信されるように設定する。この施策は特に、対面で接触した“今すぐ客”と接点があったときに効果的だ。
「大きな展示会であればあるほど、お客様は多くのメールを受信されます。MAツールを活用して即時フォローメールを配信すれば、他出展企業の御礼メールに埋まることなく、忘れられないうちにアプローチが可能です。また、電話でフォローを行う場合には、“メールで連絡している”ことを会話のきっかけにできるためコールもしやすくなります」(豊川氏)
同社の場合、展示会によって変動はあるものの、本人接続からの商談化率が最低でも5.6%ほど見込めるという。そのため、名刺情報が300件であれば15件前後は商談につながるといった“読み”を立てることもできるのだ。
確度の高い顧客はキラーコンテンツであぶり出す
さらに豊川氏は、MAツールの行動履歴データを基にした非対面セールスのポイントとして、キラーコンテンツの設計を挙げた。
キラーコンテンツとは購買意欲が高い見込み客が閲覧するページのことで、同社の場合は“他社との比較”がそれにあたる。これをキラーコンテンツと決定した理由は、「契約した顧客が、検討時に必要とした資料が比較表であった」という営業のフィードバックだという。
「当社では、キラーコンテンツ閲覧の有無で、アポイント獲得の確率がおよそ8倍も変わってきます。そのため、キラーコンテンツを閲覧した見込み客が発生したら、都度インサイドセールス担当へ自動で通知が届くようシナリオを設定しています」(豊川氏)
またMAツールの標準機能である、IPアドレスからアクセス元の企業を判別する履歴機能も役に立つ。これを基に新規開拓先のリストを作成することもできるという。