※本記事は、2019年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』42号に掲載したものです。
年間1,000億円を見込めるブルーオーシャンを探して
株式会社ワークマン 常務取締役 土屋 哲雄(つちや・てつお)氏
東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役を経てワークマンに入社。常務取締役経営企画・情報システム・ロジスティックス担当(現任)として、企画したアウトドアウェア新業態店「WORKMAN Plus」が日経トレンディの2019年ヒット予測ランキングで1位を獲得。
――「ワークマンプラス」の展開、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いですね! 今日私が着ているストレッチパンツも、4月にオープンしたららぽーと湘南平塚店で購入させていただきました。一見、海外の高価格帯アウトドアブランドのような内装で、にぎわっていましたね。
ありがとうございます! 現在は関東から九州まで20店舗弱ですが、2020年3月までに77店舗への拡大を予定しています。商業施設内と路面店の新規出店、それから既存のワークマン店舗の全面改装もタイプの違う店を選んでいるので、売れ行きを見極めながら計画していくつもりです。
――ワークマン自体は約40年にわたって、いわゆる作業服の専門店として工場や土木などの現場で親しまれています。吉幾三さんが登場するテレビCMをずっと放映していましたよね?
そうですね、5年ほど前まで流していました。ワークマンは現在33店の直営店を含む約850店を展開し、おかげさまでワークウェアの業界では圧倒的なシェアを誇っています。そもそも競争が嫌いな会社で、ワークマンプラスも既存のアパレルブランドのポジショニングを分析し、“ブルーオーシャンで年間1,000億円を見込める市場”を狙えると見込んで参入したんです。
――その経緯を詳しくお聞きしていきますが、一連の展開を指揮されている土屋さんは元々情報システム畑のご出身なんですね。現在のお立場と、ワークマンに参画された当時の状況をうかがえますか?
情報システムとロジスティクス担当常務として2012年に参画し、2017年から経営企画も見ています。参画当時はまったくデータがなかったので、そこから人材採用も含めてデータの蓄積と分析を強化して、今では“データ経営”と言えるほどになりました。また、当社には広報やマーケティング部がないので、今はそういった部分も管轄しています。
社内では3年ほど前から、社長の旗振りで客層の拡大を模索していました。業界No.1といえども、近年の作業服市場は景気の影響で法人の購買が減り、人手不足などで作業服を着る人自体も減っています。競合企業がスタイリッシュな作業服を開発して広告にタレントを起用する中、当社は元々の社風が保守的なこともあり、その流れに乗り遅れていました。当時の作業服を「かっこいいか、ダサいか」分類してみたら、8割が「ダサい」となってしまったんです。