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身近なのに曖昧な「プラットフォーム」という概念 マーケターの理解を深める明確な定義とは/お勧めの書籍

 プラットフォームビジネスは様々な業界で注目され、身近なサービスも多数存在する一方、そのビジネスモデルについてマーケターが深く学ぶ機会は、意外と少ないのではないでしょうか。今回紹介する書籍は、アマゾンやアップルといった成功企業の実践例に加えて、プラットフォームを巡る最新の研究や事業成長のステップ、顧客体験の設計方法を体系的に理解できる一冊です。

明確な定義が従来型ビジネスとの比較を可能にする

『プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法』 2,000円(税抜) ロール・クレア・レイエ/ブノワ・レイエ(著) 日本経済新聞出版社
『プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法』 2,000円(税抜)
ロール・クレア・レイエ/ブノワ・レイエ(著) 日本経済新聞出版社

 今回紹介する『プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法』は、プラットフォーム型ビジネスの経営理論と企業の実践例が余すところなく解説された一冊。著者のロール・クレア・レイエ氏とブノワ・レイエ氏は、プラットフォームの立ち上げや戦略策定を支援する企業の共同設立者です。

 初めに同書では、プラットフォームを「2つ以上の顧客グループ(※)を誘致し、仲介し、結びつけ、お互いに取引できるようにすることで大きな価値を生み出している企業」と定義することで、伝統的なビジネスモデルと比較しています。

※たとえば、プラットフォーム上の価値を「利用する」グループと「生産する」グループ

プラットフォーム事業の成長を4ステップで理解

 プラットフォームに働く経済原理やそのビジネスモデルに言及した上で、同書は事業が成長していくステップを「設計」「点火」「上昇」「安定」の4つに分けて解説。それぞれのフェーズにおける目標や検討事項、施策レベルの戦術などを詳しく説明しています。

 中でもマーケターにとって関わりが深いのは、ゼロから顧客を誘致し、規模を拡大させていく「点火」の段階。プラットフォームビジネスと相性の良い新規顧客創出の方法がいくつか紹介されていますが、特に参考になりそうなのが「ミーム(文化的遺伝子)」に着目したプロモーションです

 たとえば、ウィーチャットは自社のP2P決済サービスを中国や東南アジアで普及させるために、旧正月に「ラッキーマネー」という機能をリリースしましたが、これは祝祭日や結婚などの記念日に赤い封筒に入れたお金を贈るという習慣に則ったもの。人々の「ミーム」を活用することで、ほとんど費用をかけずに口コミを発生させ、サービスの利用を拡大することができたそうです。

 改めて自身や周囲の人々の行動を振り返ってみると、記念日のメッセージや贈り物といった習慣をきっかけにプラットフォームの利用が加速するケースは少なくないことに気づかされます。このように、身近なサービスに関する経験や断片的な知識を整理し、プラットフォームへの理解を深めることができるのが同書の強みです。

プラットフォーマー転身へのカギは、組織構造にあり

 同書の後半では、既存事業にプラットフォームの要素を追加しようとする伝統的な企業に着目し、そうした企業が抱えるリスクや行うべき対策を説明しています。その一つが、プラットフォーマーへの転身には、階層型の組織構造からの脱却が必要であるという点です。

 プラットフォームには生産者と利用者など異なる顧客グループが存在するため、各部門長がそれぞれの業績のみに責任を持つ組織構造では、全体の最適化が困難になってしまいます。同書によると、最初は伝統的な階層構造を採用していたプラットフォーム企業でも、「縦割り思考を排してサイド同士を協調させるため、ビジネス領域をまたいだコミュニケーションチャネルを構築しようという気運が高まる」のだそうです。

 プラットフォームを運営する企業はもちろん、プラットフォーム上でビジネスを行う企業にとっても、その仕組みを深く理解することが効果的な戦略策定につながります。同書が与えてくれる知見は、すべてのマーケターにとって役立つものとなるはずです。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/27 08:00 https://markezine.jp/article/detail/31377

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