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ビジネスマンのための必読オンラインマーケティング塾

第6回 「ブランド認知 2.0」を考える


文脈=フレームによって認知は異なる

 同じことは文章読解の際にも見られます。西林克彦氏は著書『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』の中で、認知心理学におけるスキーマ(私たちの中にすでに存在しているひとまとまりの知識)や文脈(物事・情報などが埋めこまれている背景・状況)、活性化(全体の知識の一部分にスポットライトを当てて使えるようにすること)というモデルを用いて、「わからない」「わかった(つもり)」「よりわかる」という状態を説明しています。

 「わからない」という状態は、文章に書かれた文脈が自分のスキーマと結びつかない状態で、文脈による活性化が既存のスキーマに働いていない状態です。そこに、ある文脈が追加されることで手持ちのスキーマが活性化されると「わかった」という状態になります。しかし、「わかった」という状態は同時に「わからない」と感じていることがない状態でもあり、それゆえ、それ以上の読解の意欲が働かないため、本当はより深い理解が得られる余地が残された場合でも「わかった(つもり)」になってしまうということです。

 文脈の交換によって、新しい意味が引き出せるということは、その文脈を使わなければ、私たちにはその意味が見えなかっただろうということです。すなわち、私たちには、私たちが気に留め、それを使って積極的に問うたことしか見えないのです。それ以外のことは、「見えていない」とも思わないのです。
       西林克彦 著『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
 

 認知心理学的テーマに取り組みながら、経済学的問題を扱う行動経済学という分野においても同様の研究は進められていて、カーネマントヴェルスキーによってフレーミング効果というものがあることもわかっています。

 フレーミング効果とは、人が質問に答えるとき、一般的に人間の意思決定は質問のされ方によって大きく変わるというものです。その質問の表現方法を、判断や選択にとっての「フレーム」と呼び、異なるフレームにより異なる判断や選択が導かれる現象を「フレーミング効果」と定義しています。

         

 つまり、先の「わかった(つもり)」の例での「文脈」は、フレーミング効果における「フレーム」と同様のものと言うことができると思います。

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多様化した人々の脳に、適切なブランド認知を行わせるには?

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この記事の著者

棚橋 弘季(タナハシ ヒロキ)

芝浦工業大学工学部(建築学専攻)卒。マーケティング・リサーチ、Web開発等の仕事を経て2003年より株式会社ミツエーリンクスに。現在はWebを使ったマーケティングに関する企画や自社サービスの開発に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/11/08 16:30 https://markezine.jp/article/detail/313

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